ブレンダ
少ないです
出会った時から、アイツじゃないと分かっていた。
何度目か分からない求婚を拒めば、侯爵家の力をちらつかせてきた。
━━もう、ダメなんだ。
お父様がため息をつき、項垂れていた。その隣でお母様が何かを仰っている。
分かっていた。私がアイツの求婚を受ければいいだけだと。
お父様もお母様も、さらにはこのモルトハウス伯爵家を継ぐお兄様までも、私の意思を尊重して下さった。
でも、年頃になった上、アイツがとうとう爵位を持ち出してきた。もう逆らえないだろう。
学園で闘技大会が催されたのは、諦めの悪い私には良かったのかもしれない。
アイツは「優勝したら婚約する」と、決定事項として言ってきた。
そう言えば、入学式の挨拶の練習をしていたのに、結局別の人が挨拶していたな、と思い出した。
闘技大会は、一回戦しか勝てずに終わった。
悔しそうな顔をしていたけれど、本気で優勝出来ると思っていたのだろうか。
剣を振るうスピードも正確さも、足さばきも。全てが拙い。
私は知っている。
スピードと正確さを手に入れるために、毎日どれだけの練習を積むのか。
実戦だけでは能力が上がらないと、地道な努力も怠らない彼を。
━━会いたいよ。
アイツが負けた後も、闘技大会をぼんやり眺めていた。
まだまだ若い彼らは、力に頼る戦いかたが多い。
そんな中、私は見つけた。
ぶれない軸、相手の次の手を読んだかのような動き。
彼は優勝して、私はなかなか話しかけることも出来なかった。
「本当にユウなんだ」
思いきって話しかければ、ユウだった。
私の前世の婚約者。
アイツのことを話せば、結婚しようと言ってくれた。
ずっと待っていたの。
ユウ━━アルフ様からもらったネックレスに触れる。
さっき家族には手紙を出した。大切な話があると。
どうか、上手くいきますように。




