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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
学園━━アルフ編
52/96

アルフ12歳その6

誤字なおしました。

更になおしました。スマホの入力のタッチミスが他にもあるかもしれません(´・ω・`)

「貴方に話があります。ついて来なさい」

「今、食事中なのでまた今度」


 相手はアンドレア・ブラッフォード公爵令嬢だ。けど、今、食い始めたばかりだ。どうやってついていけって言うんだよ。

 俺が即座に断ると、取り巻きがうるさい。それさえも無視して昼食をとる。

 元々彼女達は、虹の鈴商会に興味があったらしく、無茶苦茶なことを要求してきたりと絡んできた。

 それが更に悪化したのは、試験明けの年末年始にまたがる半月の冬休み前、闘技大会のせいだ。

 うっかり昨日その大会の剣術部門で優勝してしまい、注目を集めてしまった。


 確かに俺には婚約者がいない。領地は王都の側。家でやっている商会も前途洋々。

 貴族になって数年とは言え、なかなかいい物件だったみたいだ。

 借金をしている家の女子なんかには特に。

 借金がなくても、虹の鈴商会の商品を入手出来る立場に魅力を感じる女子も多いようだ。

 さっきのアンドレアとか。


「モテモテだね」

「下手に目立ったなぁ」

「強かったからね、アルフ様は」


 アガサは俺を呼び捨てには出来ないと、敬語も未だ入ることがあるくらいだが、大分友達らしくなってきた。

 周りの目がない時なら、もっと砕けた話が出来そうだ。


 闘技大会の剣術部門には、例のぶよぶよアーネストも出てきたが、俺に当たる前に負けている。

 いや、あの体型で一回勝てたことの方が驚きなんだが。

 なのに、なんで俺を睨んでくるかな。

 あんな足さばきで、あんな腰の入り方で、まさか優勝するつもりだったのか?


「面倒臭いヤツだな」


 誰が、とは言わなくとも二人とも分かって苦笑している。


「さ、午後の授業に行こうぜ。」


 今日の午後の授業は、各学科の授業になっていた。

 アガサは文官学科で、普段は俺と同じ建物へ向かうのだが、今日は図書館で授業があると食堂で別れた。


 トミーとは、魔術棟との分かれ道まで一緒だ。

 食堂からは、人気の少ない道を選んで歩いていた。


「あのっ」


 曲がり角に誰かいるな、と分かっていたが、出てきた女子に苦笑する。


「剣術部門で優勝した、アルフ様ですよね?」

「はい。貴女は?」

「私は、モルトハウス伯爵家のブレンダと申します。

 あの……」


 ブレンダと名乗った彼女は、視線をさ迷わせる。

 俺の隣で、トミーがあからさまにため息をつき、肩をすくめる。


「午後の授業があるんで、行ってもいいですか?」

「待って!私はアルフ様にお話が━━」

「単刀直入にどうぞ」


 腕を組み、トミーはブレンダを見下ろした。

 ブレンダがごくりと唾を飲み込むのが分かったが、俺もトミーも、最近この手のことが起こりすぎて、精神的に疲れていた。優しくすることも出来なかった。


「アルフ様。貴方………ユウですか?」


 ブレンダの発言に、トミーは眉を寄せる。

 しかし、俺は違った。

 ブレンダを頭のてっぺんから爪先まで、何度も見る。それでもそこにヒントはない。

 ブレンダは、俺が驚いているのを感じて、安堵の息を漏らした。


「闘技大会で見た時、ユウに似ているって思ったの。私がこっちに来ているから、ひょっとしたらユウもそうじゃないかって思ったら、確かめずにはいられなかった」


 少し涙ぐみ、微笑むのは━━


「カナ?」

「うん。久しぶり、ユウ」


 それは、かつての婚約者、カナだった。

 こっちに来てからじゃない、前世での話だ。婚約者だったのは、結婚前に俺が死んだからだろう。


「えーと?どんな関係?」

「前世の婚約者」


 俺が答えると、トミーとカナが驚いていた。


「あの」

「トミーも同じだから。あと……色々話したいけど、ここはまずいか」

「結界で音が漏れなくは出来るけど」

「今、張ってくれ」

「はいよ、完了」

「もう授業だろう?後日、改めて━━」


 俺が言うと、カナ━━ブレンダは悲しそうに首を横に振る。


「私、今までも何度かアーネスト様に結婚を申し込まれていて、多分もう、次に申し込まれたら、断れない」

「━━は?」

「……あぁ。ブレンダとアーネストか。恋人説があったなぁ」

「トミー?」

「だから、『another life』でさ。でも、ここは他のゲームも混ざっているし、俺達には現実だ」

「カナ━━いや、ブレンダ。

 まだ婚約していないなら、今度こそ結婚しよう」

「ユウ━━ううん、アルフ様。でも、アーネスト様は侯爵家の━━」

「ウチにも色々コネがあるから心配いらないよ。週末にそちらの家族に会えるように連絡を入れておいて」


 それでも、どこの誰かが邪魔しないとも限らない。

 なので、ブレンダには週末に帰ることと、連れて行きたい場所があることを伝えさせることにした。

 俺の方も、家族とそれからキンバリー侯爵家、ライトフット公爵家に協力を願おう。

 王家は使うまでもないか。


「そうだ。これをしておいて」


 俺は、ミアからもらったお守りのネックレスをブレンダにかけた。


「え?」

「お守りだ。もう一つあるんだけど、部屋に置いてあるから、こっちで」

「でも、アルフ様は?」

「帰ったらつけるから、大丈夫だよ」


 安心させるように頭を撫でれば、ブレンダは頷いた。

 週末に会うことを約束して、俺達は別れた。


「……おめでとう、でいいのかな?」

「それは、ちゃんとした時に」

「それにしても、ちょっと気になるんだけど」

「ぶよぶよ?あれもか?」


 トミーが言いたいことは、俺にも分かった。

 本来なら、俺よりも強い勇者なはずのアーネストが、あんなにぶよぶよで強くない。それにも関わらず、ブレンダに何度も結婚を申し込んでいる。

 おそらく、『another life』をしたことのあるヤツだろう。

 自分は勇者だから強いと慢心している。ブレンダは自分のものだと思い込んでいる。


「決まるまで、接触は避けた方がいいな」

「そうだね」


 俺とトミーも分かれ道になり、軽く手を上げて別れた。

 カナ━━ブレンダに会えた。あんなに悲しそうな顔はさせたくない。

 幸い、アーネストは侯爵家で、俺にはそれなりどころか、かなりいいコネがある。

 普段は使いたくないが、今回ばかりは別だ。

 アイツは抜けてるから、この週末で全て終えよう。

 そのためにも、なるべく秘密裏にしないといけない。


 授業が終わると、俺はいくつか手紙を出した。

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