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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
学園━━アルフ編
51/96

アルフ12歳その5

誤字をなおしました。

 毎週末、俺とトミーとアガサは帰宅していたが、半月経って、ようやく宰相と時間が合うことになった。

 その晩、侯爵家で母さんの料理を堪能するという名目で、宰相の家の四人、侯爵家の三人、ウチの四人に加え、ブルーノさんとクレイグさんがいる。

 そして更に、トミーが参加だ。


「つまり、この世界が『another life 』と言うゲーム?の世界だと?」

「アルフから聞くと、大分違ってますけどね。

 冒険者から見た世界なので、今の俺とは視点が違うし」

「ふむ。それでその『another life』の中で、我がスクワイア王国はどういう国となっている?」

「スクワイア王国は、普段は平和ですね。

 いきなりワイバーンが王子一行を襲ったり、霊獣に攻められたりと、なんで?って感じのイベントがあったりはしましたけど」


 トミーは「普段は初級から中級クラスの冒険者にうってつけなのに、突発イベントだと急に難易度が上がるんだよね」と肩をすくめる。

 いや、ワイバーンが王子一行を襲うって、身に覚えがかなりあるんだが。


「王子一行はどうなったんだ?トミー」

「レベルが足りなかったからか、同行していた騎士達が重傷で。

 一人はダメだったんじゃないかな?」


 トミーの答えに、皆の視線がクレイグさんに集まった。


「霊獣って、どんな霊獣なんだ?」

「白蛇と白虎が襲って来たんだよ。

 それが強くってさ。中級でも歯が立たないし、普段は攻略組がいない場所なんだけど。

 たまたま、スクワイア王国で入手出来るアイテムを求めて来ていたパーティーが何組かいて、ギリギリ勝てたんじゃないかな」


 白蛇と白虎という言葉に、俺はソファーの背もたれに身を預け、天井を見上げた。

 それってシロとハクか?

 そんな事を考えていると、母さんが口を挟んだ。


「ブルーランド一族のデリックを攻略すると現れる霊獣って、やっぱりシロとハクよね」

「……もしかしたらって思っていたけど、出番が早すぎない?しかも、ミアちゃんが封印を解いたんでしょう?」


 カトリーナさんが、眉を寄せる。

 なんだか、大分原作と変わっている。それに、『another life』と同じネタとは……使い回しか?ゲーム会社は。

 いや、そもそも同じゲーム会社だったのか。


「あれ?あんまり驚かないんだね」

「……その霊獣、もう結界から解放されていて、サザランド領に白蛇がいるんだよ。

 白虎はソレイユ王国のブルーランド一族のところにいるし。

 たまにウチの領地に唐揚げ食いに来るよ」

「唐揚げ?いいなあ、唐揚げ」


 いや、唐揚げがメインの話じゃないだろう?


「……霊獣の脅威はないと思っていいのか?」

「どうでしょう?俺にはそこまでは分かりません。

 スクワイア王国であったイベントは、それくらいしか知らないですね。基本的に平和なんですよ」


 トミーはそう言って、紅茶に口をつけた。


「……聖女については、何かないか?」

「聖女、ですか?

 聖女なら、オアーゼ王国パトリツィア王女の能力が凄かったはずですね。

 俺のキャラ程度では王女の回復魔法なんて受けられないから、話に聞いただけですけど。普通の冒険者はポーションで治しますし。

 一般人でも受けられる回復魔法ってなると、スクワイア王国の回復魔法は、大陸の中でも質がいいので、他国の国民に羨ましがられていた、って感じでしたけど」

「……スクワイア王国の聖女はどうだ?」

「ゲームの中では特になにも……あ、王妃様が元聖女って話くらい?」


 トミーには乙女ゲーの話はまだしていなかった。RPGの内容と混ざる前に話を聞きたかったからだ。


「トミーが言ったワイバーンも、もう終わっているよ。怪我人は出たけど、それくらい」

「逃げ切れたんだ?」

「いや、倒したけど」

「は?え?ワイバーンを?」

「そう。それでサザランド伯爵の爵位を賜ったから」

「はあ?」


 トミーはすっとんきょうな声をあげ、目を見開いた。


「倒したってアルフが?」

「ミアが魔法で色々してくれたしな」

「……アルフだけじゃなくってミアちゃんもか」

「トミーのしていたゲームとも話がずれてきているみたいだし、少しは安心していいのかもな」

「なんかさ。二人が絡んで話が変わっていってない?クラッシャーだね!」


 トミーは呆れたように言うけど、こっちは本気なんだよ。


「……霊獣に攻められた時は、ギリギリ勝てたのだな?」

「そうですね。ただ、アルフとミアちゃんがワイバーンを倒せるなら、もう少し楽に倒せるかもしれないですけど。

 あ、レイドだったから、他にも腕のいい人達が必要でしょうけど」

「トミーはどうなんだよ?」

「いや、ワイバーンは無理だから」

「ミアも直接倒した訳じゃないさ。武器と防具の性能を上げて、結界でワイバーンを拘束してたんだし」

「いやいやいやいや。その魔法がワイバーンに効くのが既に凄いんだよ!」


 そういうものか?

 俺がゲームで使っていたキャラは、色々と武器と防具を得ていたから、ワイバーンは簡単ではないけど、そこまでの強敵では……うん、伝説級の武器も防具もないと辛いな。それのおかげか。


「取り敢えず、シロとハクに嫌われないようにするね」


 ミアが何かを決意し、ぎゅっと両手で拳を作る。


「変に構えなくてもいいんじゃない?なんかミアちゃん、クラッシャーっぽいし」

「クラッシャー、ですか?」

「ワイバーンにも霊獣にも関わっていて、結果が変わっているんでしょ?フラグ折りまくりだよね」


 肩をすくめるトミーに、何も言うことが出来なかったのは、まあ、仕方がないよね。


「……大丈夫かなぁ」


 ポツリ、とミアが視線を床に落としながら呟いた。


「ゲームの強制力があるかもしれないし……」

「強制力で今からワイバーンに襲われるの?霊獣がまた封じられるの?それはないって」

「でも、ヒロインが転生者なの。ゲームも知っているみたいだし、何があるか分からないの」


 大人のピリピリした雰囲気が、ミアをナーバスにさせたみたいだ。

 母さんとカトリーナさんは、ミアが攻略対象のジョシアの婚約者であることを気にして、なるべくミアにゲームの内容を知らせていない。

 それも不安にさせているのかもしれない。


「何があるのか分からないけど、だからってそんなにマイナス思考だと、周りも疲れるよ。

 まだゲームも始まってない時期なのに、そんなんでどうするの?」


 トミーの言っていることは正しい。

 それでもムーニー男爵領でウチの商会を解散しなければならなかったことも、ミアの中にずっと残っているだろう。


「ミア」


 ジョシアがこちらにやって来て、座っているミアと視線を合わせようと片膝をついて、手をとった。


「俺は『強制力』になんて負けない。母上も無事だったんだ。俺達だって大丈夫だよ」

「でも……」

「大丈夫にするよ。母上の時だって、俺は諦めなかった。

 ミアとのことも、絶対諦めない」

「……ジョシア」


 ミアがやっと顔をあげ、頷いた。

 俺の隣でトミーが肩をすくめる。


「婚約者じゃないと、励ますのも難しいね」

「あれで励ましていたのか」

「う~ん、強制力なんてないと思ったしね。

 だって二つのゲームが混ざっているんだよ?another life の方だと、元からいくつもエンディングが用意されてるんだし、乙女ゲーの方にだけ強制されるとは思えないよ」


 そもそも乙女ゲーだけなら、ミアがジョシアの婚約者にはならない。

 頭では分かっていても、ミアは不安に駆られてしまったのだろう。


 ジョシアによってミアにも笑顔が戻り、ここで母さんの料理が運ばれてきて、食事会へと移っていった。

 まだゲームは始まってもいない。

 俺には何が出来るだろうか。

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