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出番ですか?  作者: 五月女ハギ
マッキノン街道
16/96

9歳━1

話の流れのための変更を若干しました。


 ジョシアのところ━━キンバリー侯爵領を出てから、お父さんに赤い魔晶石を作るように言われました。人には見つからないように、そこは念を押されましたが。

 魔術の練習には、赤い方がいいからだって。虹色はあまりにも危ないので、練習には良くても絶対に駄目だと言われています。


 なので、私は幌馬車の中で魔晶石を作ったり、侯爵様からいただいた本を読んだり、昼寝をして過ごしていました。

 でも、五日もたてば暇です。

 今日はお父さんの隣に座り、景色を見ています。


「今日は勉強しないのかい?」

「今日はお休み」

「ミアは飽きっぽいね」


 お父さんに苦笑されます。

 う。だって毎日同じことの繰り返しはちょっと……。

 元々歴史や地理は苦手だ。

 今世でも何回か迷子になっているくらい。最近迷子になっていないのは、お兄ちゃんと手を繋いでいるから。ただそれだけです。


「今ってどの辺り?」

「夕方には王都に着くよ」

「え?もう王都?」


 さっきまで見ていた地理の本を思い浮かべます。

 少しゆっくりとしたペースの私達は、本物の行商人より時間がかかる。

 確か、キンバリー侯爵領は王都に近く、三日くらいしかかからないところ、私達は五日かかった。

 もう着くというより、やっと着くの方が正しいようです。商売とすると完全に駄目だろう。


 お父さんとお喋りしながら馬車に揺られていると、馬車を引くシューとソックが足を止めた。

 あれ?と思って前方を見れば━━巨大な何かが空を飛んでいる?!


「ワイバーン?!」


 おおう。

 後ろからお兄ちゃんの声がした。ビックリしたぁ。


「襲われてる馬車はないかな?」

「……遠くてそこまで見えないな」


 固い声でお父さんが返します。

 ワイバーンって一応竜に分類される魔物だったような……。


 私は慌てて幌馬車を囲むように結界を更にもう一つ張ります。

 幌馬車に沿って、ではなく。

 だって、馬車だけ結界に入れたら、ソックとシューが結界に入らないんです。だからです。

 いつも一つ張りながら移動していたのですが、予備として更にもう一つ張っておきます。


『ヴィギャアアアア!』


 大地が揺れるほどの轟きが、ワイバーンの鳴き声なのでしょうか?

 このままでは、王都に向かえません。それに、ワイバーンがこちらに気付くかもしれない。


「父さん、他の道は?」

「遠回りになりすぎるが、安全のためには時間がかかるくらい仕方ないなあ」


 お父さんがため息をついたその時、前方でいくつもの氷の槍がワイバーン目掛けて降り注いだ。


『ヴィギャアアアア!』


 どおおおおん、と地面が揺れる。

 だけど氷の槍ということは、あの辺りに人がいるということですよね。


「まさか、誰かいる?」


 お父さんが呟く中、お兄ちゃんが馬車を降ります。

 お兄ちゃんが身に着けているのは、冒険者なら初級者から中級者が使うような、そこそこ良い剣と盾と革鎧です。

 お兄ちゃんの強さは、一緒に魔物退治をした町の人達から幾度となく聞いています。

 それでも、これでワイバーンとやりあうのは何をどう考えても無茶苦茶です。装備に問題ありです。


「お兄ちゃん、ちょっと待って!」


 私も降りて、お兄ちゃんの服と革鎧、盾に魔法をかけます。

 それから剣にも。更に切れ味をあげるように。

 物質魔法はまだ練習が少なかったけど、ないよりましなはず。


 私が魔法をかけている間も、雷撃や氷の槍が、ワイバーンの起こす地響きが、否応なく感じられる。

 ふいに後ろから、震える声がした、


「アルフ━━死んだら承知しないわよ」

「絶対に無事でいるよ。母さん、ありがとう!」

「無理はするんじゃないぞ」

「分かってるよ、父さん」

「お兄ちゃん、いってらっしゃい」

「ああ。行ってくる!」


 走り出したお兄ちゃんの安全を私達は祈った。

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