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拝啓、愛する貴方へ

作者: 初雪アザミ

私は貴方に手紙を書きました。

今からポストに投函しに行こうと思います。

拝啓、愛する貴方へ。


私は口下手なので手紙でこの思いを伝えようと思います。きちんと会って話さないことをどうか許してください。


私は元々、たくさんの嘘と無駄な自尊心、そして恐怖で自分を塗り固めて生きてきました。自分に、親に、友達に、そして貴方にもたくさんの嘘を付いていました。自分を安心させるためだけに無駄に自尊心を持ちました。他者への恐怖ゆえにそれらの嘘と自尊心を捨てられず、肥大させました。要するに私はただの臆病者だったのです。「本当の自分」というものを出すことによって周りの人が私から離れていくことを、私を嘲笑うことを恐れたのです。もちろん、貴方や私の友達はそんな事をする人ではないと知っています。ですからこれは私の被害妄想だ、と言ってもいいでしょう。それでも、私のこの心に刻み込まれた恐怖は今も消えることは無いのです。


いつからでしょうか。貴方への愛がいつの間にか歪んでしまっている、と気づいたのは。貴方を独占したいと願い、私以外のものを見て欲しくなくて、ただひたすらに私だけを求めて欲しいと思うようになりました。すぐにこれでは貴方に、そして私自身にも良くないと気づきました。でも、一度そう思ってしまったらもう私には止められなくなってしまいました。貴方への独占欲だけが大きく膨らみ、そして挙句の果てにそれと同等、同等以上の貴方の愛を求めるようになりました。そしてとうとう、先日のように馬鹿な真似をしてしまいました。あの後、私は酷く後悔しました。なぜ、あんな事をしてしまったのだろう、なぜ、してしまう前に止められなかったのだろう。そればかり考えました。全て自分が招いた事だったのに、私は図々しくも貴方のせいにして貴方を責めたのです。


私は悩みました。この歪んだ心を抱えたままで、このまま先も貴方の傍に居てもいいのかどうか。貴方はきっと、構わない、と笑って言うのでしょう。それでも私である事には変わらないのだ、と。それでも私はここでもまた恐怖しました。今は良くても、将来貴方が私の心を疎ましく思うのではないか、と考えてしまったのです。こんな事を言えば貴方は怒るのでしょうか。

正直に言います。

私はきっと、貴方の心も怖いのです。

貴方の心を信じながら、どこかでその心が変わってしまう事を恐れているのです。

かつて貴方は言いましたね。「未来に『絶対』はない」と。今、私はその言葉に囚われています。絶対はない。それが怖くて仕方が無いのです。いえ、少し違いますね。私は、どんな些細なことに対しても貴方の心を失うことが怖くて仕方が無いのです。


…自分でも何を書いているのか分からなくなってきましたね。そろそろ止めておこうと思います。


敬具 、私より





追伸

本当は「少し距離を置こう」と言うかどうか迷いました。でも、それを言ってしまうとますます再起不能になってしまうと思い、また本気で貴方を怒らせてしまうと思い、止めることにしました。









好きなように書いていたらこうなりました。

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