不意打ちに注意!
「えっ?」
ビックリした。なんと、あの黒髪くんが謝ってきたのだ。
「僕は気付かないうちにキミを見下していた様だ。本当にすまなかった」
いやいやいや……。別に謝らなくても良いのに。
みんなにそんな感じで思われても仕方ないしね……
「いえ、大丈夫です。全然気にして無いので。」
本当はちょっとだけイラッときてたけど……
「それで、早速なんだが、あの問題の解き方を教えてくれないか?よく分からないんだ…」
「あぁ、はい。えっとまずは点Aの座標を出すためにlimlogX\Xp=∞を用いて、計算して、この図形の体積を求めて……」
説明やっと終わった。相槌もなく無言なのが怖い。
「あの、理解してもらえましたか?説明が下手なので……」
「いや、僕にとってはすごくわかりやすかった。その……どうもありがとう」
「はい!」
ビックリした……いきなりお礼言われちゃった……
あっ!良いこと思いついた!
「あの……良かったらですけど、LI○E交換しませんか?もし授業とか、問題集とかわからない問題があったらお互い共有出来ますし……」
「あぁ、すまないがLI○Eはやっていないんだ」
「そうですか……」
……失敗した……
「でも、メアドで良いなら教えるが……」
「本当ですか?やった!」
「そんなに嬉しいものなのか?僕にはあまり理解出来ないが……(やはり他の女子と面倒くさいのは一緒なのだろうか?)
「あのー……私が問題を教える代わりと言ってはなんですが、この学校の事を私に教えてくれませんか?」
「ッフ……そう来くるのか。」
「だ、ダメでしたか?」
やっぱりこういう条件を出すのは恩着せがましかったのだろうか……
と思って黒髪くんの顔を見ると……
笑ってる。
というのも、少し目尻を下げただけだったが、その辺の男子みたいにゲラゲラ笑うわけではなくて、どこか品のある、そして今までの仏頂面からは想像もできないような笑い方だった。
「ッ……」
不意打ちは反則だ。不覚にも、そのギャップにドキッとしてしまった。
「じゃあ、ペンを貸してくれないか?」
「あ、はい」
キュキュッ
ペンを走らせる音が響く。書かれた文字は習字でもやっていたのだろうと思う位、整った字体だった。
流石、黒髪くん。
カサッ。
無言でメアドが書かれたメモを渡される。
「ついでに、電話番号も書いておいた。説明がなく、文字だけでは分かりにくい問題もあるだろうから……」
「あっ、ありがとうございます。じゃあ、何時くらいにメールすれば良いですか?」
「あぁ……まぁ出来れば夜の方が良いな」
「はい、分かりました」
キーンコーンカーンコーンーー
タイミング良くチャイムが鳴った。
「それでは、また夜に」
黒髪くんがコックリと頷くとお互い自分の席に座った。
この後の国語の授業で爆睡しそうになったのは言うまでも無い。