ショッピングモールにて Part2
とにかく、足早に駅前から大型ショッピングモールに移動した私達は、まず真っ先にフードコートに向かった。
ここのショッピングモールは、駅から歩いて行ける距離なので、休日の今日等は、人でごった返えしになっています。
おかげで私の事を目にしても、「似てる人か」としか思われないってさ。谷口先輩が、芸能界関係者から聞いた情報らしいです。特徴的な人ならまだしも、出たばかりのアイドル等は変装しなくても、堂々としていればバレないと言われました。なので、私は堂々と普段通りにしています。
うん、確かにチラチラこちらに顔を向ける人はいるけれど、声はかけてこないね。
「さて、朋美。何で、あの場で谷口先輩を誘ったの?」
私は、真正面にいる朋美に向かってそう言った。
「その前に、私に謝る事は?」
あぅ。痛いところを突いてきましたね。確かに、私が少し遅刻したことで、朋美がナンパされたもんね。
「あっ、はい。ごめんなさい」
私が謝ると、何と私の左隣に座っている美奈ちゃんが私を庇ってきたのです。
「朋美お姉ちゃん。そんなに明奈お姉ちゃんばかり責めちゃダメ。待ちきれなくなって改札に行っちゃった美奈も悪いし、一緒に改札に向かいに行かなくて、正面の本屋さんに走って行ったのは朋美お姉ちゃんでしょ?」
「ちょっと、美奈ちゃん! それは!」
慌てた朋美が、反対側の美奈ちゃんの口を閉じようと腕を伸ばすも、残念届きませんでしたね。
じゃぁ、お互いに非があるという事ですね。
「えっと、とりあえずお互い様と言うことだな。じゃぁ、俺はそろそろ……」
「ダメです。谷口先輩、まだナンパされるかも知れませんからね。ちゃんと、一緒にいて下さい。ね? 明奈ちゃん」
朋美は、帰ろうとしている谷口先輩の袖口を引っ張って引き止める。
それは、良いけど。何で最後に私に振るのかな? まるで私も、谷口先輩に一緒に居て欲しい事を了承しているみたいじゃん。
そりゃどちらかと言うと、居て欲しいけどね。でも、谷口先輩にも予定があるだろうからさ。
「いや、でも谷口先輩にも予定があるだろうし……」
そう言って、私が俯き加減で右隣に座っている谷口先輩を見た。腕を組み、何か考え事をしている。
すると、後ろから誰かが谷口先輩の肩を叩いた。
「まぁまぁ、こいつは今日は暇だからな。連れ回してやって良いぜ」
その声に、私も谷口先輩も後ろを振り向く。
するとそこには、坂谷君と脇田さんが立っていた。なるほど、多分この人達と何処かへ行く予定だったのか。でも、この2人はこっそりと着いて来た感じがしますね。
「なっ?! お前ら! 何言ってるんだ、今日は楽器を……」
「まぁ良いじゃ無いか。明奈の美人のお友達と、お近づきになるチャンスだ。明奈をお前が取るなら、俺はこっち狙うわ。悪くね~しな」
谷口先輩が、脇田さんに文句を言おうとしたけど、脇田さんがそれを止めました。と言うより、脇田さんの当初の予定が完全に変わっちゃったようですね。
「翔君、こうなった仁君は止められないの知ってるでしょ?」
坂谷君が、谷口先輩に諦めろと言わんばかりに首を横に振っている。成る程、何回か振り回された事があるみたいですね。
でも、朋美が怖がっちゃってるよ。ちょっと、縮こまってるからね。
だから、いきなり朋美の隣に座らないで欲しいかな。結構ズカズカくるね。悪い人じゃないのは、施設の時でだいたい分かったけど。駅前であんな事があった後だからね。
「ちょっと、脇田さん。朋美はさっき、質の悪いナンパに連れてかれそうになってるの。そういう行動は、少し控えて欲しいかな」
「あぁ、知ってるさ。それで、翔が華麗に追い払った所も見ていたさ。大丈夫だ、いきなり連絡先聞いたりはしね~よ。その辺りの節度は分かってるさ」
それなら安心だけど、朋美はまだちょっと警戒していますね。早めに、自己紹介をお願いしますね。
私は、その旨を脇田さんにそれとなく目で訴えて見た。
「あぁ、そうだった。自己紹介まだったな。俺は脇田仁、こっちは坂谷亮太だ。俺達は、谷口と明奈の友達だ。いきなり隣に座って悪かった」
私の訴えが分かったのか、ようやく脇田さんが坂谷君もまとめて自己紹介をして、いきなりの非礼に対して謝った。
見た目とは裏腹に、そういうことはちゃんと出来るんだね。それなら、最初からして欲しかったかな。
「あっ、そうだったのですか。いえ、谷口先輩の反応で分かっていましたが、見た目がちょっと。あっ! す、すいません。私は西澤朋美と言います。こっちは、垣沢美奈ちゃん。私のお隣さんのお友達です。そして、2人とも明奈の親友です」
朋美もしっかりと、脇田さん達に自己紹介をする。もちろん、美奈ちゃんもぺこりとお辞儀をしていた。よかった。何とか、険悪にならずに済みました。
その後は、お互い私との関係性説明していました。もちろん、脇田さんや坂谷君、谷口先輩が『スター・エンジェル』だと言うことは伏せてます。
話が長くなりそうなので、私はとりあえず飲み物を買ってくる事にし、席を立った。
「へぇ、じゃぁあんたにとって明奈は、無くてはならない存在なんだな。いい関係性を築けてるんだな」
「はい。もう、明奈ちゃんにホの字です私」
ちょっと、何告白しているの朋美ちゃん。あなたは、そっちの属性は無いと思ったのにな。
望お姉ちゃんで慣れてるから良いけどさ。普通の人なら、今ので飲み物の乗ったお盆を落としてるからね。
「朋美。あんまり、そう言うことは大きい声では言わない方が良いよ」
私は、そう言って人数分の飲み物のテーブルに置くと、それぞれの所に置いていく。
もちろん、皆申し訳なさそうにして後でお金を払うって言ってくる。
「別に良いですよ。私の奢りです。あっ、どうしても返したいなら、利子はトイチでお願いします」
「おおい! ぼったくるな!」
「冗談ですよ、谷口先輩。あっ、美奈ちゃんは気にしなくて良いからね」
全く、こんな事は冗談だって直ぐに分かって欲しかったかな。私の事、色々知ってるくせに。
そして、さりげなく皆が普段飲んでる飲み物を持ってきたのだけどね、脇田さんと坂谷君は、まだそんなにお互いの事を知らないから、施設に居た時に飲んでいた物を持ってきました。
「っていうか、明奈。俺や坂谷の好きな飲み物まで何で知ってんだ? 翔や友達とかなら分かるが、俺達まで分かるなんて」
「ん~? 施設で飲んでいたのを持って来ただけだよ。それが無難かなと思ってね。好きな飲み物だったんだね、よかった」
私は、微炭酸のリンゴジュースを飲みそう言った。皆、感心の目を私に向けている。
そんなに凄いことなのかな?
「ちっ、くそ。やっぱ、良い嫁さんになりそうだな明奈は。翔、お前明奈を幸せにしないとぶん殴るからな」
脇田さんが、谷口先輩にそう言っている。その前に、私と谷口先輩が結婚する事は決定なのですか? だからって、ここでそれを否定しても良いのかな?
私はそう思って、谷口先輩をチラッと横目で見る。
「あぁ、そうだな。絶対に幸せにするさ」
はい、否定できません。やられました。これは、完全にやられましたね。別に谷口先輩なら良いかもって、そう思っちゃってる私も居るんだよね。私は顔が熱くなるのを感じ、頭を抱えて突っ伏しました。
皆、それを見て微笑んでるのは見なくても分かります。
「ふ~ん。明奈お姉ちゃんって、翔お兄さんのお嫁さんになるんだね」
美奈ちゃんが、突っ伏した私を見てそう言ってくる。
小さい子供って遠慮を知らないと言うか、大人が言いにくい事を言っちゃうんだよね。余計に顔が上げられません。
誰か、話題変えて下さい。
「じゃぁ、西澤さんは好きな人や好きな芸能人とか居る?」
あ、ナイスです坂谷君。た、助かったよ。
でも、谷口先輩は私を幸せにすると言った所から、ずっと手を握っていますけどね。は、離してくれないかなぁ。あっ、違う。強く握らないで。
「私ですか? もちろん、『スター・エンジェル』ですよ!」
朋美が、坂谷君の質問に対して目を輝かせて答える。
勿論、それに対して脇田さんが食いつかない訳が無いですよね。坂谷君に続く様に、朋美に質問をしてくる。
「おっ? じゃぁ、メンバーの中で誰押しなの?」
あっ、待って。私、それ知ってる。ラファエルこと谷口先輩だよ!
い、今気づいた。しまった、脇田さんは多分自分達の事を明かそうとしているんじゃ……。
だとしたら、朋美とドロドロの三角関係に?!
「えっと、ラファエルさんです!」
あぁぁ。やばい、どうしよう。朋美、何の迷いも無く言っちゃったよ。これ、脇田さんはどう反応するの?
「あっ、ラファエルかぁ~全く、モテるなぁ」
はい、脇田さん。谷口先輩をチラ見しないで。バレるって、私はもう心臓がドキドキして生きた心地がしませんよ。
谷口先輩も、バツが悪そうな顔をしているよ。この人達、隠す気あるの?!
「あっ、でも。ウリエルも捨て難いな~」
「えっ?!」
だから、脇田さん。あからさまに反応しないで!
それより、朋美って美形なら誰でも良いって事? 面喰いなのかな?
う~ん。朋美のイメージが、変わってしまいそう。
「お~そうかそうか、ウリエルの何処が良いんだ?」
そりゃね脇田さん、自分の事だもんね聞きたいでしょうね。でも、興味津々な顔はしないで欲しいです。バレるってば。
「ん~、ラファエルさんがイチ押しだけど。あぁ見えて、Mっぽそうなウリエルさん。ラファエルさんに、押されて……何て展開が。ウフフ」
あっ。朋美の顔が変だ。何処か別の世界に行かれてる? 恍惚な表情で、涎垂らしてる。
そして、これも思い出した事が1つ。
「やっぱり、ウリエル攻めでラファエル受けが鉄板だけど、逆もまた然り。あ~でも、ラファエル攻めでガブリエル受けも。ミカエルさんは、全員に対して攻めだしねぇ。ウフ、ウフフ」
朋美、腐女子だった。
その場の空気が一瞬にして凍りついたのは、誰もが感じている事でした。
「あ、あぁ……そうか。あ~」
「脇田さん。朋美の彼氏の席空いてますよ。こんな子だけど」
「あ、いや。えっと。い、良い友達で良いかな? あ、はは」
ちょっと脇田さん、そんなドン引きしなくて良いじゃん。朋美と腐女子の方々に失礼ですよ。
そして、私はつまらなそうにストローをピコピコと、口で動かしている美奈ちゃんに目をやった。
「あっ、ごめんね美奈ちゃん。今の、分からないよね? と言うか、会話事態忘れてくれるかな?」
すると、美奈ちゃんが首を横に振り、意外な事を口にしてきた。
「ん~ん。要するに、テレビで出ているあの天使のお兄ちゃん達の事でしょう? ラファエルって人が、ウリエルに女性みたいな扱いをするんでしょう?」
「ブー!! み、美奈ちゃん、どこでそれを?!」
ノドが渇いたから、自分のジュースを口に含んだ瞬間の、この美奈ちゃんの発言。思い切り吹き出しちゃったよ。朋美に向けて。
「わ~! 朋美ごめん!」
「ううん、良いよ。寧ろ、明奈ちゃんの唾液にまみれられて幸せ……ウフフ」
「わ~!! 戻って来て朋美!!」
ダメだ、腐女子モードに入ったら手がつけられない。この子の前では、迂闊な発言はしない方が良いと、そう思った瞬間でした。
「お母さんが、アイドルが出ている時代劇見てて、そんなこと言ってたよ」
あぁ、美奈ちゃんのお母さんも同じだったのですか。だとしたら、この子も将来……。何て、考えるのはよそう。子供には、無限の可能性があるんだからね。




