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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第8章 決戦 ソロモン72柱『バティン』&『グシオン』
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決意の中で

 こういう時は、時間が過ぎるのが早いと思う。

車の中で、何を言おうか錯誤していると、もう学校に着いてしまいそうなの。


 後ろの席に座っている、藤本先生と柳田先生は、最初こそ色々うるさく言ってきたけれど、どっちにしても学校に着けば、全てが分かるんだと思ったのか今は静かです。


 そして、遂に学校の校門前にたどり着いた。

もちろん、後ろを走っていた両親の車もたどり着く。


 学校の外は意外と凄かった。報道陣がね。

あ~あ、全国の人達にまで私は自分の正体を明かすことになるのかな?

それより、こんな事態なのにミカエルさんはどうしたのでしょう?

全然出てこない。


「報道陣がいっぱいね」


「節度のねぇ奴等だ。下がらせるか?」


 鷹西先生と柳田先生が、唸りながら報道陣をどうしようか悩んでいる。

多分、柳田先生も薄々気づいているんだろうね。


「橋田。全てが終わったら、色々話して欲しい。“あの場所”で待っていてくれ」


 その言葉に私はゆっくりと頷いた。

藤本先生も、多分気づいている。だから、あの場所で話をしたいんだろうね。


「大丈夫? 明奈?」


「明奈、父さん達も一緒に……」


 母さんが言う中、父さんが続けて言ってくるけれど、私はその途中で首振り、父さんの言葉を遮る。


「お父さん。大丈夫、私1人で行く方が良いと思う。危ないかもしれないからね」


 私は、両親にそう言うと校門へと向かう。

すると、もちろんだけれど警察官が私を止めてくる。


「待ちなさい、ここから先は……」


「橋田晃の事について、その妹が話をしに来た。とだけ、伝えて」


 私のその言葉に、警察官が目を丸くして驚いている。

そして、慌てて無線でどこかに連絡している。

どうやら、上の人に指示を仰いで貰うつもりなのでしょう。


「はっ、はい。わ、わかりました! 許可が出た、私も一緒に行かせて貰うがいいか?」


「うん。後、ついでに後ろの人達もいいかな?」


 皆、心配なのは分かるけれども、着いて来こられるなんて思わなかったよ。

いや、私の正体を知りたい人もいるからしょうがないけれどもね。


「む、しかし……」


 警察官は、もちろん安全性を考え中に入らせる事はしないと思う。

でも、鷹西先生が真剣な顔つきで警察官に向かって言い放つ。


「何かあったら、私が取りますので通して貰えませんか? 捕らわれた生徒の安全を確保するのも、教師の務めですから!」


「沙耶ちゃんは、相変わらずくそ真面目だな」


「英二、お前はちょっと黙ってろ」


 ふふ、この3人は相変わらずだなぁ。

何だか、3人のやりとりを見て少しだけ懐かしい思いをした。

警察官の人は、鷹西先生の熱意に負け特例として通す事にしたみたいです。


 そして、家族を含む元同級生3人と綾子とでゾロゾロと校庭へと向かう。

もちろん、学生達は学校の外で見守っている。

でも、ソロモンの悪魔は私を社会的に抹殺するためなのか、報道陣を校庭の中に入れており、ズラリと校庭を囲む様にしている。


 谷口先輩にも、バレちゃうなぁ。嫌われるだろうなぁ。

こんな時に、谷口先輩の事が頭に浮かぶなんてね。


 そして、私はゆっくりと真ん中へと進んでいく。

家族達は、安全の為報道陣の所で立ち止まっている。


 私は、想像していたとおりの悪魔が真ん中に居たので、驚きも何もなかったよ。

ソロモン72柱の序列18位。ルシファーの側近、バティン。

相変わらず屈強な体に軍服を来て、腕組みをし仁王立ちしている。

でも、今回はその肩にはサルまで乗っている。

そしてそのサルは、私に目をやるとにやりと不気味な笑みを浮かべる。

まさか、こいつも……。


「バティンよ、こいつか?」


「そうだグシオン。そして、良く来たな。かの国では世話になった」


 そう言うと、バティンはスマイル100%の笑顔を私に向けてくる。

まただよ。この人、愛想ばっかり振りまいて逆に不気味です。


「あなた達の言うとおりに来たよ」


 もちろん、周りの報道陣の人達は私の言葉の意味を理解していない。

だって、橋田晃と言う名前からして如何にも男性であろう人物を、ここに連れてこいと言ってきた犯人に対して、今目の前に居るのはどう見ても女子である私だから。

報道陣は、もしかして私がそういう名前なのかと思っている様です。

無くはないからね。


「なら、覚悟は出来たと言うのか?」


 バティンの肩に乗ったサルが私に話しかける。

日本で見受けられるサルでは無い、その体は細くて腕も骨みたいに細いのです。

でも、顔は邪悪そうな人間に近い顔をしている。


「あなたも、ソロモンの悪魔?」


 とりあえず、先に私はそいつの正体を探る事にした。


「あぁ、そうだ。俺はグシオン。ソロモン72柱の序列11位の大公爵である」


 そんな、上位に位置する悪魔が2体か……。

ちょっと、ヤバいかもしれないよこれは。


「俺は、過去、現在、未来の知識を有していて、秘密の物事も知ることができるのさ。もう一つの能力は、制限されていて使えんがな。それさえ使えれば、お前など一発で悪魔側に誘導出来るのだがな」


 そんな、素晴らしい能力を持っているのですか。

結界を張ってくれた人にちょっとだけ感謝だね。

さてと、さすがに周りの人も焦れてきているかな。


「さて、我々は橋田晃と言う男性を連れて来いと言ったんだがな」


 バティンは、笑顔のままそう言ってくる。わざわざ、男性の部分を強調させて。

その笑顔、止めてくれないかな……。

そして、私は大きく深呼吸をする。それでも、高鳴る心臓を落ち着かせる事が出来ない。

私は意を決し、目をつり上げて2体の悪魔を睨みつける。


「とっくに知っているくせに。私が、橋田晃だということを」


 その瞬間、周りが静まり返る。それは、とんでもない事実を聞いた時の、人々の反応に違いなかった。


 でも、何だか不思議だった。

皆に正体がバレるのが嫌だった。

常に気を張っていた。バレない様にと。そして、親友と言ってくれる人に隠し事をしているという罪の意識。

それら全てを解放した時って、こんなにも清々しくなるんだ。

気が楽になるんだ。そんな思いが私の中に溢れていた。


「はは、マジかよ。お前、元々男だったのかよ! キ……」


「茶番は止めて。ソロモンの悪魔グシオン! そして、バティン!」


 私は、グシオンの言葉を止める様にそう叫んだ。

サルが喋っている時点で、皆普通じゃないのは分かっているはず。

バティン達も、自分の正体がバレても良いんだろうね。

そうなってでも、私を汚したいようです

だけど、もう遅いよ。

決意をした私は、もう誰にも汚されない。


「私は元々、橋田晃と言う男性で28年、自堕落に生きてきたわ。でも、今の私は橋田明奈15歳の天使の女の子よ!」


 私は、一旦隠していた羽根を瞬時に出現させると、皆に見える様に大きく広げて見せる。

そう、真っ黒なその羽根を。

皆、一様に同じ顔をしているのはちょっと面白いかな。

後、パシャパシャとカメラのシャッター音も聞こえてくる。

明日の新聞の一面は、私の姿がでかでかと載りそう。


 でもここまでの事態なのに、なんでミカエルさんは出てこないんだろう。


「これはこれは、ここまで堂々と開き直られるとは思わなかったよ。でもね、君は詰んでいるよ。何故なら、いつもいつも助けてくれるミカエル君は、俺が滅したからな」


「今、何て言ったの?」


 私は、バティンから放たれた言葉に耳を疑い再び聞き直す。


「だから、ミカエルは俺が滅したよ。必死に存在を残そうと、思念体を作ったとは言え、その状態で俺達から逃れる術はないからな」


 だから、ミカエルはこんな事態になっても来てくれなかったんだね。

でも、私は何故だか悲しくはなかった。

私の中に、ミカエルの転生したウイルスが居るからかな?


「そう、だったら尚更あなた達を野放しには出来ないわね」


 そして、私は校舎に目を向けると、心配そうな目を向ける理恵と朋美の姿があった。

大丈夫、皆が居てくれている。私の正体が何であれ、私は皆の幸せな生活を邪魔をする悪魔が許せない。

私は、悪魔達を再び睨むと手のひらを広げてダイスを出そうとする。

だけど、ダイスは出なかった。


「あ、あれ?」


 さすがにちょっと焦るよ。ダイスが無いと、私は何も出来ないってば。


「ほぅ。これはこれは、幸先が良いな。あのダイスは、ミカエルから授かった物だろう? ならば、ミカエルが消えたらそのダイスも使えなくなるのは、当然だろうな」


 バティンが自慢気にしながら、私に近づいてて来る。

殺すことは無いと思いたい。私を悪魔側に引きずり込みたいはず。


 でも、そもそも悪魔達はお互いにそんなに協力的ではない。

だから、ルシファーを復活させようとするかな? 恐らく、自分がその地位に座ろうとするはず。

あっ、ということは。これはピンチかも。


「これが、最後だ。俺達の仲間になれ。そうすれば、お前の大切な友達は返してやろう。まぁ、向こうは既に友達とは思っていないだろうがな。ずっと友達が隠してきた事、それが男だったという事はさすがにショックだろうしな」


 そんなことは、もう私には効かないよ。

たとえ、そうだとしても私は友達を助けるんだ。


 すると、急に頭に声が響いてくる。

それは、いつもいつも耳にしているあのミカエルの声だった。


『さぁ、チュートリアルは終わりだよ。ここから先は、君の力で切り開いていくんだ』


 その瞬間、私の中から何かが湧き上がってくる。

ううん、中じゃない。私の体全体から、暖かく優しい力と、冷たく冷酷な力が溢れ出してくる。


「な、なんだ! 貴様のその姿は!!」


 私は、自分の容姿なんて確認の仕様が無い。

でも、何か変化はしているんだと思う。グシオンの慌てた顔を見るとね。


 何だろう。もう、何も怖くない。だって、ソロモンの悪魔達を滅する力が、私の中に目覚めた感覚がする。


「これからあなた達に天罰を与えてあげる」

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