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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第7章 今日の後に今日なし ~ 3日間の出来事 ~
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絶対に見つける

 私は急いで家に向かっている。

ミカエルさんの連絡先を聞いていなかったのは痛かった。

何で聞いていないの私は。


 とにかく、谷口先輩ならミカエルさんの連絡先を知っているはず。でも、この前貰った連絡先のメモを家の机に置きっぱなしなの。

だから、なんで登録していないの私は。

すると、私の後ろから知った声が聞こえる。


「やぁ、そんな険しい表情で急いでるなんて、誰かを探しているのかい?」


 私は、咄嗟にその声のする方を振り向く。

するとそこには、ミカエルさんが笑顔で立っている。

こんな緊急事態になんで笑顔なの?!


「ミ、ミカエルさん!! 丁度よかった!」


 私は、その姿を見た瞬間足を止めようとする。

でも、それより前にミカエルさんが何か言ってくる。


「あ、前、前」


「きゃんっ?!」


 思いっきり、曲がり角の手前の電柱にぶつかっちゃった。

もっと早くに声をかけてよ。


「うぅ、電柱め。なんでこんな所にいるの!」


「いや、電柱は悪くないでしょ。君が悪いんでしょ」


「私は、急には止まれない」


「止まろうよ」


 絶対笑顔だったのは、これを予想していたからだ。

というか、ミカエルさんと漫才している場合じゃない。


「そんなことより、ミカエルさん。力を貸して! 私の2人の友達が、ソロモンの悪魔に連れ去られたのかも知れないの!」


 すると、ミカエルさんが意外な事を言ってきた。


「あぁ、僕もその為に君を探していたんだよ。今回、君の力が必須になりそうだからね」


「えっ?!」


「とりあえず、事態は一刻を争うんだ。行きながらに詳しく説明するよ。とにかく彼女達は、別の国に飛ばされたんだ。意識阻害の結界を張るから、羽根で飛んでいくよ」


 そういえば、ミカエルさんは眼鏡を付けていなかった。

更に、真剣な顔つきになっており。いつもふざけているミカエルさんでも、これはそれだけ緊急事態という事なのでしょう。だったら急がないと。








「ねぇ、ミカエルさん。ちょっと待って。私こんなスピードで飛ぶの初めてなの!」


 別の国と言うので予想はしていた。けれど、見渡す限りの大海原。そこを私達は、飛行機よりも早い速度で飛んでいた。

時速と言われても分からないもん。

多分だけれど、飛行機よりは早いかなぐらいです。


「でも、ほんとに急がないと。彼女等の命が危ないんだ」


 それを聞いたら、なおさら急ぎたい。けれど、体がついていかない。

もっと、飛ぶ練習をしておけば良かった。

夜中に、こっそりと屋根に上がる程度にしていたからね。

見つかると大変ということもあるから、もっと人目に付きにくい山とかに行って練習しようかなぁ。

でも、今は取りあえず2人が飛ばされた国まで辿りつかなければ。


「はぁ、はぁ……」


 必死に、羽根で風の受け方を調節し、たまに羽ばたき速度を調節する。

鳥さんは、毎日こんな事をやっているなんて感心しちゃうな。


「う~ん、やっぱり無理してもだから。少しだけ休憩しよう。この調子だと、後1時間で着きそうだよ」


 わぁ、ほんとに飛行機よりも速い速度で飛んでいたんだね。

すると、ミカエルさんが海からちょっとだけ出ている、黒っぽい岩の様な所に降り立つ。


 ほんの少し休憩するだけでも、全然違うからね。

でも、出来るだけ早く出発したいかな。だんだん薄暗くなってきたもん。

そんな事を考えながら、私もミカエルさんと同じ所に降りた。


 だけど、ちょっとおかしい。こんな大海原にポツンと存在している岩だから、濡れているのは良いけれども。


「なんかここ。普通の岩じゃないのですか?」


 不信に思った私は、ミカエルさんに質問するけれども、ミカエルさんは答えなかった。なんだか、にやにや笑っているのが気になる。


 というか、動いてるよね? これ。

後、ミカエルさんの背後に小さな穴が見えるんだけど。

すると、いきなりその穴から潮が吹き出す。


「うきゃぁぁああ!!」


 私は、そう叫ぶと咄嗟に飛び上がった。

だって、これクジラさんじゃん!!


「どうしたの? 休まないのかい?」


「いや、だって。それクジラさんだよ!」


 私は、そう言ってクジラさんを指さした。

体の色からして、シロナガスクジラではないけれども、そこそこの大きさのクジラさんだった。


「クジラは息つぎの為に海面に上がるからさ、しばらくは大丈夫だよ~」


「潜ったり、出たりを繰り返したりだけどね」


 すると、クジラさんは息をそこそこ吸ったのか。今度は海に潜りはじめた。


「あっ! ミカエルさん!」


「だいじょうブクブクブク……」


 すると、またクジラさんは海面に上がってくる。


「ほら、こうやってすぐに上がってくるから」


 あ、また潜った。


「しばらく背中に乗ってもオボボボ……」


「遊んでる場合じゃないでしょう!!」


 何やってんの、この人はいったい。

真剣な時にまで遊ぶなんて。1度、脳を輪切りしてみたい。

あっ、でも。この人はもう思念対で、今の体も借り物だったよね。

あれ? じゃぁ。脳はその体の人の物? 


「……」


 深く考えたら、頭が痛くなってきそうです。

脳は、ミカエルさんの物としておきましょう。


「ふう、だいぶ涼しめたね。これから行く国は暑いからね~」


 でも、私は目を細めてミカエルさんを睨みつける。

眼鏡を取っているのに、こんな事をするなんて。この人、素もおちゃらけた人なんだね。

私は、無言でミカエルさんが向かっていた方向に飛んでいく。


「わぁ! 待ってってば。君1人じゃ危ないし、意識阻害の結界から出ちゃうよ!」


「おちゃらけた人なんか、信用できませ~ん! ついてこないで下さい!」


 そう言って、私は出来る限りの速度を出して、ミカエルさんから離れようとする。


「こらこら、待ちなさい! 僕が悪かったから!」


 さすがミカエルさん。速いです。全然、距離を作れない。

必死に羽ばたいて速度を出し、気流に乗る。

でも、ミカエルさんも同じ気流に乗るから、追いつかれるんだよね。





 そうこうしているうちに、遠くに陸地が見えてきた。

でも、緑は無さそうな感じです。


「おやおや、君が頑張るから早めに着いたね。良かった良かった」


 まさか、これを狙っていたの?

まぁ、良いです。早く着いたのならね。

辺りはまだ暗くなっていないから、夜になる前に着けたと言うことだね。

家族には、事情を説明して出てきたけれど。やっぱり、あんまり夜遅くというのは心配されるからね。


 そして、私達の眼下には陸地が広がりだす。

でも、見た限りでは砂漠が多い気がする。そして、今飛んで向かっている方向からして目的地は恐らく。


「だいたい、予想は出来たかな? これから向かう国は、中東のある国だよ。そこは内戦の多い場所でもあるからね。だから一刻を争うんだよ」


 そんな所に2人は飛ばされたの。だとしたらもう……。

私が絶望的な顔をしていたから、ミカエルさんが心配させない様に、声をかけてきてくれた。


「大丈夫とは言い難いけれど、ソロモンの悪魔も近くに居るはずだし。利用する為にさらったのなら、見殺しにするような事はしないはず。それでもどんな言い訳をしたとしても、現地の人を留めておける時間は限られている。だから、急ぐ必要があったんだよ」


 だったら、クジラさんで遊ばないで下さいよ。

私はそう訴える様に、また目を細めて睨みつける。


「あっ、ちょっと。その目やめて」


「自覚はあるようですね。なら、次やったら眼鏡割ります」


 私のその言葉に、ミカエルさんは冷や汗を流している。いい気味ですよ。

でも、今はミカエルさんよりも2人を助け出す事を考えないとね。

絶対に見つけて、助けるからね。待っていて2人とも。


 私は、意を決して羽ばたく羽根に力を入れて、更に速度を上げていく。

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