決戦の後
「望お姉ちゃん。そろそろ、下ろしてくれる?」
俺は、まだ望お姉ちゃんにおんぶされたままです。
途中トイレによって、子供用のセーラー服に着替えさせられたけどね。
「ダメで~す、また転んだら危ないでしょ?」
俺がこの姿になった時の望お姉ちゃんは、もう完全に保護者です。困ったものです。
そうこうしているうちに映画部の部室に着きました。多分、誰も居ないはず。
「あれ? 鍵空いてるよ。誰かいるの? おじゃましま~す」
えっ? 鍵空いてたって、誰がいるの?
望お姉ちゃんが確認しながら、部室の扉を開ける。
「あら、いらっしゃい」
「あ~き~な!! 来てくれるなんて~って、何その姿?!」
すると、部室内には神森先輩と吉川先輩がいた。
そう言えば、この2人体育館に居なかったね。
ついでに、吉川先輩は飢えた様子で俺に飛びかかって来たけれど、望お姉ちゃんにおんぶされていたので、襲われる事はなかった。
おんぶされていて正解だったね。
その前に、俺の姿を見て立ち止まったけどね。
で、この2人にこの姿を見せるのは初めてだったっけ?
しまった、説明する人達が増えちゃった。面倒くさいなぁ。
「か、か、可愛い!!」
ダメでした、やっぱり吉川先輩は突撃してきました。
しょうが無い。必殺技を出すしか無いね。
「お姉ちゃんパーンチ」
「は~い!」
「げふぅ! な、何するの望!」
う~ん、お姉ちゃんロボットに乗ってる気分。
しかも、望お姉ちゃん割と本気でパンチを当てたね。
「私は、今明奈のロボットですよ~同級生? 何それ? クラスが違うから知りません~」
「ちょっと! 割と会話してるよね? 私達!」
あれ、この人達と交流あったんだね望お姉ちゃん。
「あっ、それよりも吉川先輩。後ろ」
「ほぇ? ギャフン!!」
あぁ、遅かった。神森先輩が、後ろから凄いオーラ出して近寄ってきていたから、教えてあげたんだけれど。神森先輩は見事に、脳天に拳を振り下ろしてました。
「亜希子。あなたは、赤点取ってしまって補習だったのでしょう? そして、明日もあるからって私に泣きついてきたのは誰よ?」
神森先輩、わざわざ説明ありがとうございます。
「何も、本気で殴ることないでしょう?」
吉川先輩が、涙目で神森先輩に文句を言っているけれど完全に自業自得だよ。
「付き合わされるこちらの身にもなってよね。それよりも明奈さん。今日、奈々美の事で何か勝負をしたらしいわね。応援に行けなくてごめんなさい」
「あっ、いえ。勝手にこんな事をしてしまったんです。気にしないで下さい」
神森先輩が静々と言うものだから、ついついこっちもかしこまっちゃうよ。
「それで、明奈さんその“素敵な”姿はその勝負で?」
あ、あれ。神森先輩の目が、獲物を捕食するような目になっていますよ。
も、もしかして。この人も危ないのですか?
「明奈。ちゃんと私が守るから。首締めないでくれる?」
「へっ? あ、あっ! ごめん、望お姉ちゃん」
いつの間にか、怖がってしまってお姉ちゃんの首を締めちゃってましたよ。
「あらあら、怖がらせちゃいました? ごめんなさい」
とにかく、映画部の人達は皆危ないと言うことですね。
気を付けないと、何をされるやら。ブルブル。
「映画部の人達の変態っぷりには、油断はしたらダメだね」
「おいおい、俺は変態じゃないだろ?」
あっ、谷口先輩。やっと来ましたか。
他の皆も、後ろからやって来ている。
「へぇ、翔。あんたは普通だって言いたいの?」
「当たり前だろ、亜希子。俺は至って誠実」
「今の明奈のパンツ見て、股間の部分盛り上げてるのに?」
へっ? パンツって?
吉川先輩の言葉に驚いて、俺はゆっくりと視線を後ろにやりそのまま下に下ろすと。
なんと、望お姉ちゃんはスカートを巻き込んでおんぶせずに、そのままスカートの中に手を入れておんぶしてていたので、いつの間にかまくり上がっていて、その、丸見えでした。
「わぁ!! お姉ちゃん! 見えてる、見えてるよ!! 下ろしてぇ!!」
「え~! だって、明奈のお尻触りたかったんだもん~」
この人も変態でした!! 俺の周りには変態しか集まらないのですか?!
「もう~、皆変態だ~!!」
「なるほど、そんなことが……。普通は信じられないけれど、あなたのその姿と体育館でやったことを見た後では、信じるしかないわね」
望お姉ちゃんが皆に説明し終わった後、鷹西先生が唸りながらそう呟いています。
普通なら信用しないだろうね。うん。
「明奈、ごめんってば!」
「は、橋田さん。その、ごめん。注意しようとした瞬間に、亜希子に言われるとは思わなかった、許してくれ」
その後に、吉川先輩と谷口先輩が謝ってくる。
でもそんなことを言われても、今は見るな、触れるな、話しかけるなです。
俺はいつものように羽根で小さな体を隠すようにして、隙間から皆を睨んでいます。
「う~!!」
ついでに、威嚇の声も出しておけば大丈夫でしょう。
「あらあら、ダメね。しばらくはそっとしておきましょう。それで、望さん。明奈さんが撃った相手だけれど、あれは何者なの? 死んだとかじゃ無いわよね?」
「えっと、それは。私も説明がまだで。悪魔だとは言っていたけれども、いつもの奴とは違ったから。でも、明奈は今……」
う~。そう言えば、望お姉ちゃんにも説明がまだでした。
簡単に説明して、相手が悪魔だとは言っていたけれども、ソロモンの悪魔とは言っていないだよね。しょうがない。
「あいつは、ソロモンの悪魔だよ。確か序列71位の悪魔、大公爵ダンタリオンだっかな」
俺の言葉に、谷口先輩以外の皆が振り向いて目を丸くしている。
あれ? そんなに驚く事?
「ちょっ、明奈。今なんて?」
「凄い人の名前が出ましたね。聞いたことはないですが、ソロモンという時点で強力な悪魔ということは間違いないのでしょうね」
望お姉ちゃんが、驚きの声を上げるなか。鷹西先生だけは、冷静に分析していました。
さすが大人の女性です。
俺も大人だったけどね。でも、最近精神が退行している気がする。
「明奈、そんな危険な悪魔と戦うなんて。なに無茶しているのよ!」
あっ、待って望お姉ちゃん。羽根をそんなに乱暴に触らないで!
「お姉さん、心配されるのは分かりますけど。明奈ちゃんが、自分で覚悟して挑んだ勝負ですよ。過保護になってもしょうがないですよ。それに、様子からして命まで取られる感じではなかったでしょう?」
あぁ、朋美ナイスフォローだよ。
でも、なんだろう。視線がね、大切な人を取られてたまるかって視線だよ。で、望お姉ちゃんもライバルが登場したような目で睨み返さないで!
あぁ、2人の視線の間に火花が飛び散ってそう。
「ちょっと、2人とも落ち着いてよ。それにソロモンの悪魔と言っても、人間界のここでは、神の結果があって力が制限されていたんだから、命の危険はなかったんだよ。だから、あいつ等は悪だくみで羽根を持っている人達の心を汚して、天使への転生を阻止しようとしてきているんだよ」
俺は羽根を戻して、皆に一生懸命説明する。
というか、こんな面倒くさい説明はミカエルが……って、いない~!!
いつの間にかいなくなってる! あ、体育館出たときからすでに居ない!
それに、谷口先輩以外は怪しんでなかったというこは、意識阻害の結界を至近距離でもはれるんじゃん。
今度会ったら、眼鏡を割ってあげましょう。
「全く、ミカエルさんは相変わらず、のらりくらりと面倒くさい事だけを残していくな」
「同感です」
いつの間にか、谷口先輩が隣に座っている。
別に、良いですよ。隣くらい。
でもね、肩を抱くのは別の意味で危ないですよ?
「むっ! 谷口先輩、明奈ちゃんに何スキンシップしているんですか!」
「こら!! 谷口君! 私の明奈に何しているの?!」
「うおっ! こわ!」
ほら見たことか。でも、谷口先輩ビビりすぎだってば。
「あっはは、明奈はモテモテだね~悪魔だとか私にはちんぷんかんぷんだわ~」
「おぉ、気が合うね君!」
「私もサッパリですわ~!!」
理恵と、吉川先輩と宝条さんは黙っていて下さい。
あと、理恵と吉川先輩。友情芽生えたからって、ガシッと力強く握手しないで。
「おバカタッグ結成ね」
「はい、先輩」
止めて下さい。不吉すぎます。
でも、それは言っちゃ良くないよね。
ほら神森先輩がね、怖い顔しているよ。
「あら、じゃぁ2人一緒に24時間お勉強会といきましょうかしら?」
「あっ、私は赤点ギリギリ免れたんで~」
「あ~! せっかく、タッグ組んだのにいきなり先輩の私を売る気~?!」
すいませんけども、皆さん。
「話が進まない~!!」




