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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第1章 天使の羽根
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他とは違う?!

 様々な検査を終え、俺は診察室に戻っていた。

普通、血液検査の結果なんて最低でも1週間は待たなきゃならんが。

この『天使の羽根症候群』の場合は違っていた。


「さて、血液を調べさせてもらったのですが……天使の羽根が生えた方達に共通のものが、ありませんでした」


「どういうことだ?」


俺は首を傾げた。天使の羽根が生えた奴らに、何か共通するものがあったのか。


「天使の羽根が生える原因は、実は殆ど解明されています。それが、ある未知のウイルスが原因とされているのです」


「未知のウイルス??」


俺も含め両親までも首を傾げた。

ウイルスってだけで、何か危なそうな響きだしな。


「遥か遠いこの銀河の何処からか飛来し、地球に落ちた隕石からその未知のウイルスが検出され、尚且つ天使の羽根が生えた人達の血液内からも、このウイルスは検出されています」


「マジでか……」


 勿論、俺は開いた口が塞がらなかった。

後ろの両親も同じようにポカーンとしている。その様子からして、ニュースでもやっていない情報なのだろう。


「あぁ、ウイルスと言ってもご安心を命に関わるものでもないですし、人から人からへの感染は見受けられないので。ただ、そのウイルスがどう作用し、人にどう感染したのかはまだ研究中なので、メディアへの発表はしていないのです。要するに極秘事項ということです」


 言葉が出なかった。途方もない話のようで、頭が話についていけてない。ヒートしそうだ。とういうか煙の1本や2本は出てるはず。


「でも、なんでそんな極秘事項を私達に?」


 母さんが突然質問してきた。この人話についてけてるのか。


「ですから、共通するものがないのです。つまり、あなたの血液からは、ウイルスが見つからなかったのです」


「え? ですが精密検査をしたわけでも無いのにですか?」


 母さんがすかさず反論した。そりゃ原因不明と言われたくはない。


「残念ながら、このウイルスは精密検査をしなくとも専用の顕微鏡を使えば、見られるのですよ」


「そんな……じゃぁ、晃のこれはいったい何なのですか?!」


「残念ながら、原因不明です」


 言われちゃったな。医師からの原因不明宣言。一発KOされた気分。


「そんな……」


 家族揃って同じ言葉出て同じように肩を落とした。こんな時だけ息が合ってもしょうがないだろうが。


「とにかく、気を落とさずに新たな症状として今後も検査していきます。今日採取した血液も精密検査に回します。あと、様々なカルテの記録、歯の治療痕から橋田晃さんというのは、ほぼ確実です。羽根が生えるだけじゃなく、男性から女性に等あり得ない症状だらけで、正直私も困惑してます」


 医者までもが困惑するとは、俺の体に何が起きてやがる。


「とにかく、よろしくお願いします」


 両親は深々と頭を下げた。


「善処はします。しかし、最悪どうにもならない場合も頭に入れておいてください。後、何かあればすぐご連絡を」


 この医者よっぽど自信ないのか、不吉な言葉を残すな。

俺は、足取りが重くなりトボトボと診察室を出た。

これから、どうなってしまうのだろうか。不安だけが頭の中に満ちていく。





「晃、元気出しなさい。現状では、元に戻る方法がわからないなら、その体で生活していくしかないでしょう?」


 病院から出て、今度はショッピングモールへ向かう為車を走らせていた。

しかし、俺は病院を出てからずっとぼ~っとして、心ここにあらずの状態だ。

そら、ショックだろう。『天使の羽根症候群』と思いきや、違うと言われ更には原因不明と言われたら、誰だってこんな無気力な状態にもなるさ。


「全く、そんな状態ならあなたの服装はフリフリのレースだらけの、可愛いらしいお洋服ばかりにしましょうかね~」


「それだけはやめろ!!」


 俺は、 もたたれかっていた体をガバッと起こして叫んだ。勘弁してくれそれだけは。

キャッキャッウフフな事はしたくないぞ。


「あと、言葉使いと行動よね~その体で男口調にがに股じゃ怪しすぎるわよ?」


「うぐっ……何で、母さんはそんな開き直って前向きなんだ?」


 たった一瞬でこの変わり様。病院では不安そうだったのが嘘のようだ。


「開き直ってないわよ。ただ、何時までも沈んでてもしょうがないでしょう? お医者さんにしか頼めないし、私達に出来ることが無いなら、今の状態で生活する事を先ずは考えないとでしょ?」


 確かに、沈んでたところで何か打開策があるわけでも、浮かんでくるわけでもなかった。母は強しとはこの事か。


「さ~て、どんなお洋服が良いかしらね~始めは、ボーイッシュから入って、徐徐に慣らしてフリフリなのを……」


「何を考えてるんですか? “お母様”」


 怒りのこもった俺のこの言葉に、母さんは身震いしゆっくりと助手席から後部座席の俺に顔を向けた。

俺はニッコリと微笑む。悪魔の様な笑みを。

しかし、意外とこの言葉使いは使えそうだが俺の精神の摩耗が激しすぎるな。あまり多用しないでおこう。

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