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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第6章 決戦 ソロモン72柱『ダンタリオン』
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VS ダンタリオン ~ 人狼ゲーム ~ ①

 あっという間に翌日の放課後になり、俺は5人のメンバーと共に体育館へと向かう。


 正直、ほんとにあっという間なのです。その間の授業も、ほとんど頭に入らない程であり、昨日の夜家族に事情を説明し、万全を尽くすしかないと励まされても、生きた心地がしなかった。


「よくよく考えたら、あんな切れ者相手に、秘策なんて決まるかも怪しいもんだよね」


 この対戦の日までの間に、色々考えてしまい。俺はすっかりと自信を無くしていた。


「そんなこと無いよ。私達がいるから!」


「そうですわよ、明奈! 大会の時みたいに、自信満々に戦えば良いのですよ!」


 今日、朝からずっと皆が励ましてくれている。

そんなに、俺の顔は自信無く見えたのかな。


「ん、ありがとう。分かった、やるだけやってみる」


 皆がこんなに励ましてくれているんだ、気をしっかり持ってやるだけやってみるか。


 そして、体育館にたどり着くと入り口が開け放たれている。まるで、ぽっかりと口を開けて獲物を待っているような、そんな恐ろしい感じがする。

俺は、一瞬入り口の手前で足を止めてしまう。

体育館の中には、全校生徒が集まっているのではないかと思うほどに、先生や生徒が集まっていた。


「うっわ……。皆、暇なの?」


 ついつい、そんな愚痴をこぼしてしまう。


「どうだろうな。ただ2年以外は皆、この学校のいじめはおかしいと感じていたんだろうな。そんな中で、こんな事が起きたんだ。やはり、普通じゃないと感じて皆集まったんだろ」


 谷口先輩が、俺の後ろからそう言ってくるんだけれど、俺は今谷口先輩の顔をまともに見られません。

絶対に、顔真っ赤になっちゃって思考がめちゃくちゃになります。

ゲームが始まってしまえば、気にならなくなるはず。


 それまでは、谷口先輩の顔を見たらダメ。うん。よし、大丈夫。

俺には心強い味方がいるんだから。

そして、俺達は体育館に入っていく。


「やぁ、逃げずに来たようだね」


 体育館に入ると、真っ先に多田が俺達に向かって声をかけてきた。

大量の見学者達はざわついており、ソワソワと落ち着きが無い様子である。

多田の左右には、多田が選んだ2年生5人がこちらを見て、にやにやしながら立っている。


「さて、前置きはいいだろう。早速、ゲームを始めよう」


「その前に、どんなゲームで対戦するの?」


 俺は先ず、対戦するのゲームの内容を知りたくてそう質問した。

なぜなら、中央にイスが円の様に置かれているからである。

何だろう、まさかイス取りゲームとか言わないだろうね。

でも、それならもっと円の大きさは小さいし、固める様にして置くはず。

これは、どちらかというと会議をするような感じの大きさである。


「ふっ、これから行うゲームは。ゲームの腕は関係ない。その知識と、精神力で戦うゲームだ」


「もったいぶらずに、教えなって」


 理恵が腕を組み、イライラしながら聞き返している。


「人狼だ」


 人狼……。少し前に有名になったゲームじゃないか。

でもね、何人か頭捻ってるよ!


「人狼って何?」


 そう聞き返したのは、理恵だけど。他にも、宝条さんと谷口先輩も分かっていなさそうだった。

さすがに、朋美は分かっているみたいです。ゲーム名を聞いた瞬間、顔が険しくなり、しかしその後不思議そうに考え込む表情を見せる。


 当然、俺も知ってはいるけれども。リアルではやったことがない。オンラインゲームでやったことはあるけれど、かなりカオスな事になっていた為、すぐに止めてしまった。

なので、ルール位は分かる。というわけで、俺が説明するとしよう。


「えっとね。長くなるけど、良いかな?」


 その言葉に、ゲーム内容が分からない3人が頷く。


「簡単に言うとね。人狼側と村人側に分かれて、村人が自分達の中に紛れて正体を隠している人狼を見つけて、処刑していくゲームよ」


 とりあえず、ここまでは3人ともウンウンと頷いている。


「で、人狼側は自分の正体がバレない様にして、毎晩村人達を殺していくの。村人側は、毎朝犠牲者が出る度に誰が人狼なのかを調べるの。そして、相談しながら怪しいと思った人物を夜になる前に処刑するの。だから動きとしては、朝にみんなで話合い誰が人狼なのかをピックアップするの。怪しまれた人は、何とか処刑されずにしないといけないわね。人狼は、ひたすらに怪しまれないように会話する必要があるわ」


「ふぇ、ちょっと待って難しくない? それ?」


 理恵の頭から煙が見える。やっぱり理恵のおつむではキツいでしょうかね。


「その、怪しい人物ってのは会話だけで見つけないとダメなのか?」


 お、さすがに谷口先輩はだいたい理解しているご様子。

俺の説明も大ざっぱなのに、よく分かるね。


「そこで、特殊な能力を持った役があるのよ」


「役ですか? お金持ちとかですか?」


 発想がなかなかです。でも、確かスマホのアプリには富豪なんて役があったはず。

とりあえず、今回はそんな難しい役は使わないはず。簡単な役だけ、説明しておこう。


「まぁ、この役ってオリジナルで色々作れるのよ。このゲームって著作権ないからさ、皆好きな様に設定して遊べるのよ。でも、基本的な役はあるから、それは説明しておくね」


 その言葉に、3人が耳を傾かせて真剣に聞き取ろうとしている。


「まず、『占い師』この人は夜の間に怪しいと思った人物を占えるわ。そして、朝にその結果出て、人狼なのか村人なのかが分かるの」


「あら、簡単ではないですか?! その人がどんどん占って人狼を探すだけですわね!」


 宝条さんが、当たり前の事を言ってくるんだけれど、これはそう簡単なゲームじゃないんだよね。


「綾子ちゃん、最後まで役を聞いててね。役は誰がどの役なのかが分からないのよ、私が『占い師』ですって言っても、その人が人狼かもしれないのよ」


「あら、なるほど。ならば嘘が得意な人は有利なのね」


 朋美、説明ありがとう。

嘘が得意だと、人狼が得意ってわけでもないんだよね。それだけ難しいんだよ、このゲームは。


「とにかく、他にも役があるからどんどん言うわね。次に『霊媒師』この人は、朝になるとその前日に処刑された人が、人狼か村人かを見ることが出来るの。そして、『騎士』この人は夜の間好きなプレイヤーを1人守れるわ。そして、後は『村人』ってわけ、これは何の能力も無く、ただひたすらに怪しい人物を探して処刑していくだけよ。処刑するのを誰にするかは、皆の投票で決まるの。今回の人数だと、村人側の役はこんなものかな?」


 俺は、確認の為に多田に視線を送ると、その通りと言わんばかりにコクリと頷く。


「そして、次に人狼側の役ね。『人狼』は、簡単よ。この人数だと2人が人狼になるわね。そして、人狼は夜に殺す人物を決めるのよ。普通は、人狼同士はお互いが誰に入れたか、分かるようになっているけれども……」


 そうリアルの場合、アプリを使う事が多いかな。

その場合、見えない様に回し合えば人狼同士で、お互い誰に入れたか分かるようになっていて、意思疎通が出来るが。今回はどうするんだろう? 


「そうだな、今回は人狼の2人は意思疎通が出来ない設定にしておこう。つまり誰を殺すかの投票が別れた場合。ゲーム進行役の先生に、ランダムに決めてもらうことにする」


 すると、多田がその様に説明してきた。

なるほど。相談する時間もあるし、ゲームの進行役は参加者以外がベストかな。


「じゃぁ、後は『狂人』だけど二重人格者とか、色んな呼び方があるけど、分かりやすい呼び方にするね。この役は人狼側。人狼を勝たせる事が目的なの。ただ特殊なのが、占い師に占われても、霊媒師に見られても、『村人』として出るのよね。だからかなり厄介な存在よ。とまぁ、役はこんなものよ。後は、勝利条件だけれども。村人側は、人狼を全滅させれば勝ち。人狼側は、生き残っている人狼の数と村人の数が一緒になれば勝ち。つまり、人狼が2人生き残っていて、村人が2人まで減れば人狼側の勝ち。分かった?」


 とりあえず、理恵以外は何とか分かった様です。

ちょっと、理恵さんだけじっくりと別で説明してあげよう。



 数分後、何とか理恵も理解出来たようです。

さて、これで準備は出来た。けれど、朋美が悩んでいた事が俺にも分かった。


「あのさぁ、多田……先輩。これ、どうやって敵対した私達の勝敗をつけるの? あなたも私も村人になったら、どうやって勝ち負けつけるのよ」


 そう、このゲームは最初から敵対して戦う様なものではなくて、完全に敵味方はランダムである。


「あぁ、それは簡単だ。君の所属しているチームが勝てば、それで君の勝ちにしよう。君の所属しているチームが負けたら、私の勝ちだ」


 なるほどね。それなら、何とか……ならないね。

俺が人狼側になったらすっごい不利だよ。

現に、このゲームは人狼側の勝率は限りなく低い。


 というか、多田先輩も俺も人狼側になったら負け確定じゃないのかな?

あれ、これははめられたかな……。

しょうがないなぁ……。

少し、仕込んでおこう。


「さて、ルールが分かったら席に着いてくれ。そして、ここからは番号でお互いを呼び合ってもらう」


 そして、俺達は席に着いていく。

すると、俺達の間を1つずつ開けて座らせ、その間に2年生を座らせている。

なるほど、俺が余計な事をしないようにか。

だけどもう遅いよ。


 多田が1番。

その次に2番の朋美。

そして、3番は2年生。

次に4番の谷口先輩。

5番は2年生。

6番に俺。

7番は2年生。

8番は宝条さん

9番2年生。

最後10番が理恵か。


 番号はざっとこんな感じで振り分けられた。

そして、多田がゲーム開始を宣言する。


「さぁ……ゲームを始めようか」

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