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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第5章 それぞれの目的の為に
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ご令嬢の休日

「明奈ちゃん~いい加減、起きなさい」


 ん~、もう朝ですか。テスト明けだからもう少し寝かして欲しいところだよ。


「もうお昼よ~明奈ちゃん~」


 あ~、分かりましたから。私に掃除機をかけないで。

我が子を何だと思っているんだろう。この人は。


「ふぁ~、おはよう」


「おはようじゃないわよ。全く、ほらお客さん来てるんだからしゃんとしなさい」


 えっ? お客? 誰?


「あらあら! お寝坊さんね~明奈は」


 そう言いながら、宝条さんが部屋に入ってきた。


「わぁ!! 宝条さん?! 何で来てるの?!」


 俺は、慌てて布団を被る。答えは簡単、パジャマがはだけていたからです。


「あら、休日を親友と過ごそうというのは当然じゃありませんこと?」


 今日は、宝条さんはゴテゴテした服装ではなくロングスカートでラフな格好である、一般の人と合わせているのだろう。

というか1つ疑問が。


「あれ? そう言えば宝条さん。中間テストの時いなかったよね?」


「あぁ、仕方ないですわよ。ヴァイオリンの海外コンクールがありましたので、そちらに参加していましたの。テストなど、後で受け直したらよろしいでしょ?」


 テストよりも、そちらをとるとはさすがお嬢様。

俺は、その感性の違いに少し口元をひくつかせていた。







「で、これから何処行くの? 宝条さん」


「綾子でいいわよ明奈。ふふ、それはお楽しみよ」


 お楽しみって、今高級ベンツに乗っていること事態が普通じゃないから、聞いているんです。


「それよりも、身支度に時間がかからないなんて。羨ましいですわ、その髪に、その肌」


 確かに寝癖もクシをかけるだけで直るし、肌も何もしなくてもいつも整っている。


「そうそう、明奈は今日はまだ何も食べていないでしょう? 少しお昼にしませんこと?」


「それは、良いけれど。今日はペットは?」


 俺は、宝条さんがブタお兄さんを連れていないことに気づいたので一応確認をする。


「あの子は今日はお留守番です」


 そうですか。ちゃんとご飯は置いてきているんだろうね?


「これから、行くところにあの子は邪魔ですから」


 ほう、醜い人は入れないというわけですか。なおさら何処に行くんだろう?


「その前に、こちらのレストランで腹ごしらえですわよ」


 すると、車があるレストランの前で止まった。

そして、運転手の方が急いで俺達の扉の前に来ると、扉を開けてくれた。

いや、なんだろう。こういう事は慣れていないから、どう反応したらいいのでしょう。

宝条さんは堂々としているから、それで良いのだろうか。いや無理。

俺は、ついつい運転手の人に「ありがとう」と一言かけて車から降りた。


「さっ、どうぞ。明奈。遠慮しないでください、私の親友ですから。後、羽根は出さないのですか?」


「あ、いや。人目のつく所では何を言われるか分からないからね。だからしまっているの」


 宝条さんが、納得したような表情をする。

いくらこの人でも、羽根の生えた人がどういう扱いを受けているかは分かっているようです。


「ならば、こちらのレストランの中では羽根を出してもらえます? どうせ貸し切りにさせていますから、誰も来ないですわよ」


 えっ? 貸し切り? って、ここって!!

ミシュランガイドの四つ星取ってるレストランじゃん!!

普通はせいぜい三つ星くらいなのに、その上のレストランにお昼から行くどころか貸し切り?!

スケールが違い過ぎて意識が。

俺は、情けなくも金魚の様に口をパクパクさせている。


「あらあら、こういう所にくるのは始めてかしら?」


「あぅ、あぅ。あっ! というか、服装は?!」


「あら? だから貸し切りにしたんですよ。普段なら正装するべきでしょうけど、それは周りの人達が身分の高い人達だからです。私達だけならその必要はないでしょ?」


 それ以外の理由もあるよ。店の品格ってやつだよ。

でも、それすらねじ曲げてしまうほどの財閥ということでしょうかね。

宝条さんは、平気な顔でスタスタと店へと入っていく。

怖いよ、この人の態度が怖いかも。後で何か言われないだろうか?

俺は逆に不安顔で宝条さんの後をついて行く。


 そして中に入ると、シェフの方にテーブルへと案内され本日のメニューを言われる。しかし、俺には何の料理かが想像できなかった。

ムニエルや、カルパッチョなら分かるがそれ以外となるともう分からなかった。

それよりも、こういう所って自分ではメニューを選べないんだね。凄い所だね。


「ふふ、少し緊張しています? 明奈」


「いや、だって。私なんかをこんな所に連れてきて良いの?」


「あら? お友達と一緒にランチをするのが一般的なのでしょう?」


 行為はね。行くところがお友達とランチする様な場所じゃないよ。

って、ここまで来てしまった以上はしょうが無い。








「ふふ、満足そうね。明奈。よかったわ気に入ってくれて」


「いや、そりゃあんなにおいしいの頂いたら誰だってね」


 昼食後、再び高級ベンツで移動している中、宝条さんは嬉しそうな顔をしている。

何だかんだこの人には、友達が居ないのかな?


「それより、この車の中も誰も居ませんし。これから行くところではむしろ、羽根を出しておいて頂きたいですわ」


 ん? それはどういう事でしょう?

何だか、嫌な予感がしてきましたよ。


「そんなに、緊張なさらなくても良いわよ」


 宝条さんが優しい笑顔を向けてくる。

でも、この人の本質って……いやいや、考えないようにしておこう。

私は大丈夫。友達って言ってくれているから。








 しばらくして車が停車すると、宝条さんと一緒に車から降りる。

もちろん、俺はまた運転手にお礼を言ってしまう。運転手さんが困った顔をしていたのがまた複雑。


「さっ、明奈。こちらですわ。あぁ、羽根は出したままですわよ」


 そう言われても、すっごいチラチラ見られているんだけど。

というか、気のせいかな周りの人達も高級そうなドレスに身を包み、前の大きなホールへと向かって行く。羽根を生えした人を連れて。

なんの集まりでしょうか?

そして、宝条さんの後に続いて俺もホールへと入っていく。


 ホールは貸し切りの様で何人かが集まっているが、どの人達も高級なドレスに身を包み、お金持ち同士の集会か何かを匂わせていた。


「さっ、明奈。こちらで着替えるわよ」


「ほぇ?」


 そう言われて、俺はある部屋へと連れて行かれる。

いったいここは何処なのかを聞く暇もないですね。


「これはこれは、綾子お嬢様ようこそいらっしゃいました。今日はご参加頂けるのですか?」


 部屋に入るなり、テーブルでせかせかと何かの準備をしていたメイド達が一斉にこちらを向き、宝条さんに挨拶をした。


「えぇ、最高の方が私の親友になっていただけたのです」


 んん? 参加? 何かのコンテストか何か?


「まぁ?! なんと!! 素晴らしいです!! 宝条家に相応しいご友人じゃないですか! 他の方々もきっと、驚きになりますよ」


  メイド服を来た人達が何やら興奮している。

でも、皆視線が俺の背中の羽根なんですよ。どういう事かな。


「あぁ、こちらは私の家のメイドと執事の方です」


 うん、ご令嬢だから居るでしょうね。確かに、奥にもロマンスグレーの執事さんが大量のお茶の用意をされています。手際がいいなぁ。


「そして、明奈は私と一緒に財閥のお遊戯大会。第三回『天使のお友達』コンテストに出て貰います」


「えぇぇぇぇ?!」


 あっ、まさか!! 宝条さんが俺を親友にしたがっていたのはこういう事ですか?

そりゃ、黒い羽根の子なんて居ないからね。プライドの高そうな宝条さんなら、よっぽどの天使の羽根持ちの子じゃなきゃ嫌だったのかな。

ヤバい、見せものというわけでは無いんだろうけれど。あんまり広めたくないんですけど。


「えっと、でも、あの……この黒い羽根の事は」


「あら、私達はお互いに秘密は漏らさないをモットーにしております。でなければ、あっという間に信用を失いますからね。私達の世界では信用が第一なのです」


 なんだかすごく納得した。そりゃ、そうでないとやっていけないでしょうね。

まぁ、おいしいランチをご馳走されたし。断れないねこれは。

何より宝条さんの目がキラキラ光っていて、コンテストに優勝すること間違い無しという目をしている。

というか、既にここに来るときに何人かの人に見られているじゃん。

俺は観念して宝条さんの言うとおりにすることにした。

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