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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第4章 ゴールデンウィーク
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連休1日目 ~ 意外な邂逅 ~

 まだ耳鳴りがする。2時間弱のコンサートも終わり俺達は出入り口から出る。

先頭は俺、だって後ろの2人が『スター・エンジェルズ』論を繰り広げているからだ。

篠原さんも西澤さんも白熱しちゃってます。

でも、コンサートの2時間弱程トイレに行けなかった俺としては漏れそうなんです。


「ごめん、2人共ちょっとトイレ行ってくるね」


 もしもし、聞いてますか? 返事がないですよ。

仕方がない。俺はちゃんと言ったからな。



 コンサート会場の脇にあるトイレから用を終えて、俺はようやく一息つく。


 「ふぅ……危なかった」


ギリギリでした。危うく、せい……なんでもない。これはピー音入るから止めておく。

すると。皆からは見えない様な位置、トイレと会場の隙間から誰かの声が聞こえてくる。


「おやおや、だいぶ女の子らしさが板に付いてきているね」


 俺は正体がバレたかと思い心臓が跳ね上がる。

そして、声のする方に振り向いた。すると、そこには『スター・エンジェルズ』のミカエルがいた。

そして、俺にこっちに来るように手招きをしている。俺は、周りにバレないように注意しながらミカエルの元に向かう。


「えっと……『スター・エンジェルズ』のミカエルさんが、私になんの用で?」


 俺は、おずおずと視線を向けるが何故がミカエルさんはにやにや顔で俺を見ていた。


「声で分かんないか? ほら、僕だよ」


 声で? いや、よく分からない。聞いたことあるようなないような。


「仕方がないな、君にはこうしないと分からないか」


 そう言って、ミカエルさんは懐から何かを取り出す。

それは、何処かで見たことのあるグルグル眼鏡であった。そして、ミカエルさんがそれを付けると喋り方が一変する。


「ジャ~ン! 僕だよ~君の愛しのミカエルさんだよ~!」


「なぁ! 俺をこんな風にしたミカエル~?!」


 あまりの事に大声が出てしまった。その瞬間、ミカエルが俺の口を塞いできた。


「ちょっとちょっと、声大きいよ」


「ムググ……」


 ちょっと、鼻まで一緒に押さえてるよ。苦しい苦しい。タップ、タップ。


「あぁ、ごめんごめん。慌てちゃった~」


 あ~苦しかった。それにしても何で『スター・エンジェルズ』のミカエルが本物のミカエルとはな。

派手なアイドル衣装に身を包み、髪はしっかりワックスで形を作ったアイドル風のロングヘアーになっている。こいつはセミロングだったはずだし、ウィッグかな?

今は、グルグル眼鏡をかけてしまっているので、見た目アホな状態になっているがな。


「それにしても、何であんたがこんな事を?」


 そう言うと、ミカエルはグルグル眼鏡を取って話し始める。


「いやね、人間に天使の羽根が生えた原因を作ったのは僕でしょ? それによる差別や偏見等は、僕が与えた負の遺産の様な物」


 ミカエルは再びグルグル眼鏡を付ける。


「だからね~自分のケツは自分で拭かなきゃならないなと思ってね~」


 そしてまたグルグル眼鏡を外す。


「その為に僕を中心に差別や偏見を無くすために作ったのが、この『スター・エンジェルズ』さ」


 またグルグル眼鏡を付ける。


「どうだい~すごいだろう。あ、因みに他のメンバーは皆普通の人間だからね~」


 お前、遊んでるだろう。グルグル眼鏡を付ける度に喋り方変えやがって。

どれどれ……グルグル眼鏡を取れば……


「そうそう、今日……」


 で、グルグル眼鏡付けたら。


「君にね~こうやって、会いに来たのは~」


 グルグル眼鏡外すと。


「僕の仲間である『スター・エンジェルズ』……」


 付ける

「その活動を~」

 外す

「ぜひ、見て貰い」

 付ける

「たくてね~」


「って、僕で遊ばないでくれるかな?!」


「え~面白いのに~」


 いや、ほんとに面白い。しかし、ミカエルは俺の手を振り払い付けたままにした。


「全くもう~このまま付けておくよ~」


 あらら、残念。そっちじゃない方がまともで良いのに。


「で、どうだった? 凄かったでしょ~ようやく差別や偏見が無くなりつつあるし良かったよ~でも、まだまだ偏見は無くならないし、もうちょっと頑張らないとね~」


 なるほどね、一応負い目には感じていたわけか。だから、この様な活動をね。さすがその当たりら天使らしいな。


「後は、君の方も順調らしくて良かったよ~僕の力を使ってコンサートに呼んで正解だったよ~」


「えっ? まさか、朋美にチケットが当たったのも。良い場所の席が空いていたのも?」


「そっ、全部僕がやっておいたよ~それにしても、女の子っぷりが板についてきたじゃないか~」


 あっ、しまった。普通に女の子っぽく喋っていた。


「そうかそうか、ようやく身も心も女の子に……って目が怖いよ~」


 まだそうするとは決めていない。というか決めかねているんだ。

余計な事を言うならこうだ。

そして俺は、ミカエルの頭を掴むと額を壁に押し付けて力を入れてグリグリする。


「いだだだだだだ!! 分かった分かった~ごめんごめん~」


 そう言いながら壁をタップしてきた。ギブアップですね。それを確認して、俺は手を離した。


「全くもう~そんなんじゃ良い天使になれないよ~?」


 ミカエルは額を押さえて言ってきた。また余計な事を言うのか?


「まぁ、あんたからすれば早くこの石を白くして立派な天使になれってことでしょうけどね」


 俺は、そう言いながら小さめの手持ちカバンからあの黒い石のネックレスを取り出す。


「あっ、完全に忘れていたよ~それ、まさか信じてずっと持っていたの?」


 おい、今なんていった? まさから嘘だったのか?


「えっ、なに? 全然白くならないから、おかしいな~とは思ったけど。まさか……」


「そう、あれは嘘だよ~あんな風に言っとけば、少しは性格を直そうと意識するかな~って思ってね~」


 ほぉほぉ、なるほどね。確かに意識しちゃいましたよ。見事にね。


「あ、あれ? また目が怖いよ~」


「うるさい。天使が嘘ついていいと思ってるの?」


「い、いや。君のためを思ってね」


 いや、なんか許せないんだよね。

俺は、再びミカエルの頭を掴み額を壁に押し当てる。


「ちょっと待って! またグリグリ?」


 いや、違う。今度はこうだ。

そして、俺はミカエルの額を壁に押し当てたまま、力を入れて横に擦るようにし走り出す。そう、マッチ棒に火を付ける時のように。


「あぢぃいだだだだだだ!!!」


 良い子の皆は真似しないようにね~


「あぁ、ハゲるかと思った。作り物の体を入れ物にしているとはいえさ~痛みは普通にあるし血も出るようにしているんだから~」


 ミカエルはそう言いながら、額をさすっている。

そうか、今初めて聞いたよ。生身の体は何処だよ。

俺が不思議そうな顔をしていると、突然ミカエルが首を傾げてきた。


「あれ? 僕はもう思念体のみになっているって言ってなかったっけ?」


「初耳です」


 俺がそう言うも、ミカエルはあっけらかんとしてはぐらかしてきた。


「まぁ、その話はまた今度~あっ、その石は本当は君の力を使う為の魔力の入れ物だからね~肌身離さず持っておきなよ~」


 なるほどね、無いと困る物だったのか。

一応、あれから肌身離さず持っているからな。


「後は、君が完璧な女の子になるのを願うだけだね~……ってあれ?」


 俺は、その言葉に顔を赤くして俯く。


「あ、あれ? もしかして男のプライドがまだ残ってる?」


「……っ。そうだよ!!」


 腹立たしいな。どうしてもそれが残っているんだよ。このギャップの原因はそれなんだよ。


「ふふふ、それなら簡単な事だね~」


「何? どうしたら良いの?」


「恋をすればいいのさ~」


「えっ、コイってあの池とかにいる、でっかい魚?」


「いや、それは鯉だよ。わざとかな? 脳が拒否しているのかな~」


 あぁ……恋ね、恋の方か。恋。

ってえぇぇぇ!! 恋だとぉぉお?!


「ちょっと待って、それってどっちと?」


 当たり前の疑問です。だって、俺は中身男だぞ。あっ、そうかそれを捨てて中身も女になるには……


「何を言っているんだい? 当然、男性とに決まってるじゃないか~」


 やっぱりぃぃいいい!!


「ちょっと待って、男だった時も恋愛なんかしたこと無いし。しかも、人を好きになった事も無いんだから~」


 俺は、ミカエルに文句を言った。でなければこいつの力で無理やりカップリングさせられる。

天使だけに、愛のキューピットになるだろうなこいつは。


「君の性格の悪さはそこかな~? 人を好きになった事が無い君には、丁度良いかもね~」


 そのにやけ顔……絶対に俺にとって良からぬ事を考えているぞ。

止めてくれと言っても、大天使なんだからどうしようも無いのか?


「大天使である僕に散々な態度。そして、今日も色々してくれたね~こうなったら意地でも、君をまともな人間に。そして、ステキな女性にしてあげよう~それも、君の意思でね。僕はしっかりサポートさせて貰うよ~」


 あ、あれ? 怒ってる?

笑顔なんだけど、後ろから怒りのオーラが見えるような……

あぁ、俺はどうなってしまうのだろう。

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