表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスト・エンジェル  作者: yukke
第4章 ゴールデンウィーク
31/130

連休1日目 ~ 天使のアイドル ~

 食事を終えた俺達は、店から出てコンサート会場に向かう。


「結構美味しかったね、口コミ通りでよかった~1度行ってみたかったんだ」


西澤さんが満足そうな顔で言ってきた。


「うん、美味しかったね。こうなると謎のメニューの方が気になるね」


「ふふ、また来よっか?」


 地雷踏んじゃったかな? 俺の言葉に西澤さんが目をキラキラさせている。





 俺達は、そのまま他愛ない会話を続けコンサート会場に着いた。

そして、想像以上に人でごった返えししていることに俺は驚いた。


「うっわ、凄い人!!」


 さすが、天下の『スター・エンジェルズ』というわけか。

そして、もう一つ気になることが。


「ねぇ、朋美。皆天使の羽根が付いてるけど?」


「あっ、それ殆どの人は作り物だよ。ここでは皆天使の羽根を付けて、差別も何も無く楽しめるんだよ」


 なるほど、天使の羽根の偏見を無くそうと活動している、アイドルらしい考えだよな。


「あっ。そ、そう言えば明奈ちゃんはどうする? 羽根皆と違うし、大変なことになるよね」


 そうだな、1人だけ黒いと目立ちまくるし。偏見無くそうとしているのに、新たな偏見が生まれそうだな。


「えっと、じゃぁ私も作り物の羽根付けとくよ」


「分かった。それなら、受け付けの近くに貸し出し所があるから」


 そう言って、西澤さんが俺の手を引っ張る。うん、ちょっとひっぱり過ぎだよ。

すると、混んでるせいもあり途中で人にぶつかってしまった。


「あっ、すいません!」


 俺は、慌てて謝った。すると、相手はなんかおずおずしている。しかも帽子を目深にかぶり、マスクもしてサングラスもしている。怪しさMAXだぞ。


「あ、いえ。こちらこそよそ見してました。でわ」


 そう言ってそそくさと去ろうとしている。だが、この声聞き覚えがあるぞ。すると、その人物をじっと見ていた西澤さんが声を上げる。


「今の声、もしかして理恵ちゃん?」


 すると、その人物はあからさに驚いており焦り始めた。


「な、何ですか? 人違いですよ。私は篠原じゃないですよ」


「自分から苗字名乗ってどうするの? 理恵」


「あっ……」


 あまりにもお粗末過ぎたので即突っ込んであげました。挙動不審過ぎでもあるしね。


「やっぱり!! 理恵ちゃん?! どうしたのこんな所で~」


 篠原さんは、観念して変装を解いた。というか、その変装は入場出来ないと思うよ。警備員の人に、両脇抱えられて引きずられていくだけだよ。


「あ~もう、2人がいるから警戒していたのに~何よこの人混み~」


 篠原さんが、頭を掻きむしりなから文句を言っている。しょうがないだろう、今1番売れているアイドルなんだし。


「でも、なんで理恵ちゃんが? ファンじゃなかったんじゃ」


 西澤さんが当然の疑問を口にした。俺も思ったよ、あと部活どうしたんだろう。


「いや、あの時は恥ずかしくて嘘ついちゃって。実は入学式の時に朋美に突っかかってから、『天使の羽根症候群』の事調べてたの。そしたら、私の両親と姉貴の偏見が酷すぎただけで、なんでも無いことがわかってさ」


 篠原さんは、恥ずかしそうに話しを続ける。


「それで『スター・エンジェルズ』の事もその時に知ってさ、あまりにも綺麗で格好良くて、その日の内にファンになりました」


 はい、以上が被告人の証言ですね。いや、違う。篠原さんがそんな風な感じで白状してきたもんだから。しかし、入学式で西澤さんにつっかかった手前、言いづらかったんだろうね。

でも、こうしてバレた以上どうなるかは分かるでしょう。

ほら、西澤さんの目がキラキラしている。


「もう、入学式でのことなんて気にしなくても良いのに。言ってよ~理恵ちゃん~私嬉しいんだから。そうだ! 今度CD貸してあげるね」


「あっ、ありがとう。朋美」


 良かったね、第2の親友が出来ましたね。


「明奈ちゃんにも貸して、って妹さんが持ってるんだっけ? 明奈ちゃんの妹さんとも話してみたいな~」


 あぁ、西澤さんのテンションが最高潮ですよ。


「あのさ、朋美ってこんな性格だっけ?」


 篠原さんが耳打ちしてくる。気持ちは分かるよ、俺も同じ様な感じで西澤さんに連れ回されてるので、まるで犬の様にね。


「何してるの~2人とも羽根付けて行くよ~」


「やれやれ、しょうがないな。行こっか明奈」


 そして、俺達は西澤さんに続いてコンサート会場の入り口に向かう。




「ふふ、2人とも白い羽根似合ってるね」


 西澤さんがにこやかな笑顔で俺達の背中を見ている。

ちゃんと、白い羽根つけましたよ。皆そうだからね。


「しっかし、付けてみると分かるけど。結構邪魔になるよねこれ」


 篠原さんは、背中の羽根を見ながら言ってくる。そりゃ、ずっと付いていたら邪魔だろうな。俺は好きな様に出し入れできるから、その辺りの苦労までは分からなかった。


「確かに、最初は邪魔だったけど今はちょっとずつ慣れてきたかな。あっ、あそこ。1番見やすい場所が空いてる!」


 そう言って西澤さんが走り出す。俺達も走って追いかける。


「しっかし、アリーナ席なんて良い場所よく当たったわね。私は、親戚が行けなくなったからって貰ったよ。まぁ、渡された時号泣されてよっぽどの価値なのは分かったけどさ」


 その光景が目に浮かぶ。俺が、朝出かけるときに見た望の号泣姿と一緒だろうな。望も内心は行きたかったはずだからな。夜中俺のかばんに忍び込もうとするくらいに。


「運がよかったね~こんな場所滅多に空いてないからさ~」


 確かに、ステージを見るにはバッチリだな。近すぎず遠すぎず、めちゃくちゃ見やすい位置だった。

こんな所、普通は空かないぞ。何かしらの力を……いや、気のせいだな。


 それにしても、周りは女性ばっか。男性アイドルグループだししょうがないけどね。女で良かった……ったなんて思ってない思ってないぞ。

俺は、頭を横に振り思考をかき消した。




 そして、しばらくして。

開演時間がやって来た。それと同時にライトが調整され、ステージが目立つ様に照らされる。

その後、皆お待ちかねの人達が登場する。


「皆!! ようこそ!! 今日は俺達のライブに来てくれてありがとう~!!」


「きゃぁぁぁああああ!!!!」


 『スター・エンジェルズ』の登場と共に、観客が沸いた。

というか、耳が!! 鼓膜破れる! 

俺は咄嗟に両手で耳を塞ぐ。

しかし、それでもこの歓声を防ぐことは出来なかった。だって地響き起こしてるもん。何このエネルギー。


「ちょっ、凄い歓声だね。り……」


「きゃぁぁあ!! ウリエル様~!」


 篠原さ~~ん!! マジですか?! あなたマジですか?

今日は、2人の意外な素顔が目白押しですよ。

なる程あなたはウリエル押しか。西澤さんは……


「ラファエル様ぁぁああ!! 今日も素敵ぃぃいいい!!」


 ダメだ、もう別人だ。目が熱心な信徒になっています。そして、君はラファエル押しか。


 別に俺は『スター・エンジェルズ』を嫌ってるわけではないよ。ただ、ここまでとは思わなかったから、ちょっと驚いています。


 挨拶の時も度々歓声が上がり、いよいよ曲がスタートすると周りの熱気が更に膨れ上がり、まるで真夏の様な蒸し暑さに包まれる。

ヤバい、これで2時間近くかよ。そりゃ真夏のコンサートで、熱中症の人が大量に出るのも頷ける。


 そうか、俺もこの中に混じれば良いんだろうね。今度、望にCDでも借りようかな? そしたら、こんなコンサートでも皆に混じってしまえば熱気も歓声も気にならないだろう

でも、今は耐えるしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ