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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第3章 暴かれる正体
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再び登場

 その日の夜、俺は自室で絶賛唸り中である。


「う~ん、どうしよう。自然にとは言っても、あの2人。特に鷹西さんのカンの良さは異常だって~」


 俺は、羽根をパタパタさせて部屋をぐるぐる回る。

だから、チーズになるっての。落ち着けよ俺


「まさか、好きな人は姿が変われどすぐ気づくって言うけど……いや、待て待て。今は俺女なんだよ」


 いくらなんでも、性別変わってるのに気づく訳ないだろう、でもあのカンの良さは。

ブツブツ言いながら、そんな事を考えている。

しかし、いくら悩んでも解決策はなかった。


「はぁ、しょうがない。ちょっと気分転換にでも飛ぶ練習をしよ」


 そう、俺は春休みからちょっとずつ羽根で飛ぶ練習をしていたのだ。この羽根は、どうやら飛ぶ事が出来ると分かったからだ。

そりゃ最初はうまくバランスがとれずに、何度床と壁に激突したことか。

でも、今は違う。

俺は、羽根を少し大きく広げゆっくり羽ばたく。


「よっ……と。よし、ホバリングは完璧」


 両手でバランスを取りながら、俺は天井に頭をぶつけないように床からフワリと浮く。


「これなら、もう飛べるかな?」


 俺は、窓の方を向きゆっくり窓枠に向かう。

今日は雲1つ無い星空だ、飛んだらさぞ気持ち良いだろうな。


「うん、よしやってみよう」


 俺は意を決して窓を開け、ベランダに出る。

そして、大きく羽根を広げる。人が羽根で飛ぶには2倍の大きさがいる。

さて、うまくいくかな。

羽ばたきも大きくする。すると、思い切り肩甲骨の辺りが引っ張られる感じがしてきた。


「ん、良いぞ良いぞ」


 俺は、徐々に浮いていく。

というか、結構力がいる様で大変である。

すると、家の屋根までいくと急に風に煽られ大きく吹き飛ばされる様に、空へと舞い上がった。


「うっわ。わわ、わぁあああ!!」


 ヤバいヤバい、バランスバランス。

俺は、必死に羽根を羽ばたかせながら何とか体勢を立て直そうとするも、既に二転三転してしまい、どっちが地面でどっちが空か分からなってしまった。


「あっ、あわわわ~!!」


 情けない悲鳴と共に、俺は近くの民家の木に不時着もとい落下した。

そううまくはいかないよねそりゃ。




「あ~死ぬかと思った」


 俺は、何とか木から降り。裸足で家の前に来ると羽根で羽ばたき、浮上してベランダに上がり部屋に戻った。その間、誰にも見られてない様で助かった。


「明奈~何やってんの?」


 何と、部屋には母さんが腕を組み仁王立ちし、望が覗き込むようにしていた。


「えっ? あ、いや。せっかく羽根あるんだし飛ぶ練習」


「そういう危ない事は1人でやらないで!! 何かあったらどうするの!! 明奈の悲鳴聞こえたし何事かと思ったでしょ!!」


 母さんが真剣に怒ってくる。母さんがこんなに怒るのは珍しい、何時ぶりだろう。

あっ、俺が以前車と衝突仕掛けたときか。

あれは俺が信号無視したのがいけなかった。


「ちょっと、聞いてる!!」


「あっ、はい! 聞いてます」


 俺は、いつの間にか正座させられていた。

足痺れるし、嫌いだよこれは。

その後、母さんの説教は小1時間にも及んだ。


「とにかく、今度から飛ぶ練習するときは家族の見てる前でして。いい?」


「は、はい」


 そんなに心配されたらそうせざるを得ないな。

何より1人では方向が分からなくなるよ。誰か見てくれた方がいいよな。

あ、それよりこれヤバい。


「じゃ、母さんは部屋に戻るね。おやすみ明奈」


「あっ、うん。おやすみ、母さん」


「あれ? 明奈、足痺れてるの?」


 俺の様子に気づいた望が近づいてくる。

そう、完全に足が痺れている。母さんや望には気づかれないようにと思って頑張ったのに、くそ。


「ふふ~ん。じゃぁ、罰として。こうだ~」


 望が容赦なく、俺の痺れた足をツンツン蹴ってくる。


「やっ、やめ。止めて止めて」


「止めないよ~だ」


「ひいぃぃ。ゆ、許してぇ」




 そして、気がつきゃ望が布団にいる。なぜ。

あれからじゃれ合ってたら、いつの間にか一緒におねんねしている。

しかし、俺も今日は疲れていたので。追い出す気にもなれずにそのまま眠りについた。






「やぁやぁ、下手っぴな飛び方だったね~」


 この声は、そしてこの白い空間は。

俺は、声に反応し目を開けるといつか見た白い空間が広がっている。

ということは、この声はミカエルの野郎か。

あいつには次会ったら色々鬱憤(うっぷん)を言ってやろうと思っていたんだ。

そして、俺は顔を上げ前を向いた。

するとそこにはこの前は居なかった、正確には見えなかったのだろう人物が立っていた。

しかし、俺はその人物を見て呆然としてしまった。

なぜなら、そいつの容姿がおかしいのだ。


 髪はセミロングでボサボサ、ぐるぐる眼鏡をかけており、ヨレヨレのカッターシャツ、そしてハーフパンツ、靴など便所スリッパかよ。

羽根だけは、大きく銀色に輝き神々しかったが。

容姿とのギャップに唖然としていた。


「お? もしかして、僕の姿見えてるのかな? 良かった良かった~どうだい僕の姿は。神々し過ぎて言葉を失ってる様だね~」


「余りのギャップに言葉を失っております」


「え~?! ギャップって。あぁ、そうか。まだ君は完全ではないんだね、だから僕の姿はみすぼらしく見えてるのか~」


 なるほど、つまり俺の性格はまだ問題ありかよ。


「その石が白くなれば、晴れて僕の神々しい姿を拝めるということだ。頑張りたまえ」


 腕を組み、見事な上から目線だな。まぁ、大天使なんだからそういう態度なのか。


「まぁ、俺は別にあんたの神々しい姿を拝みたくはないんだけどね」


 俺は、目を細め奴を睨んだ。


「えぇ~?! 酷いな~!!」


「それはそうと今日は何の用?」


 正直、俺はこいつとはあまり関わりたくない。

用件があるなら、とっとと終わらせて欲しい。


「そうそう、ようやく力の事が分かってきたみたいだしね~チュートリアル終了って事で、君に頼みたいことがあるんだよ~」


「え~断ったら?」


「君のその力は没収します~ただの感度の良い、『AWS』になるよね~」


 選択の余地なし。ほんとに最低だこいつは。


「と言うか、いきなり別称使わないでよ」


「僕は、こっちの方が格好いいし好きだけどな~」


 軽い、軽すぎる。

その別称は普通の人とのわだかまりを作る原因となっているから、今は使う人なんかほぼいない。

何故なら、ふざけたやつらが『AWS』の事をエウィズと呼びだし、その呼び方からエイズを連想させたからだ。

そして、この呼び方は更なる波紋を呼んだ。

それは、エイズと同じなのでは無いのかということだ。

この噂は瞬く間に全国に広がり、天使の羽根の人達の偏見や差別の元になったのだ。


 政府や様々なボランティアの人達の呼びかけにより、これは沈静化したが、1部の人達は未だ納得出来ていない。


「ほんと、人間って何でこうも酷いことが出来るのかな~」


「だから、心を読まないで。で、頼み事って何?」


 俺は、うんざりしながらも頼み事が何なのかを聞き直した。


「そうそう、君にある者を見えるようにしといたよ~頼みたいのはそいつの退治だよ~」


「ある者?」


「悪魔達だよ」


「はいぃぃぃぃ?!」


 あ、悪魔だと。悪魔って、あれだよな。熊を見つけたときに言う言葉じゃないよな。


「“あ、クマ”だって? 面白いこと考えるね~」


「先手を打てないでくれる?」


 不完全燃焼してしまったよ。こいつとは絶対相容れない間違いない。


「悪魔退治って言っても、ガチンコバトルするわけではないから安心しなよ」


「そうなの?」


「悪魔にも種類はあるからね、魔界に居るような大悪魔やソロモンの連中はとんでもない力を持ってるけど、人間界に居るのは人に悪いことを囁くだけの弱っちい奴らだけだしね~」


 うん、そんなソロモンの奴らが出てこられても俺は逃げるからな。


「あっはは、そうそう簡単に人間界に召喚させられる奴らじゃ無いから~君は、悪いことをしようとしてる人達の所にいる悪魔達を、追っ払ってくれたら良いから」


 それくらいなら、出来そうかな。

と言うか、どちらにせよ断れなかった。

ぐるぐる眼鏡のせいで、こいつの表情が読めないのが憎たらしいな。


「よし、じゃぁ頑張ってきてくれ~」


 そう言うと、ミカエルはパチンと指を鳴らす。

うん、嫌な予感がします。

はい、足元消えました。


「やっぱりかぁぁああ!!」


「いや~この方が良い目覚めになるかなと思って~」


「最悪の寝起きになるから止めろ~!!」


 しかし、ミカエルは両耳を手で塞いでいる。

あいつはいつかぶん殴らないと。

人をこけにして、遊びやがって。

そして、段々視界が白くなり意識が遠のいていく。

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