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ラスト・エンジェル  作者: yukke
第3章 暴かれる正体
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小さなミス

 翌日の午前中の授業も滞りなく終わった。

俺は、元々高校でも成績は平均よりも上だったから、ブランクはあっても何とかなっている。


「朋美、明奈。学食いくよ~」


「あっ、は、はい。理恵ちゃん待ってください」


「朋美、急ぐとこけるよ」


 俺は、西澤さんに注意した。何か見ていて危なっかしい

今日は、学食でお昼と決めている。たまには母さんも休んでもらわないと、毎日はキツいだろうしね。


 学食に着くと、俺達は空いてる席を探した。

昼時は、ここの学食は混むから早めに来ないと席が取れなかったりするのだ。

今日は、空いてる席があったから良かった。

そして、券売機の方に向かう。


「2人とも何する? 私は天津飯かな~」


「えっと。わ、私は……親子丼かな」


 2人とも、各々今日の気分で決めていく。

だが、俺はここに来たら常にこれと決めている。

そして俺は迷わずラーメンを選んだ。

ここのラーメンは麺良し、スープ良し。学食にしてはレベルが高いのだ。チャーシューもでかいしな。

だが、残念な事が1つある。


「明奈、迷わず選んだね~でも、ここのラーメンは上手いって評判だしね、次は私もそれにしようかな~」


篠原さんが、厨房で作られている風景をじっと見ながら言ってくる。


「ぜひ、そうするべきだね」


 ここのラーメンは、卒業するまでにぜひ1度食べるべきだろう。

そうこうしてるうちに、それぞれの料理が出されていく。

俺達はそれを受け取り、さっきの席へと戻った。


「でもねぇ、ここのラーメンってあるべき物が無いのが残念かな~」


「えっ、ある物って何? 明奈ちゃん」


 西澤さんが不思議そうに見てくる。

分からないか、これだよ。

そう言って、俺は手提げ袋からタッパーに入れたメンマを取り出した。


「ちょっ、明奈。何を入れているのかと思ったらそれ~??」


「悪い? メンマが無ければラーメンとは言えません」


「トウモロコシ入ってるラーメンは、ラーメンじゃ無いって言い方みたいだね」


 篠原さんが、苦笑いしてくる。


「あれは、邪道です。ノリも邪道です」


「いや、関東方面の人達を敵に回す言い方は止めといた方が良いよ」


 それを見ていた西澤さんがクスクスと笑っている。

やっぱり、笑ってれば可愛いと思うけどね。




 そして昼休み後、次の授業は体育の為皆更衣室に移動していく。


「しっかし、明奈のメンマ好きにはびっくりしたよ」


「む~悪いですか?」


「いや、量が尋常じゃないよ。タッパーのメンマ全部乗せてたじゃん、あれで1回分とは恐れ入るわ~」


 何か、俺がよっぽど変みたいだろう。

良いじゃ無いか。別に体に悪いわけではないのに。



 更衣室で着替え終わり、全員グランドに並ぶ。

更衣室は危なかった、何も考えずに普通に入ったね。

全員服脱ぎ出して、ようやく気づく。

自分の体は見慣れてきたが、他の女子の裸は見慣れていないことに。

顔真っ赤になってるの隠すの必死だったわ。


 後、西澤さんは着替えに手間取っていた。

背中に羽根を通す穴があるとはいえ、着るときが大変そうだった。

そして、そんなことを考えていると。


「よ~し!! 全員揃ったか?!」


 そんな近くで大声で叫ばなくても聞こえるよ。

無駄に熱血だな。空回りしてるの気づかないのかな。


「俺が、体育の担当をする藤本だ! よろしくな!」


 皆、どう対応したら良いのか困ってるよ。


「まぁ、最初の授業は皆怠いだろうけど、体力測定だ!」


 皆が「え~~」って顔をしている。声も出ていたが、先生の大声でかき消された。


「皆! 面倒くさいことでも、全力でやればちゃんと身になるからな!」


 とりあえず、授業なので皆渋々測定をし始めた。

篠原さんは、見た目通りにどれもこれも平均以上の数値を出している。

多分、運動部に入りそうだな。

うん、俺は運動は平均だしな。女の子になってるし、多少下がるくらいかな。

そして、俺は次々やっていくが全て女子の平均以下だった。


「あははっ、朋美も明奈も運動全然何だね~」


「うぅっ。は、羽根が邪魔で」


 それは、理由になってないです西澤さん。


「わ、私も。羽根が……」


「明奈には生えてないでしょ」


 篠原さんはそう言いながら、俺のほっぺを両方共つねってきた。


「いふぁい、いふぁい」


 咄嗟に、嘘じゃ無いもんって言いそうになる自分を抑えて、篠原さんの手をタップした。ギブですギブ。


「ほら、さっさと最後ハンドボール投げやってきな」


「は~い」


 西澤さんと同時に返事をする。

ヒリヒリするほっぺをさすりながらハンドボールの場所に向かい、準備をする。

せめてこれだけでも平均を出したい。

そして、ボールを持つと気合いを入れ思い切り投げる。


ポトッ


 あれ、ボールが目の前にあるんだけど。

いやいや、気のせい。もう一回あるんだ。

今度こそ、本気で。全力で投げる。


ポトッ


 俺は無言でボールを睨み、そして。


「もっと、頑張れよ~!! ボール!!」


 誰かの熱血がうつってしまいました。

そして、体育教師の藤本が後ろから肩を叩くと。


「ボールかって休みたかったんだ」


「いつもの熱血はどこにいったの?」


「んっ?」


 しまった、ついうっかりポロッと。これだから油断すると俺はダメなんだ。

俺は、慌てて口を塞いだ。

でも、これは許容範囲内だ問題ない。



 その後、体力測定は無事終わった。

結果は聞くな、悲惨なものだよ。女子になったとは言え、ここまでか弱い女子になるとはな。

何度となく羽根を出したい気分になったよ。

そして、更衣室で着替えてる最中に篠原さんが励ましてくる。


「まぁ、明奈も朋美もインドア派って感じだからな。そう、お見込むな~明奈」


 あれ、落ち込んでるように見えましたか。


「わ、私は。その、中学の頃も平均以下だったし良いけれど。明奈ちゃんは、元々運動神経は悪くないのに何で? って顔だよね?」


  西澤さんも案外鋭かった。力まないようにしないとだけど、それと気を抜くのとは全然違うよな。気を付けねば。


「運動出来ないくらいで、な~に悩んでんだ~明奈。あ、それとも胸の方の悩みか?」


「わひゃい?!」


 すると、突然篠原さんが胸を揉んでくる。女子っていつもこうなのか。いや、こいつらが特殊なだけだ。


「ちょっ、何するの……理恵~」


「ふふ、胸の事なら気にしないで良いんじゃない~? 大きいと大変だよ~朋美みたいに~」


「ちょっ、理恵ちゃん。や、やめてよ」


 実は西澤さんは着やせするらしく、先程の着替えの時も目を疑った。

その大きさに。恐らく、Eはあるだろうその胸は羽根の事も合わさり着替え等には人一倍時間がかかっている。


「は、羽根も生えてきたし。こんなのは言い方悪いけれど……その、邪魔なだけだよ」


「ほぉ……それは、私に対する宣戦布告と受けとっても良いよね?」


「え、り……理恵ちゃん?」


「うるさ~い!! 覚悟~!」


 そう言って、今度は西澤さんの胸を鷲掴みにし揉み始める。


「わきぁああ?! ちょっと、り、理恵ちゃん~」


「ぬぬぬ、何だこのボリュームは~私にちょっと分けろ~!」


 やれやれ、女子って想像しいな。あと、直視しないようにしないとな。でないと、目の前で繰り広げられてる光景は男子にとっては刺激的だろうからな。

でも、落ち着け俺は今は女の子だ、今は女の子女の子。

俺は、そうやって精神統一しなんとか女子と一緒の着替えを乗り切った。





「あ、ごめん。ちょっと戻る前にトイレ行ってくる。我慢出来なくて」


 俺は、そう言って2人と別れ職員室前のトイレに向かう。

着いてこようとはしてたけど、何とか断った。

女子って何でトイレまで一緒に行こうとするんだろう。

女子トイレを他の人と一緒になんて、未だに落ちかない。

たまには1人で落ち着いてしたいもんだ。


 そしてトイレを済まし、職員室の前を通り過ぎる時に話声が聞こえてきた。


「う~ん、やっぱ似すぎと言えば似すぎだけど……」


 この声は藤本か。何だ、誰のことだ。


「でしょ? 兄妹という範囲のレベルかしら?」


「おいおい、んなことはどうでも良いだろう~」


 ちょっと、待てこの話はもしかして。

そう思い、俺はゆっくりと職員室のドアの横に貼り付き聞き耳を立てる。


「お前らは高校の頃から何も変わらんな~いつもそうやって3人で、考え事してたな」


 3人がここに通っていた頃の元担任谷垣(たにがき)先生だ。

おかしいな、あの頃よりもお腹が出っ張ってるぞ。妊娠されたのかな。

ボケてる場合じゃない、俺にとっても元担任だ。


「で、いったい誰が似てるって?」


「橋田さんですよ。晃の妹らしいですけど、性格が似すぎ何ですよ晃と」

 

 鷹西さん、ほんと鋭い。そしてやっぱり疑っているようだ。


「おいおい、戸籍もちゃんと出されているぞ。疑ってやるな」


「それ? 谷垣先生は確認してますか?」


「いんや、学年主任だからってそこまで確認できん。考え過ぎだぞ鷹西」


 さすが、年の功からか3人共そこで黙ってしまいこの話は終わってしまった。

俺は、気づかれないようにゆっくりとその場を離れ、教室へ向かう。

その時、予鈴が鳴り響き焦って駆け足で教室へ戻った。

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