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ラスト・エンジェル  作者: yukke
プロローグ
2/130

『天使の羽根症候群』

 リビングは今、少し気まずいムードが流れていた。

理由は簡単。さっき、俺がオヤジと少し小競り合いをしたからだ。

テレビの音でごまかされているし、妹の望が両親に向かってテレビの中身についての会話を振ってくれているので、正直助かってはいるが……

気を使わせてしまっているな。今度何か奢ってやろう。


「そういえば、守。なんか小包来てたわよ?」


そう言って、母さんは先ほどオヤジが座っていたソファーの前にあるローテーブルの上を指さした。


「おぉ!! ついに届いたか!! 氏が作ってくれた、我が嫁特性フィギュアが!」


「誰だよ氏って。んで嫁って……バカじゃね~か」


 俺はついつい悪態をついてしまった。


「ふふ~んだ、ちゃんと俺もフィギュア作ったり、イラスト書いたりして稼いでるんだよ~」


 こんな好戦的なオタクも初めてみる。イライラさせてくれるな。

確かにこんな奴でも、フィギュアの作成はプロ並みで評価もいいらしく。イラストもプロ顔負けのものを書く。

コミケやいろんな場所でそれを披露してたら、製作会社の目にも止まるのは当然だ。

このブタには様々な仕事が舞い込んでいた。ついでに、このブタは大学は行っていない。高卒だ。


「だから……守お兄ちゃん、言い過ぎだって」


 また望からフォローが入った。なんだか情けなくなってくるな。

望は学校でも人望があり、よく男子から告白されたりもするそうだ。しかし、未だ望は彼氏を作らないでいた。なぜか断り続けている。



『続いてのニュースです、また一人天使の羽を持つ者が増えました』


「あらぁ、また〈天使の羽根症候群〉の患者が出たの?」


 母さんがお決まりの言葉を吐く。ゲームのチュートリアルっぽいしスキップしたくなってきたな


 ちなみにテレビは今、時事ニュースをやっていた。『天使の羽根症候群』は、一年程前急に現れた症状の事をさしている。

それは、天使の羽根が生えること。それだけだ。

別に身体の障害も精神の障害もでることはなく、感染もしない。ただ、天使の羽根が生えているだけ。


 それでも、当初は偏見や差別は酷かった。所詮人は自分と違う特徴を持つ者を、毛嫌いする傾向がある。しかし、NPO法人が羽根の生えた人達と共に社会に訴え、政府にも訴え活発な活動をしたおかげで今や羽根の生えてる人への差別は減り、一つのファッションとして認められるようになってきた。

それも、ここ数か月前の事。一部の人達は未だに、それを良しとしない者もいた。

まぁ、俺には関係のない事である。


「ごちそうさん。部屋行くわ」


 俺はそう言って、とっとと3階の望の部屋の反対側突き当たりにある自室に向かった。

俺の部屋は長男だからということで、バルコニーのある部屋を貰った。これは長男特権だ。ただ、今はこの事が俺にとって負い目を感じる原因ともなっている。

そして俺は部屋に入り、ベッドに寝転がる。


「ふぅ、どいつもこいつも好き勝手言いやがって。クソ!!」


 俺はそう言いながら枕に拳を突き立てた。柔らかいから正直手応えがない。

かといって石ぶん殴るわけにもいかん、これでいいか


「くそ……明日は夜勤だし。こんな毎日の繰り返しで嫌になる。一体、俺は何のために生きているんだよ」


 イライラしてたら、体が熱くなってきた。

しょうがない、今日は早めに風呂入って寝るとしよう




 その後、俺は風呂から上がると更にだるさも追加されてしまい、さすがにおかしいと体温を測るも平熱だ。

しかし、大事をとって早めに寝ることにしたのだが、寝るときに背中の肩甲骨まで痛みだす。


「いった。何だこれ、だるさでか? いや熱はね~んだ。余計わからん。あ~くそ……とっとと寝るか」


 寝るとき、部屋に望が来た。心配して様子を見に来たらしい。


「大丈夫? アキにい」


 不安そうな顔で俺の様子を伺っている。


「あぁ、大丈夫だ。風邪だとやばいし部屋戻りな」


 これ以上いらぬ心配をかけらたくはないからな。俺は、しっしっとこれ以上部屋には入るなという具合に、手であっちいけという仕草をした。


「うん、わかった。何かあったら言ってね」


「わかった。おやすみ」


「おやすみ」


 終始心配そうにしてる妹とそんなやりとりをし、俺は布団にもぐりこんだ。

寝れば治る。そう考えていた。





「くっそ、寝苦しい……」


 あまりの寝苦しさに俺は深夜に目を覚ました。

寝汗がひどい、しかも肩甲骨の痛みもひどくなっている。


「なんだ、これ。明日、病院行くべきか……」


 俺はふらふらと部屋を出てトイレに向かった。

そして、部屋に戻る時望の部屋から顔がひょっこりと出ていた。幽霊かと思ってびっくりしたがな。


「アキにい大丈夫?」


「悪い、起こしたか。大丈夫だから心配するな」


 俺は極力心配かけないようにふるまったものの、かなりしんどくてふらふらしているのはバレバレだった。


「全然、大丈夫そうじゃないよ。明日、病院行ったら?」


「わかってる、そのつもりだ……」


 そう言いながら俺は部屋に戻った。

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