表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/18

四口目

頭が痛い。

未来と明日はこんなにも真っ暗だったなんて。


私が呟くと、友人の紡木つむぎは首を傾げる。


「なーんか急にラブコメの主人公じみてきたネー」


「…展開急すぎ。 

ラブコメにしても主人公が私なのは勘弁してほしいわ。

もう大変な騒ぎよ?

主に八千代先輩の功績で」


そう、あれから八千代先輩が連日学校に来ているのだ。

そして夕方になると七次郎と共にクラスにやってきては、私の前で言い争いをする。

……何故私の前で?


「王道ダネ。

ショタにプレイボーイに美男子に幼なじみ!

あとはツンデレがいれば完璧ネ」


なにが完璧になるんだ。

紡木の妄想は、たまに迷路すぎて分からない。


ちなみに紡木は本物の委員長。

私はボランティアで明日発表する文化祭出し物企画案の集計に付き合っていた。

もう外は真っ暗だ。

職員室へ結果を提出しに行く紡木。

一人教室に残され、さすがに暇になってきた。


「あ、くきら。

まだ残ってたのか」


ドアを開けたのは七次郎くん。

ゲっと思ったが、まぁ今は誰もいないし。


「文化祭の準備よ。

つか七次郎くんこそ何してたの?」


「今日はくきらと喋ってないから、いたらいいなーって下駄箱で張ってたんだけどいないんだもん。

帰ろうとしたら窓からくきらが見えたからさ、僕すげー嬉しくて」


ストーカーだそれは。

親切に教えてあげたかったけど、呆れてものも言えなかった。


「よくまぁすらすらと言えるわね…」


つい口から出た皮肉。

七次郎くんはすぐに反応した。


「なにそれ、どーいう意味」


きらきらした瞳から光が引いていく。

悪い気がしたけど、でもこれは本音。


「私、貴方のことほんの何週間前まで知らなかったのよ。

だから急に来て好きだ好きだとか叫ばれて寄ってきても嬉しくないし、簡単に応える程自分を安く見てないの」


ラブコメじゃああるまいし。


「だから好きだって言われても、なんとも返せないわよ。

私は自分が好きになった人にしか好きって言いたくないの」


運命の出会いだとか前世の因果とか言われても、そんなのは好きになった後の気持ちの補強。


「なーんだ、そんなの当たり前だよ」


へらっと、なんてことないように笑う七次郎くん。


「僕はくきらを好きだって言ってるだけで、だから僕を同じように好きになってくれとは言ってないよ?

僕は、めろめろにさせるって言ったの」


にやり、と悪戯っぽく笑う七次郎くん。

なんだかその笑顔がいつもと違って見えて…照れ隠しのために「じゃあ」と続ける。


「じゃあなんでライバル宣言したり、私のこと毎日探したりしたのよっ」


おかげで君の気持ちを、全生徒が応援しているよ。


「だってさー、くきらって意外と可愛くて優しいから、大抵の男子は惚れると思うよ。

そうなると新参者の僕は触れ合いがない分不利だもん。

敢えて宣言しておけば、本気でくきらに惚れてる古株を見つけられるからね」


そうすれば、ちゃんと戦えるからと笑う七次郎くん。

計算高いな、と苦笑するしかないけど意外と色々考えてはいたのね。

サディスティックに私の学生生活を振り回してるだけかと思いましたよ。

事実そうなんですけど。


「でもなんでそんなに本気なの?

初対面時には好きだって告白されたよ私」


おまえはいつ恋に落ちたんだよ。

言っておくけど、私よりもすっごく可愛い子はいっぱいいるし、女子視点からしても私は目に見えて人気があるほうじゃない。

眼鏡に二つ分けの平凡勉強ヲタク。それが私の評価だ。

マドンナは別にいる。

だから告白されたときは、まさに青天の霹靂だった。


「そ、そんなの僕を好きになってくれた後でいいじゃん。

どーでもいいよっ…」


そっぽを向いてしまった。

しかしその耳は真っ赤。

え、もしや照れてる…?


「くきらー待たせてごめんヨ!」


ドアが開く音。

と同時に、私は初めて七次郎くんに、一瞬ときめいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ