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萩都くんのいる書店

「じゃ、あたし本屋寄るからここで」


「あー…、ま・いいか…。

うん、じゃな」


なにか言いたげな雪輔だったが、いつものように手を振って別れる。

私はいつものように文庫本コーナーの著作名 さ行の棚に目をやる。


と、後ろから肩を叩かれた。

振り返ると、制服姿の萩都くんが後ろに立っていた。


「よう、コレ探してたんだろ?」


差し出されたのは桜井先生の本。

探していた処女作だった。

驚くが嬉しさで顔がほころんでしまう。

私の笑顔をみながら、萩都くんはぶっきらぼうに続ける。


「前にほしがってたろ。

まぁ人気作家だし…売れんじゃねぇかって店長にちょっと言ってみたんだよ。

運が良かったな」


「ありがとう!

探したんだけど…他の本屋になかったんだよ。

うれしい!」


私の嬉しさが伝わったのか、萩都くんも嬉しそうだった。

そういえば普段着だけど…とまじまじと彼を見る。


「あー…、お、お前の高校の文化祭、見に行ってたんだよ」


「えっ、そうだったんだ」


「部活仲間が行きたいって言うから、し、仕方なくついてったんだよ。

あー、ついでに、お前の劇も見た」


うわーやっぱり来てたか〜恥ずかしい!

確率的には低くなかったのよね、こういう事態。

赤面してる私を尻目に、萩都くんはバイトの手つきそのままで棚を整理していく。

その横顔はどこか紅い。


「主役だとは知らなかったけど、き…綺麗だったよ…」


絞りだすような声。

…嬉しい。私も頬が紅くなる。


「ど・ドレスがな!

…あー、じゃなくて…えと」


耳まで紅くなってるのを、必死に右手で隠している。

と、左手を私の眼前に差しだす。それは何か握っていた。


「ん?なに?」


両手で受ける、と落ちてきたのは細長い紙。


「…軽音部、文化祭ライブ?」


チケットだった。


「興味ないかもしれねーけど、

一応俺、バンドやってて…文化祭でライブやるんだ。

まぁその…劇の礼っつーか、

ひ、暇なら…その、来いよ」


最後の一言を言うと、素早く背を向けてしまった。

ちらりとチケットの日付を見ると土曜日。


「あ、土曜なら大丈夫そうだし、行ってみようかな。

予想どおり音楽やってたんだね。楽しみにしてる」


なに演奏するんだろう。ロックとかかな。

私が色々考えてると、萩都くんは背を向けたまま呼びかけてきた。


「ら・ライブで伝えたいこと言うから……その、遅刻したら殺すからな!」


「しないよ、ちゃんと…行くよ」


覚悟しとけよ!と捨て台詞のように言って去った彼の声は、少し嬉しそうだった。



そして土曜日のライブ。

私は彼の言葉の意味を知る。

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