嫌われ者の忌み色さんⅡ
「嫌われ者の忌み色さんⅠ」の続きです。
Ⅱからみてもある程度はわかるかもしれませんが、Ⅰを見たほうがわかりやすいと思います。
途中から、面倒になったので低クオリティですが、それでもよかったらどうぞ。
それでわ↓
『隣の国にあるネルバという町に居着いているモンスターを退治しなさい』
闇の勇者としての卒業試験として出されたのは、モンスター退治だった。
モンスター退治なんて、いつもやってるじゃない…。そう思いながらも、私は師匠から地図を受け取る。
少々黄色くなった地図。古びているようにも見えるけど、要らない物はなんでも捨てる師匠が、こんな古いのを残すわけが無い。たぶん、薬の実験とかの影響で、黄色くなってしまったんだと思う。
何の疑問も持たずに転移の魔法で隣国、ルート国の首都ネルバへと向かう。
このとき、私は気がつくべきだった。
黄色いのは古いから。
残していたのは必要だから。
そして……あの赤い×印は目印ではなく、滅びたマークだと…。
疑問に思ったときにはもう、廃墟と化したルート国についており……この国を滅ぼした原因である、私が倒せと命じられたモンスターがこっちに迫ってきている時だった。
魔法を詠唱している時間はない。
こうなったら、神頼みか自分の反射神経に頼るしかない!
けど、元現代日本人だった私に、そんな直感的で野生的な反射神経なんて備わっているはずがなくて…。結局は神頼み。
でも、願うなら私は神じゃなくて…同じ勇者である……シューに願う。助けて。
***
目を硬く閉じ、痛みに身構える。…けど、いつまでたっても痛みは襲ってこない。
疑問に思い恐る恐る目を開ける。…これで幽体離脱してましたってオチなら私は昇天できる。
だが、私が心配していたようなオチもなく…目の前にあったのは…昔より大きくなった馴染み深い背中だった。
彼の前には大きなモンスターが血飛沫を上げてゆっくり倒れていくのが見える。
彼は、手の中にある短剣についた血を掃うと、慣れた手つきで腰にある鞘に収めた。
そして、クルリ私の方を向き、右の手の甲で頬の血を拭う。
「闇の勇者がそんなんじゃ、なさけねぇな」
久しぶりに見るその顔になんだか安堵して…前が霞んできた。
温かいものが頬を伝って流れる感覚がする。きっと、涙なのだろう。
「え、ちょっ、なんでいきなり泣くんだよ!?」
そういって慌てる彼。…慌てたときの頬を掻く癖も治ってないみたい。
…変わらなくてよかった。そう思うと、さらに涙が出てきた。
……そうだ。彼にまだ、伝えてない言葉があるんだ…。
「うぇっ、ひっく……。…シュー…ひっく…」
「うぇ!?…えっと……なんだ?」
「……おか…え、り…」
私がそういうと、彼は昔と同じように小首を傾げて微笑み…地面に座り込む私の頭を撫でて、いった。
「…ただいま」
***
「久しぶりだなー!村に戻るの」
「そりゃあ、旅してたもの。もう五年くらい帰ってないんじゃない?」
「おー…。もうそんなになるのか…。実感わかないなー…」
そういって、大きく伸びをするシュー。
光の勇者としての修行として、私に何も言わずに旅に出てから五年。ようやく帰ってきた。
昔よりも背も高くなったし、顔も髪の毛を切ったらしく印象が違う。表情も前より明るくなった。でも、根本的なところは、昔と何も変わっていない。それに何となく安堵する。
「…そういや、俺がいなくなってから……どうだった?」
「どうって?」
「いや、だからさ…村、とか…お前自身…とか…さ」
その言葉に、少々嬉しくなって微笑み、「大丈夫だった」とつぶやく。
実際、本当に大丈夫だった。
いなくなったときは、言いようも言えない喪失感に包まれたけど…そこまで孤独に怯えなくてよかった。たぶん、旅に出る前も修行で結構離れることが多くなったからだと思う。
それでも、だんだん引きこもるようになって…それを変えたのが、闇の番人…私の師匠だった。今まで、闇の杖自身が闇の勇者にならないかと交渉に来ていたんだけれど、私が引きこもりがちになって、これは人間同士の方がいいと思い、来てくれたらしい。
よくわからない気持ちなくすために、私は闇の勇者になった。まあ、そのあとで、なれるなれないは選べないって知ったんだけど。
修行をしていくうちに、その気持ちも晴れていった。それに、親友ができたのも大きいと思う。
カリナ・ウェルミー。それが彼女の名前。カリナは、この村の村長の孫娘で、この国の首都に住んでいたのだけれど、魔王が現れるときに必ずこの国の首都の上空に来るという浮遊島が近づいているので、この村の村長である祖父の家に来たのだという。いわゆる、疎開みたいなものだ。
彼女とは、私が修行していた時に出会った。まあ、自己紹介の時にも私はいたのだけれど、目も合わせてくれなかった。
森の中で誰かの悲鳴が聞こえて、駆けつけると同時に魔法を放った。どうやら、熊に襲われていたらしく、私が来なければ危なかったらしい。足を怪我していたので、常備している塗り薬を足に塗り、村の近くまで肩を貸した。それ以降、よく私に話しかけてくれるようになった。趣味や相性も合うので、私たちは自然と仲良しになった。
ある意味、私の中でカリナがシューに近い役割を果たしてくれたんじゃないかと思う。たぶん、カリナがいなければ暗い子になっていた気がする。
昔の思い出に浸っていると、いつの間にか村の前まできていた。たぶん、闇の杖…オブシディアンが気をきかせて転移の魔法を使ってくれたんだと思う。シューは魔法、使えないみたいだし。
村に入ると、視線が一斉にこちらを向いた。…いや、正確にはシューの方に視線を向けている。
その視線は、私たちを見つめたあと、ヒソヒソと何かを内緒話をし始めた。
何か気になるので、魔法で聞こうかな…と思っていると、私に声がかけられた。
「あっ!ミイー。おかえ………」
「あっ、カリナ。ただいま」
挨拶をしている時に固まったカリナに挨拶を返す。すると、怖い表情でこっちに近づいてきて…私の腕をひっつかんでシューから離れたところに連れて行かれ、内緒話をするように私に話し始めた。
「…ねえ」
「ん?どうしたの?」
私が疑問に思って言葉を返すと、怖い表情で私の肩をがしっと掴んだ。
「誰なのあのイケメンは!私が知らない間にいつの間にあんなイケメンを手に入れたの!?彼氏は私が認めた人じゃないといけません!…じゃなくて!ああ、もう!とりあえず誰!あの爽やか系イケメン」
「…大丈夫?ゲシュタルト崩壊しかけてない…?まあ、いいけど…。彼は私の幼馴染のシューロ・レイラ。ほら、前に話したじゃない。前に私と仲良くしてくれた子がいたって。それが彼」
それを聞いたカリナは、顔をポカーンとさせて、そのあとに何かに納得したのか、うんうんと頷いていた。なんか…首を上下に振る赤い牛みたい。うーん…なんだっけ…。あっ、赤べこだ。髪の毛が赤いのもそう見えるのかな。
答えを出せたことに一人満足していた私は、カリナの「……ということは…ミイの片思いか…。いや、忌み色であるミイに付き合うなんて、気があるくらいしか……。わからない……」という呟きに気がつかなかった。
ふと、シューを見ると、村人たちに囲まれていた。…女性の比率が多いような気がするのは……気のせい?
なんかしゃべっているらしい。…ちょっと気になるし…聞いてみようかな…
「ねえ、名前なんていうの?」
「彼女とかいるの?」
「ってか、忌み色と付き合ってるの?やめときなよー。それより、私と付き合わない?」
「…できれば、質問は一人一人でお願い。俺の名前はシューロ・レイラ。彼女はいない。というか、彼女いない歴=年齢。あいつとは付き合ってない」
何故か、シューの彼女いない歴=年齢発言に、いつの間にか安堵している自分がいた。…なんなんだろう。今日の私はおかしいと思う。
疑問に思いながらも、私は続きに耳を澄ませた。
「…私…前にあなたに会ったことがあるような気がするの…。もしかして…これって運命!?」
「それはない。…たぶん、前に俺が村に住んでたからかな…」
「運命…赤い糸……イケメンと私…キャッ!」
「うわー…。メルヘンに飛んでいったよ…。…ん?前にこの村に住んでたって…引っ越した人なんていないと思うけどな…」
「……もしかして…忌み色と仲良かった根暗…じゃない?…ほら、村の端に住んでた……」
「え……!?あの根暗…!?確かに…それなら忌み色と仲いいはずだし…。まさかこんなイケメンだとは…」
「…そういうのって相手に気を使って心の内に留めとくもんだろ…」
その時、村の広場に強烈な風が巻き起こった。
今まで当たっていた日差しがなくなり、なんだろうと顔を上げてみると……
そこには、巨大な緋色のドラゴンが、バッサバッサと羽音を立てながら私たちの真上を浮遊していた。
あまりのことにポカーンとするわたし。
村の娘さん達は、巻き上がるスカートを抑えるので手一杯のようだ。私は下にズボンを履いているから大丈夫。
ふとシューを見ると、大きく上空に向かって手を振っていた。
上空…というと、あの緋色のドラゴンしかいないわけで……あれ、シューのドラゴン?
「おーい!ナナ!そのまま下にゆっくりと降ろしてくれ!」
シューがそう声をかけると、ゆっくりと緋色のドラゴンが降りてきた。
ドラゴンが降りてくると、その背中に乗っている人が見えた。
一人は、茶髪で長髪なのを下で一つに結んでいる。少し顎髭が生えており、髪にも所々白髪が混じっている。渋めの顔で、たぶんレイボルさんだと思う。
一番前に座っており、ドラゴンの首にある手綱を握っているのが女の子。金髪に近い茶髪で、セミロングの髪の毛を下で二つに結んでいる。たぶん、ナナって子じゃないかと思う。
最後は、女の子にしがみついている男の子。これも金髪に近い茶髪で、女の子と顔立ちとかが似ている。双子かなんかじゃないかな?年は、私より少し幼い感じ。
二人共、レイボルさんに所々似ているので、もしかしたら親子なのかもしれない。
私がボケーとしてると、三人がドラゴンから降りてきた。ちなみに、村の人たちは遠巻きに見つめている。
「よう。やっと来たか」
「「やっと来たか」じゃないわよ!飛んでる最中にいきなり飛び降りて…。皆、びっくりしたんだから!……で、シューロさんが慌てて助けに行った人物は誰なの?」
「おう。そうだな。紹介するよ」
そういって、私の下に駆けてくるシュー。…いやいや、ちょっと待って。いきなり自己紹介とか無理だから!この世界に生まれてから、忌み色だからって嫌われてたから、自己紹介もロクにやったことないんだけど!何やればいいんですか!
「なあ、あいつらにお前を紹介したいんだが…いいか?」
「えっ、う、うん?」
「よしっ、じゃあ、行くか」
まさか選択させてくれるとは思わなくて、つい頷いてしまった。いや、だって私だと、相手の意見聞かないでつれてくと思うし。
でも、このまま連れて行かれるのも癪なので、ついでに、そこでニヤニヤしているカリナも巻き添えにすることにした。
「ちょっ、放してよ!私関係ないでしょ!?」
なんか叫んでるけどスルーです。シューもスルーしてるみたいだし、いいでしょ。
無理やりズルズルとカリナを引きずっていく。カリナがまだギャアギャア叫んでるけど、無視。
ある程度歩くと、ドラゴンから降りてきた三人の目の前にきた。遠目から見てもわかる二人は、近くへ来ても非常に似ていると感じた。
「…あなたが、シューロさんが助けに行った人…?」
「え、う、うん?」
「なんで疑問形なのよ…」
そう言ってため息をつく女の子…たぶん、ナナちゃん。その顔には「まさか忌み色だとは…」という感じがありありと出ている。
…ってか、シューって私を助けるために来たの?てっきり、この村に来る途中で私を見かけて助けたんだと思ったのだけれど……。
思わずシューに顔を向けると、バッと逸らされた。なんでだ。
不思議に思っていると、女の子と同じような顔をした男の子が言った。
「…なあ、今はそんなことよりも、自己紹介するために集まったんだろ?こんなこと「こんな事じゃないわ!勇者と言われた人の恋愛事情を私は探んなきゃいけないの!それは話題の種になるし、貴族様とかも勇者様を狙っているから報告しないといけないし……」はいはい。わかったからその口を閉じようか」
とてつもない弾丸トークに目を丸くする私。男の子はそれを手馴れたように制す。
…れんあいじじょう?ねらってる?…弾丸トークすぎて話の半分も聞き取れなかった。
横でカリナが目をキラキラさせている。…あとで聞くつもりか。止めても無駄なんだろうけど。
そんな事を考えていると、男の子がめんどくさそうな雰囲気を隠しもせず、自己紹介をし始めた。
「えーと、自己紹介だけど…俺はナノ。ナノ・ロシュリ。あそこにいる父さん…レイボル・ロシュリの息子であり、隣のナナの双子の弟だ。よろしく」
「え、う、うん。よっ、よろしく」
人と話すのはあまりないので、思わずドモってしまった。ナノ君は気にしてないみたいだけど…。
私も自己紹介を…と思ったとき、横から違う声が遮った。
「じゃあ、次は私の番ね!私は、ナナ・ロシュリ。ナノの双子の姉!好きなことは情報収集。嫌いなこと…ってか人は、貴族。以後、よろしく頼むわね!」
「えぅ、えっと、あの「そこ!オドオドしない!私の嫌いな人に追加されたいの!?」」
「いや、この人は俺らより格上のの闇の勇者なんだから、ナナ姉に嫌われたってどうってこと「ナノは黙って!」
…へいへい。…ところで、闇の勇者さんのお名前は?」
なんか急なことで慌てていたら嫌いな人リストに追加されそうになった。
しょうがないじゃん!私、コミュ障なんだから!
そう思ってたところに、弟…ナノ君の助け舟が入った。よかった…。ありがとう。ほんと、助かった。
「えと、私は…忌み色でいいよ。皆そう読んでるし。あ、でも闇の勇者って呼ぶのはやめてね。私…そういうの苦手で…。えっと…趣味は……」
趣味は…なんだろう。今まで生きるために山菜採りとかぐらいしかしてこなかったからな…。裁縫とかもできるけど、あれも生活費節約のためで趣味には程遠いからな……。あっ、一つだけあった。
「趣味は、狩りです」
「「「「…………」」」」
四人が、それは年頃の女の子がやる趣味じゃない。という視線で私を見つめる。隣にいるカリナも、呆れたような視線で私を見つめる。いや、だって、狩りしなくても生活できるのに狩りをするのは、立派な趣味でしょ。他に趣味らしい趣味とか思いつかなかったし。
「……とりあえず、俺の家に帰るか。ここにずっといちゃあ、迷惑だろうし、野次馬がどんどん群がってきてる。あ、俺の家、今もある?」
「あるけど……何年もいなかったからたぶん埃だらけだと思うよ?」
「あー…そりゃそっか…。どうすっかな……」
その時、カリナがいきなり手を上げ、自己主張をした。
「はいはい!困ってるなら、ミイの家を借りればいいと思うよ!あ、私はカリナ。ミイの親友!好きなことはそこの女の子と同じ、情報収集だよ!」
「おう。よろしく。ところで……ミイってのは…?」
「ミイってのは忌み色のこの子のこと。忌み色って言いにくいからね」
「そっか……。うん、そうしよう。なあ、今日はお前の家に泊まらせてもらおうと思うんだが…いいか?」
突然の言葉に、頭が真っ白になってしまった。今まで、あの緋色のドラゴンの姿が見えないので、どこにいったんだろうとそのことばかりが頭を占めていたのだから当然だ。
カリナに助けを求めようと試みるが、カリナはナナちゃんと話し込んでいる。完璧に意気投合してしまっている。…どうしようこの状況。
「う、うん…。私の家でよければ……」
そういうと、シューは顔に笑顔を浮かべ、「ありがとう!」といった。
……なんだろう。シューは変わってないはずなのに、なんだかその笑顔をみて、胸がチクリと痛んだ。それがなんなのか、私にはいまいちわからない。
複雑な思いのまま、私は自分の家へ4人を案内した。
***
「はー…。うまかった。この数年で、すっごい料理の腕上がってるな」
「そう?そう言ってもらえると嬉しい」
嬉しい。と言いながらも、私の心はなぜか複雑な思いでいっぱいだった。
私に旅のことを話してくれるシュー。それに穏やかに微笑みつつ時々合いの手を入れるレイボルさん。その話をシュー以上に詳しく解説してくれるナナちゃん。それらの話しの間違ったところに突っ込みを入れるナノ君。それを聞いている私。
皆を眺めていると、それだけで皆が何かの絆で繋がっていると感じる。それを見ているだけで、なんだかとても、悲しい気持ちが溢れてくる。わからない。けど、この気持ちは何かに似ているきがする。
…そうだ。仲間はずれにされたときに近い。皆は楽しくしゃべっている。自分はそれに相槌を打つだけ。けど、会話にはまったく参加していない。会話をしているのは、話している子達だけ。私は、仲間ではない。
……ダメだ。前世の記憶も相まって、悪感情しか湧いてこない。せっかく四人が来てくれたんだから、笑顔でいなきゃ。そう思うけれど、引きつった笑顔しかできないのは、心からの笑顔じゃないからだろう。
「ふあ~…。そろそろ眠くなってきたな…」
「寝るんだったら、さっき案内した部屋で寝てね。ここで寝ちゃダメだから」
「わかってるよ。それくらいの常識、俺にもあるさ。じゃ、おやすみ」
「おやすみ」
眠たそうにあくびをしながら、私が案内した部屋へ歩いていく。
ナナちゃんとナノ君は、その前に眠くなったのかシューが部屋へ向かう前に自分の部屋へ行って寝てしまった。レイボルさんは、その二人の付き添いみたいな形でついていき…疲れていたのか寝てしまった。
今この家で起きているのは、私一人。
それが私を冷静にさせてくれたのか、もう悪感情は沸かなくなっていた。
けど、なんだかまだモヤモヤっとした気持ちが漂っていた。
「このままじゃ……眠れないな…」
誰もいない空間で一人つぶやき、私は家にあるベランダに来た。
真っ暗な空の中、光っている無数の星達。その星達のほとんどは、自分を燃やして光っている。
なんだかそれに、不思議な感覚を覚えて……私は、いつものように歌い始めた。
「♪~…♪ー…」
いつもそうだ。何か、不思議な感覚を覚えて…私は歌い始める。
前世での曲を。
taboo word
それが、この曲の名前。意味は「忌み言葉」
歌うたびに、考える私の意味。私の存在を示す名前。その言葉を誰にも言われない私は、存在自体が忌みなのだろうか。これを歌うたびに、そんな事を考えてしまう。
お母さんが私に名前を教えないようにと手紙で書いたのも、私の存在が…名前が…言葉が忌みだからなのだろうか?そんなバカげた考えまで持ってしまう。
なんとも、私は弱い人間なのだろう。
「そんなに、自分の存在を示したいか?」
突如、暗闇から現れた人影。黒色のローブをかぶっているが、怪しい人物ではなく、私の師匠だ。別名、闇の番人ともいう。
彼女は魔法使いで、私に魔法を教えてくれた人だ。美を追求する姉に無理やり番人にされた可哀想な人で、それでも、姉を追いかける合間に私に修行をつけてくれる優しい人だ。…弟子を危険な目に合わせるかどうかは別として。
師匠がゆっくりと近づいてくる。その足音は、まったくと言っていいほどない。
まあ、とある理由で数百年も生きている師匠なら、それくらいは簡単だろう。
師匠は私の所まで来て、私の目の前で止まった。
「存在を証明したいなら、彼…光の勇者についていけ。自ずと、自分の意味がわかってくるだろう」
「でも、師匠……」
私が言おうとしていた事に気がついたのか、師匠はフードの奥でニヤリと笑った。
「今日から、お前は立派な一人の魔法使いだ」
「師匠……」
その言葉に嬉しく、そして、ちょっと悲しくなった。もう、師匠の弟子ではない。そう思うと、不思議と悲しさがこみ上げてくる。
すると、師匠はきた道を引き返しながら、こういった
「お前は、一人前になっても、いつまでも私の弟子だ」
そう言い残して、師匠は森の奥に消えていった。
もう、師匠の痕跡はない。私の心の中以外には。
私は、再び、歌い始める。今度はまったく別の歌。
アリアと言う名の詠唱を。
もう、胸のモヤモヤは、なくなっていた。
ナナ・ロシュリ 女
次期光の番人。活発な女の子で、好きなことは情報収集という、女の子によくある?趣味。高圧的な人が嫌いだが、ウジウジしてるのも嫌いという少女。平民の女子なためか、貴族に探りを入れてこいと言われ、嫌々ながらシューロの友人関係などを探っている。だが、情報収集が好きというのもあってか、結構楽しんでいる。同じく情報収集が好きなカリナとは気が合う。たびたび、双子の弟であうナノに愚痴っている。ってか、早く誰にするか決めなさいよね。光の勇者の妻っていう地位を狙っている貴族がたくさんいて、その被害が来るのが私たち仲間なんだから。
魔法が得意。スポーツ観戦が好き。実は料理が壊滅的に下手。
ナノ・ロシュリ 男
次期闇の番人。冷静というよりは、面倒くさがりな性格。双子の姉であるナナとは正反対な性格…というよりは、そんな姉をみて育ったせいで、反面教師となり、真逆の性格になった。基本、姉のフォローをしたりする。初対面の人には無愛想と思われがちで、姉の方が好かれるが、二人をある程度知っているとナノの方がいいと言われる。主に巻き込まれる可哀想な奴。というか、ナナ姉愚痴るのやめてくれる?対応するの面倒。早く帰りてぇ……。
体術や剣術が得意。文化鑑賞が好き。前世の記憶をもつ親友がいる。
ソフィア・ラル 女
闇の番人。アリアの魔法の師匠。初代闇の番人の娘で、魔法使い…というよりは魔女。永遠の美を求めた姉に「自分の血縁者の血肉を交換すれば不老不死になれる」という逸話を実行され、なりたくもないのに不老不死になってしまったかわいそうな人。そのため、数百年は生きている。今まで次期闇の番人が生まれなかったため、いつ現れてもいいように場所を特定しているだけだったが、次期闇の番人が生まれたため、たぶんこの戦いが終わったら姉と心中する。でも、次期闇の番人を育てて、忌み色のあの子の子供を見ないと死ねないな。
薬品作りが得意。子供が好き。結構美人さんで銀髪