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そして人は放たれた 後編

作者: 大川雅樹

しかし、わずかな単語しか理解出来ない人間たちには、ルシファーの言ってる事がほとんど分かりません。

きょとんとして、お互いの顔を見合わせています。

アダムが言いました。

「ルシファー、何、言った?」

ルシファーは人間たちに言いました。

「火だよ、火!」

そしてルシファーは右の手のひらを人間たちに差し出し、そこに火を灯しました。

「おおっ!」

人間たちは初めて見る火にびっくりしました。

「これが火だよ。」

ルシファーは言いました。

「カミナリとかが木に落ちて発火する事があるから、それを使いなさい。」

興味津々のエバが火にてを伸ばしました。

「きゃあっ!」

火に触ったエバは手を引っ込めました。

「そう。それが熱いって事だ。」

エバは怯えて頭を振りました。

それを見ていたアダムとロパとマクルも怯えました。

「さあ、アダム、ロパ、マクルも触ってごらん。」

エバが逃げ出しました。

そしてアダムとロパとマクルも逃げ出しました。

「あっ、みんな待ちなさい!」

ルシファーは叫びましたが、人間たちは逃げ去ってしまいました。

「火を扱う知能もないのか。」

ルシファーは、がっかりしました。


ルシファーは悩みました。

人間たちの事を心配する一心でした。

そして、やってはならない事へと考えが至りました。


まずルシファーは、一番好奇心旺盛なエバを楽園の真ん中の二本の木のある所に呼び出しました。

ルシファーは善悪を知る木の果実をもいで、エバに言いました。

「これを食べなさい。今までのどの果実よりもおいしいよ。これを食べたら神様のように賢くなれるんだよ。」

エバは頭を振って言いました。

「神様、これ、食べるな、言った。」

「もう神様から食べていいって言われてるんだよ。とてもおいしいよ。おいしいは分かるね?」

エバはうなずいて果実を見つめました。

それは真っ赤でみずみずしく、とてもおいしそうでした。

エバは好奇心を抑えられませんでした。

そしてエバはルシファーから果実を受け取ると、おそるおそる一口かじりました。

「おいしい!」

エバの目が輝きました。

「なんて事でしょ。色々なものが理解出来るわ。ルシファーの言ってた事も全て。まあ、私は裸だわ。恥ずかしい!」

ルシファーはその効果に満足しました。

そして宙から布を取り出すと、エバに渡しました。

エバはその布を身体に巻きました。


ルシファーは自分の判断に間違いはないと思いました。

最初からこの方法で人間たちに知恵を与えれば良かったのだと。

そして、次はアダムを呼び出しました。

ルシファーとエバに勧められて、アダムも善悪を知る木の果実を食べました。

「ルシファー、僕は目が覚めました。今まで何て愚かだったのだろう!」

アダムは叫びました。

ルシファーは満足し、アダムにも布を与えました。

アダムは布を腰に巻きました。


しかし、身体に布を巻いたアダムとエバを見た神様は全てが分かりました。

神様はルシファーを読んで言いました。

「何て愚かな事をしたのだ、ルシファー。」

「神様、あのままだったら人間は地上で生き残れません。」

「人間たちの心の中で、情が育っていたのだ。それがそれが完成してから、知恵を与えるつもりでいた。」

ルシファーは己の間違いに絶句しました。

「ルシファー、お前に罰を与えねばならん。地獄へ行き、悪魔たちの王となれ!」

天国が出来た時に、対極の地獄が生まれました。

そこは秩序もない暗黒の世界です。

ルシファーはうなだれて言いました。

「分かりました。私は悪魔たちを管理する役目を引き受けましょう。」

神様が言いました。

「アダムとエバは地上に放つ。」

ルシファーは顔を上げて言いました。

「今は冬の時代です。それはあまりにも、むごいのでは⁉」

「いたしかたない。もう楽園には置いておけぬ。それが彼らの罰だ。」

神様はルシファーに続けました。

「お前のような天使や、人間たちに自由意思を与えた時から、自己責任というものが生じる。責任は果たされねばならん。」


そしてルシファーは地獄に堕ち、アダムとエバは地上へと放たれました。

雪の降り積もるなかに投げ出されたアダムとエバは、寒さで身を寄せ合いながら、神様をののしりました。

こうして、人類の苦難は始まりました。


神様はロパとマクルを呼んで言いました。

「アダムとエバは罪を犯し罰を与えられたが、私は決して人間たちを見捨ててはいない。」

神様は生命の木の果実を二つもいで、ロパとマクルに食べさしました。

神様はロパとマクルが果実を食べるのを見ながら言いました。

「人間たちは苦難の道を歩む。しかし時が来たら、ロパ、お前が地上に降りて人間たちを導くのだ。その時お前は、イエスと名づけられるだろう。そしてマクル、ロパが失敗した時は、再び時を経て、お前が地上に降りて人間たちを導くのだ。」

ロパとマクルはうなずきました。

神様は言いました。

「再び人間たちが、私の事を愛する時代がきっと来るだろう。」


(完)



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