耳後
気が付けば後ろに居た。いつもボクの後ろにいた。
中学校の運動会の時も、高校の卒業式の時も、いつだってボクの後ろに居たんだね。今まで気づかなかったよ……。
アレはいつだったかな……そう、確かボクらが初めて出会った小学生の頃だ。
いつもへなちょこだとか、弱虫だとかイジメられてたボク。
そんなとき、君は転校生としてやってきたね。君だけだったよ、ボクに味方してくれたのは。
何しろ家にいたって居場所なんてないのに、学校に居場所が有るはずも無いからね。当然の理屈だ。
こんなにも惨めなボクを救ってくれた君は、本当にヒーローと言っても過言じゃないよ。
マサノリやカズオミを一瞬で蹴散らして、かっこいいったらありゃしなかった。
ある時『あんなクズどもは、早く死ねばいいんだ。見るも無残な死体になってね。グチャグチャのギタボロに破壊されて、犬の餌にでもなってたらどれほど地球に貢献できるかわかりゃしないよ』って言ったら、君は凄い形相で『そんなこと思っちゃいけないよ』って言ったね。
そんなお前はあいつらと同じだった。
ボクと幾分か親しかったから、人気のないところにおびき出すのも苦労しなかったよ。『この前はあんなこと言ってごめんね』なんて心にもないこと言ったら信じた君を、ボクは殺した。
家から持ってきた包丁で何回も何回も刺したね。潰したザクロみたいになった君の顔、お腹。目だけはずっとボクを睨んでいた。
あの時以来だと思ってたけど、そうじゃなかったんだね。君はいつだってボクの傍にいた。昔の写真を見て気付いたんだ。
あの時の目が、写ってる。いつもいつでもどんなときにも写っている。
目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、め、メ、メ、メ、め。
君は今も見てるんだろ? っていうか名前はなんていったっけ? 君を殺した後どうしたんだっけ? どうしても思い出せないよ……。
なぁ、今も見てるんだろ? ブラウン管に何もかも映ってるんだ。君ひとりの目がこんなにもあるなんて、どう考えてもおかしいだろ?
モウヤメロッテイッテンダヨ、オレヲミルンジャネェ。
あっ、そうだ!
最初からこうすればよかったんだ。君が止めるつもりはないみたいだしね。
フンフンフン♪ フンフンフン♪ さぁでーきたっと。
ボクの目が無くなれば済む話だったね。
ハハハハハハハハハハ……。
『アアアアアアアア』
と、ボクの耳元で囁き続けているのはいったい……。
2007/8




