第九話 居場所と別れ
「ついにこの時が来たんだね」
髪が真っ白になりさらにシワが増え、腰が曲がったシオンが隣にいるステラに声をかける。
「ええ、そうね、シオンが頑張ってくれたから」
「違うよ、母さんの魔法の暖かさがみんなに伝わったからだよ」
ついにシオンが作った小さな学校はハーフの居場所にもなっていた。
普通のエルフももちろん通っているがハーフたちも通っても文句を言われない、
安心して通える場所。
たった一つの居場所になった。
「本当に間に合ってよかったよ、これで母さんはもう、寂しくないね」
「何を言っているの?」
「分かっているでしょう、母さん、僕はもう長くない」
「いやよ、シオンやっと居場所ができたのに…」
「置いていかないでよ…」
「母さんは早とちりだなぁ…」
「今すぐに死ぬわけではないんだからそれまで一緒にいよう?」
「僕またあのミルク飲みたいな」
「うん、そうだよね、」
「ミルク一緒に買いに行こう」
「そうだね」
二人は待ちに出てミルクを買う。
そしてステラがいつものように温める。
幸せな日常、
そんな日常がもうすぐ終わってしまうことを二人は理解していた。
だから、1日1日を大切にした。
特別なことなんてしない、
望まなかった、ただ2人が幸せだと感じていたあの日常を繰り返す。
「ねぇ、母さん最後に一つお願いがあるんだ」
「聞いてくれる?」
「ええ、何でも話して…」
ベットの上で横たわるシオンの手をステラは握って泣きながら話を聞いていた。
「もし、僕が生まれ変わって貴方の前に現れたらもう一度息子にして、」
「あの苦いお茶や温かいミルクを飲ませてくれる?」
涙を必死に堪えてステラは言った。
「もちろん!」
その言葉を聞き安心したかのように静かに息を引き取ったシオン。
何かが切れたかのように子供のように大声で泣くステラの声がその静かすぎる部屋に響いていた。




