第六話 間に合ったよ
あれから50年たった。
「間に合ったよ、先生」
「とても静かでしょう?」
「そうね、とても静か…」
ベットに横たわるステラに向かってミラが話しかける。
優しく手を握りながら、
そう、ミラはステラの『音を聞こえづらくする魔法』を再現できていた。
いつもかける側だったステラが初めてかけられる側に立てたのだ。
「先生、私がこの魔法ちゃんと明日へ未来へと繋げるよ、だから安心していいんだからね」
「ありがとう、ミラ、本当にありがとう」
「私ミラに会えて本当に幸せだったわ」
「こっちのセリフだよ、私こそ先生に会えて、この名前を貰って本当に幸せ」
「そう、良かった…」
「先生、あのね、最後の我儘言っていいかな」
「なーに?」
「私来世でもまた先生と暮らしたい」
「それまでにもっと先生が過ごしやすい世界に作るから」
「だから、今度はシオンさんだけじゃなくて私も娘にして!」
「ええ、もちろん…」
「ありがとう、先生、」
「大好きだよ」
「私も大好きよミラ」
握っていた手が冷たくなる。
静かな部屋の中にすすり泣くミラの声だけが響いていた。
あれから200年たっただろうか、
ステラの教室には優しい微笑みを浮かべたミラが先生として立っていた。
罵声が止んだ訳では無いがステラ亡き後生徒達がミラを中心に守ってきた甲斐があり200年後の今でも続いている。
「先生!今日は何の魔法を学ぶんですか?」
一人の生徒がミラに問う。
「今日は先生が一番好きな魔法を学びます」
「この魔法はとても難しいけど、その分温かくて優しいのよ」
「心配しなくて大丈夫、先生や先生の先生だってたくさん失敗してきた魔法だから」
「失敗して当たり前だからね」
そう言いながらミラが教えていたのは
『音を聞こえづらくする魔法』だった。




