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第二話「規格外の襲撃者」

黒犬の幹部たる女性、ナターシャ・ハーゼ。彼女は他の部下と共に任務を遂行。

規模を拡大し始めたキッカケはこちらのボスとX機関の接触である。機関の十冠、

美のティファレトという女と契約を結び傘下になった。そして組織には強力な

助っ人がやって来たのだ。ボスが雇ったのは裏社会で名の知れた一族の人間。


「貴方が用心棒?もっと厳ついオッサンかと思った」

「そういう男が好みなのか?俺の家の奴らは大体こんなもんだぜ」


アルカイド・ベルセルガー、武器らしい武器は何も持っていない様だ。この世界に

似つかわしくない好青年が狂戦士として名を馳せる一族の人間とは誰も思えない。

ナターシャは暗殺者として長く働いている。素人かプロか、見分ける事なら簡単に

出来るはず。そんな彼女ですら、どうやって見てもアルカイドが戦闘一筋の家で

生き残った人間であるとは思えなかった。ボスは代々バーゲストという名を継ぐ。

現ボスであるバーゲストは一族について語るとき、顔が引きつっていた。

敵に回したくはない、この狂犬を飼い慣らそうなどと考えてはならない、と。

そんなじゃじゃ馬とは到底思えない。


「貴方、ホントにベルセルガー家なの?あの家って、閉鎖的だけど中々な環境だと

聞いてるわ」


先々代から特に一族の掲げる弱肉強食の特色が濃くなってきた。分家本家問わず

子ども同士が殺し合うことすらもあるという。あくまでもこれは鍛錬だという。

そんな環境下で生き抜いただけの実力があるはずだ。


「よく言われる。俺じゃなくてシリウスがいれば、違ったかもな」

「シリウス…一体どれほどの強さなのかしら」

「馬鹿なことはやめといた方が良い。アンタ程度じゃ一方的に嬲り殺しされる

だけだぜ」


冷たく断言したアルカイドは先ほどまでの好青年のような空気から一変する。

その言葉が挑発のように聞こえたナターシャは自身の得物であるナイフを

アルカイドの首にあてがう。


「聞き捨てならないわね。如何なる猛者であろうと隙が出来る。私はそれを

見逃さない」


ナターシャはナイフを握りしめる。


「今、貴方の命を握っているのは私。言葉を取り消せ」


一触即発の空気に部下たちは黙って、見ているしかなかった。下手に飛び出せば

死ぬと確信しているからだ。彼らの危惧を他所に、先に矛を引っ込めたのは

アルカイドだった。


「今日の仕事は、アンタの仕事が完了するまでの護衛。言葉は取り消さねえけど

謝罪はするぜ?」

「どういうことだ。私は弱いと?」

「アンタはベルセルガー家の環境を明確に把握していない。だから簡単に

言えちまうのさ」


二人が会話をしている最中に部下から緊急連絡が入った。


「侵入者です!」



依頼人多数の為に引き受けざるを得ない状況になったフィオナ・ブライト。

地図を広げ、依頼人たち各々の情報を整理しながら確認すると一つの倉庫街へ

収束する。旧倉庫街、かつては多くの交易の際に利用されていた場所だったが

今となっては不必要になった場所。そこを取り壊すのにも費用が掛かる。

放置したままになっていたのだ。


「そのせいもあって犯罪者共の良い隠れ場所になっているわけだ」

「俺とキースが来るのは良いとして、フィオナは良いのか。犯罪者の巣窟に

生身で乗り込むようなものだろう」


アゼルはフィオナを見た。基本的に何かしら乱闘騒ぎがあっても戦線に出ず

逃走しがちなフィオナの事なので今回も事務所で待機しているだろうと考えて

いた。キースは頭脳労働、事務方、そして荒事、ほぼ全ての仕事をこなすことが

出来る男だ。彼の戦闘能力の高さはアゼルが身を以て知っている。


「人質を解放したら、さっさと帰る。閉じ込められている場所と逃走経路の

確保にはフィオナの()が必要だ」


キースはフィオナの背中を軽く叩いた。


「頼むぞ、探偵」

「おうっ、どーんと任せなさい!」


フィオナの右目は青色。その瞳が輝き出す。彼女の視界は透き通り、ルートを

見つけ出す。人質がいる場所の近くを巡回するのは黒犬の構成員たちか。全く

動かない二人組はグループのリーダーだろうが、片方だけは見覚えがある。

フィオナも探偵としてそれなりに人脈というものがある。似たような身体的

特徴を持つ家系があると聞いたことがある。


「…ベルセルガーか」


戦闘を生業とする傭兵の一族、狂戦士と称される凶暴性は良く知られている。

首に十字架を模した聖痕のような痣がある、一族の特徴だ。


「鉢合わせと戦闘は避けたい。動く気配はあるか」

「今は無いけど、騒ぎが起こったら絶対に動くと思う。というか…もう―」


急速に接近する人影。フィオナが先を言う前に鉄骨が飛んでくる。轟音を

立てて、コンテナも他の鉄骨も破壊されてしまう。飛んできた鉄骨の上に

着地し、間髪入れず何者かがフィオナへと襲い掛かるもキースとアゼルが

同時に割って入った。


「キース!」


吹き飛んだキースはコンテナに激突する。大きくコンテナが凹んだ。

追い打ちを掛けるべく相手は動き出すも、それを妨害したのはアゼル。

彼は自身の扱う得物を抜刀し、突きを放つ。襲撃者は一人の男。身を

捩り、突きを躱し切ったつもりだったがアゼルの攻撃の方が僅かに

速かったようだ。無理やりに突っ込むことなく相手は距離を取った。


「随分とデカいネズミだな。仕事を受けた甲斐があるってモンだ」


男は自ら名乗りを上げた。


「ベルセルガー家次男アルカイド・ベルセルガー、お相手願うぜ?

剣聖アゼル・ハートフィールド」



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