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掌編 屋上、夕暮れの端で  作者: Elnika Flose


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2/2

屋上、夕暮れの端の記憶

風が、フェンスの向こうから吹き抜けた。

わたしの頬をかすめ、咲夜の髪をやさしくほどいていく。

その瞬間だけ、夕陽の中に彼女の笑みがちらりと光った。

幻のようで、それでも確かに、あたたかかった。


「ねぇ、もしさ」

彼女の声が、少しだけ震えていた。

「もし、別の世界があるなら――私たち、また会えると思う?」


問いかけは、風の音にまぎれて形を失った。

でも、その響きだけが、胸の奥で何度も繰り返される。


夕陽の光は、まぶしさよりも柔らかく感じた。

痛みの中にも、どこか救いのような温度があった。


何かを言おうとしたけれど、喉の奥で言葉がほどけていく。

代わりに、わたしはフェンス越しにそっと手を伸ばした。

彼女も、わずかに動いた気がした。


風がふたりの間をすり抜け、

その境目だけが静かに揺れていた。


夕焼けが街を包むころ、

屋上の影はゆっくりと重なって――やがて、見分けがつかなくなった。


ーー


風が止んだ瞬間、世界が裏返った気がした。

フェンスの向こうにいたはずの彼女が、今は私を見上げている。


「ねぇ、どこへ行くの?」

その声が、自分のものだと気づくまでに少し時間がかかった。


私は笑っていた。

悲しみでも、諦めでもない。

ただ、風の中に自分の存在を感じたから――それだけだった。


沈みゆく太陽が、もう一度だけこちらを照らす。

その光の向こうで、誰かの記憶が目を覚ました。

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