表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

あなたを置いて

作者: 小雨川蛙

 

「ダメだ……耐え切れない。俺はなんでこんなことを」


 蓮司(れんじ)は堪え切れないという様子で泣き崩れた。

 それを見ていた鷹真(たかまさ)は舌打ちを一つしたが、それはすぐにため息交じりの笑みに変わった。


「だから言ったんだよ。殺しなんてやめようってな」


 鷹真はそう言って蓮司の背中を擦る。

 二人は昔からそうだった。


 短気な蓮司はすぐにカッとなる。

 それを鷹真はどうにか宥める。

 その繰り返しだった。


 しかし、今回は違った。

 鷹真の宥めが足りず、蓮司は衝動のまま自分を馬鹿にした相手を殺してしまったのだ。


 二人で殴り続けて虫の息となった相手を見て、鷹真は最早助からないと判断しトドメを刺した。

 万が一助かったとしても、どう考えても訴えられる――そうなればおしまいだ。


『こうするしかなかったんだよ。諦めな』


 鷹真はそう言って宥め、蓮司も始めは納得していた様子だったが今になり罪の重さに負けたというところか。


「仕方ねえよ」


 鷹真は蓮司の背中を何度か叩いた後、いつものように笑った。


「とりあえず逃げられるところまで逃げよう」

「もし捕まったら……?」

「その時は素直に裁きを受けるしかねえよ」


 元も子もない言い方だ。

 蓮司は何故か笑っていた。

 鷹真も笑った。


 二人は車に乗り込んだ。


 そしてエンジンがかかる。

 運転席に乗っていた鷹真はこちらを見て言った。


「じゃ、俺らは先に行くからな」


 言うが早く車は走り出した。



 ――あなたを置いて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ