〝神の祝福〟
俺は買った奴隷を2人連れて、人が通らない街の裏道までやってきた。
ここは誰も通ることは無いのは確認済みだ。前もって準備していたからな。
そしてそこに買ったばかりの奴隷2人をゆっくりと地面に置いた。
「「………………」」
うーむ……全くといっていいほど反応が無い。
わずかに呼吸音がするのが唯一、生きている証明になる程度だ。
改めて見ても酷い状態だ。見ているだけも辛い……
早く治療しないと。
「よし……やるか!」
俺は片方のエルフに向けて能力を発動させた。
「まずはエルフのほうからだ……《神の祝福》!」
手をかざして発動した瞬間、エルフの体が光に包まれていった。
そしてみるみる内に修復していき、光が消えた時には綺麗な体になっていた。
「よっしゃ成功だ!」
神の祝福とは、この世界に転生した時に神様から貰ったチート能力だ。これは体のあらゆるケガや病気を治すという凄まじい能力をしている。
ただ治すだけではなく、不治の病や欠損部分すら修復してくれるという壊れっぷり。
まさに神の力といえるようなとんでもチート能力なのだ。
だが実際にここまで酷い状態から治すのは初めての経験だった。
どんなケガや病気も治せるとは聞いていたけど、実は半信半疑だった。
けど本当に完璧に治せたんだからもう疑いようは無い。これは最強クラスのぶっ壊れ能力だ。
「もう一人のほうも……《神の祝福》!」
今度は獣人に向けて発動。
エルフにした時と同じように光が包み込み、光が消えると体が綺麗に修復されていた。
もちろん欠損していた腕も元通りだ。
「よしこれでいいか。二人とも大丈夫? どこか痛くないか?」
俺の声にようやく反応したのか、二人はゆっくりと動き出した。
何が起きたのか分からないのか、自分の体を調べたり周囲を見回したりしていた。
そんな2人の前に近づいて話しかける。
「おっ気付いたかな? これからは俺がお前らの主人となる。体は既に完治しているはずだ。俺が治したからな」
「…………! ほ、本当に……君が治してくれたの……?」
「うん。俺の能力で治したよ。どんなケガや病気も治せるからね」
2人は驚いた様子で自分の体を触っていった。
「す、すごい……あんな大怪我してたのに全部治ってる……」
「信じられねぇ……千切れた耳まで元通りになってやがる……」
どちらも自力で立つこともできないほどに酷い状態だったからな。そんな状態から完治しせいか、2人とも信じられないような表情で体中を確認していた。
「えっと……その……あ、ありがとう。もうあのまま死んじゃうかと思ってから……正直まだ信じられないというか……」
最初に喋り出したのはエルフの方だった。
「特に問題ないようならよかった。でもこの能力はなるべく人には話さないでほしいんだ」
「わ、分かりました!」
「あ、ああ。アタシも絶対教えたりしないと誓うよ」
俺のスキルはまさにチート級のとんでもスキルらしいからな。だからなるべく人には教えないようにしている。
「とりえあずもう動けるはずだよ。そういえば名前はあるのか? 俺はリョウマというんだ」
「あ、はい。ボクはセシリアといいます……」
「アタシは……リリアーヌだ」
なるほど。エルフのほうはセシリア。獣人のほうはリリアーヌか。
「これからは俺の奴隷として扱うけど、別に乱暴に扱ったりしないから安心して。やりたい事があるなら何でも言って。なるべく希望は叶えることにするから」
「ほ、本当……!?」
「うん。だから何でも言ってね。遠慮しなくてもいいからね」
俺はただこの子たちとイチャイチャしながら平和に過ごせればいいんだ。だからこそあまり束縛するようなことはしたくはない。
今はまだ警戒しているだろうけど、きっとこの子たちもそのうち心を開いてくれるはずだ。
「それなら……1ついいですか……?」
「ん? さっそくかセシリアからか。何でも言って」
そう。俺はこの調子で奴隷ハーレムを作るんだ。
「それなら……えっと……」
言い辛そうにモジモジするセシリア。
こうして見るとなかなか可愛いじゃないか。エルフってみんなこんな美人なのかな。
「どうして? 言ってみろって」
「それじゃあ……」
まさかいきなりか?
いきなり心を開いてくれるようになったのか!?
これは幸先がいい。
ようやく手に入れることができた奴隷の美少女達。
この子達と仲良くなって憧れの奴隷ハーレムを目指すんだ!
そしてずっとこの子たちと一緒に――
「………………オーガ族を皆殺しにするのを手伝ってください!」
「ああいいぞ…………うん?」
今この子なんて言った?
すっげぇ物騒なこと言ったような……?
「ご、ごめん。もう一度言ってくれるかな?」
「脳筋くそったれオーガ族に復讐したいです!」
「………………」
言葉は理解できているが脳が理解することを拒否している。
俺の奴隷ハーレム生活……いきなり頓挫の危機であった。