見えない″何か″
″仲が良い男友達に彼女が出来てから気軽に遊ぶのが良くないこと″と前には無かった遠慮が生まれ、彼を意識してしまうように変わっていく。
何も変わらないでほしい。ずっとこの心地好い関係だけは変わらないでほしい。
彼と遊ぶのは、いつも楽しい。
……でも、最初のうちは、少しだけ気を使っていた。
正確に言えば、「楽しさに集中できなかった」と言った方が近い。
会っている間、彼のスマホがよく鳴った。
通知音が鳴るたび、彼はちらっと画面を見ては、そっと伏せる。
無言でスルーするその動作が、なんだか私に罪悪感を背負わせてくる。
「出なくていいの?」って聞くと、彼はいつも「大丈夫」と笑った。
「今はお前といる時間だから」って、気にも留めていないような顔をして。
でも私は知っていた。
その通知の主が、彼の“彼女”であることを。
会っている最中に、何度も着信が来る。
無視すればLINEの通知が何回も鳴る。
あの音が鳴るたび、私たちの空気が少しだけ変わる。
そのたびに思った――
「ああ、めんどくさい彼女だな」って。
私はちゃんと伝えたつもりだった。
「彼女優先しても大丈夫だよ」って。
でも彼は「関係ない」って言って、私を選んだ。
それが、嬉しくて、でもどこか怖くもあった。
⸻
そんなある日、私は気づいた。
Twitterで彼との出来事をツイートすると、必ず“何か”がついてくる。
見えない引用リツイート。表示されないリプライ。
最初はただのアプリのバグだと思っていた。たまにあるし、と。
でも――おかしい。
彼とのツイートをしたときだけ、必ずついてくる。
一度や二度じゃなかった。三度、四度、それ以上。
さすがに「偶然」で片づけられなくなって、私の中にある確信が芽を出した。
「……これ、彼の彼女だ」
そう気づいた瞬間、背筋がぞわっと冷たくなった。
見えない“誰か”に監視されてるようで、心がざわざわした。
でも、怖かった。だからずっと放置した。
自分の勘違いであってほしいって思ってた。
つづく