第93話:模擬戦
先週は書くの忘れてました。すみません
白一色の空間に、三人だけが立っていた。
地面も空も、境界も影もない。
無限の白。マジであの部屋を彷彿とさせる。
大鎌を肩にかつぐ俺は、少し腰が引けている。
刃は長く重く、まだ俺の体に馴染んではいないのだ。
何より、最大の原因は目の前に立つ陽輝。
向かい合う陽輝は若くに見えるが、その目には静かな威圧が宿っていた。
間違いなく世界最強クラスの魔法剣士である。
腕に覚えがあるがゆえの余裕が、その立ち姿から滲み出ている。
「魔法はなしだ」
魔法はなしと聞いて、俺は内心でホッと息をつく。
「まずは基礎からだ」
陽輝が低く声をかけてくる。
大鎌をぎこちなく柄を握り直す。
すでに緊張から手汗が出ている。
近接戦ではまず勝てない自分を自覚しているが、逃げるわけにはいかない。
模擬戦とはいえ、相手は陽輝だ。
侮られたくない。
陽輝がゆっくりと踏み込み、剣先を俺の肩先に向ける。
「刃を見るな、動きを見ろ。相手の刃と手の位置から、次の行動がわかるはずだ」
いきなり上級者向けの指導に焦る。
俺は深く息を吸い、構えを低くする。
長い刃を振りかざしてみるが、動作はぎこちない。
大鎌スキルが馴染んでいない証拠だ。
陽輝は一歩進み、刃を斜めに構えた。
「そのまま振ると、力は逃げる。大鎌は遠距離の武器だ。腕で振るな、体全体を使え」
俺は首をかしげながら振るい直す。
刃が空気を切る音が、白い世界に鋭く響く。
陽輝は軽く剣を上げ、かわす動作を見せる。
「こうだ。相手の刃を読んで体を動かす。力任せでは防げない。大鎌の刃の長さを活かすんだ」
そして、模擬戦が再開する。
俺は一歩下がり、陽輝の動きを観察する。
陽輝は小さく足を踏み込み、斬撃を繰り出すが、俺はぎこちなく大鎌を横に払う。
刃のぶつかり合いで、火花のような感覚だけが白に散った。
「腰が固い!もっと柔らかく、刃を誘導するんだ」
陽輝は淡々と言うがよくわからない。
俺は深呼吸し、体全体を回して刃を振るう。
斬撃はまだ鈍いが、以前より軌道が滑らかになっている気がする。
陽輝は間合いを詰め、攻撃と防御を交互に見せる。
「初心者は、まず受けることを恐れるな。攻撃は自然に身についてくる。受けた感触から学ぶんだ」
さっきまで理論的だったのに急な感覚派に戸惑う。
「えっ?」
「考えるな!感じろ!」
俺はぎりぎりの距離で、大鎌を低く構えて踏み込む。
陽輝の剣先がかすめる。
痛みはないが、衝撃が手に伝わる。
俺の目に初めて焦点が合った瞬間だった。
「いい、少しずつだ」と陽輝は言いながらも、手加減は最小限に抑えている。
指導者としての矜持と、剣士としての実力の両方を示すためだ。
俺は一歩下がるが、刃の軌道を読もうと必死に目を凝らす。
「次は反撃だ。受けたらすぐ返す。刃の長さを利用して、間合いを保ちながら攻撃するんだ」と陽輝が指示する。
俺は刃を下げずに振るい、陽輝の斬撃に沿って刃先を動かす。
小さな火花のような感触が、白い世界にかすかに光った。
「そうだ、その感覚だ」と陽輝は微笑む。
力任せではなく、刃と体の連動で攻撃を受け流す感覚を掴み始めている。
初めて陽輝と正面から対峙する圧力にも慣れてきて、俺の呼吸も少しずつだが落ち着き、動作に自信が現れる。
俺達は動きながら指導と実戦を繰り返す。
その様子を観察する唯衣の目は真剣だった。
俺はまだ大鎌初心者だが、スキルの助けもあり徐々に間合いとリズムを掴み始めた。
陽輝は必要に応じて足を止め、タイミングや角度を指摘する。
白い空間の中で、模擬戦は静かに熱を帯びていく。
そして最後に陽輝が斬撃を放つ。
俺は瞬時に防御の構えを取り、刃を受け流した。
微かに火花が散り、俺の胸に自信が芽生える。
「今日のところはここまでだ」と陽輝はゆっくりと剣を下ろす。
「覚えておけ、戦いは力だけじゃない。刃を見るより、相手の動きを読むことだ」
俺は息を整え、柄を握り直す。
まだ初心者だが、白一色の世界の中で、少しだけ戦士としての自分を感じていた。
『じゃあ、次は私ね』
軽く汗を拭う陽輝に唯衣が詰め寄る。
「ああ、俺は女だからって、手加減しないからな」
『望むところよ』
唯衣と陽輝はゆっくりと距離を取る。
唯衣が大鎌を構える。
その姿を見て、陽輝が「ほう」っと目を光らせた。
たぶん、俺より唯衣の方にセンスを感じたのだろう。ぐす
初手は唯衣だった。
俺が苦心しながら、振り回していた大鎌が綺麗な円を描くように陽輝を襲う。
その大鎌には遠慮や怯えが一切なかった。
唯衣らしい一撃。
激しい火花と金属同士の甲高い音が響く。
その衝撃に陽輝が不敵な笑顔を浮かべる。
「まさか!颯夜との模擬戦を見ただけで覚えたのか!」
『そう、よ!』
唯衣の攻撃はどんどん早くなっていく。
大鎌を自分の手足のように遠心力を乗せて、音も火花も激しさを増す。
陽輝は内心で感嘆すると同時に戦慄する。
俺はそんな二人の戦いに見入っていた。
皆さん、ごきげんよう。
前書きにも書きましたが先週はすっかり忘れてました。
ええ、新作ファンタジー書いてたら、熱中してしまいまして、こっちはそっちのけで書いてました。
久しぶりに天からアイデアが降ってきたので…。
そのおかげで渾身のファンタジーが書けております。
私、これまで自分が読みたいと思うものを書いていたんですが新作は初めて読んでもらいたいと思って書いております。
3月22日に初回3話投稿するので良かったら読んで下さい。
タイトル『ダンジョンは夜に舞い降りる』
【あらすじ】
午前0時――街が、突然「異界」に変わる。
それは自然災害でも、戦争でもない。
人類が抗えない新たな天災、「ダンジョンホール」。
一歩踏み入れれば夜明けまで出られない閉ざされた異界。
現実の街が歪むものもあれば、砂漠や廃墟、洞窟の異世界に変貌するものもある。
蠢く異形――「ホラー」。
黒く血管のように脈打つその赤い核は、普通の人間には見えない。
立ち向かうのは、夜目を持つ少女ハンター・雨宮凪。
そして彼女のバディ、冷静沈着な剣士・白峰紗夜。
さらに二人の元には、
ダンジョンの未来を夢で見る少女――夢乃りこがいる。
暗闇の中で戦い、救い、生き延びる――。
でも、一瞬の判断ミスで命は消える。
異界の夜は、残酷で、恐ろしくて、容赦がない。
果たして二人は、この「夜の災厄」から無事に帰還できるのか――。
現代ダークファンタジー × ホラーアクション
極限バディ戦記、開幕。




