9話︰バレたらな
『毒魔法の宝珠』がとんでもない代物だと解り、家族会議が発生した。
「颯夜の好きにさせたらいいじゃない!」
「しかしだな・・・」
「・・・」
「小手と合わせてこれを颯夜が使えば、より探索が安全になるわ!」
「そうかもしれないが・・・」
「・・・」
何故か煮えきらない態度の父。巻き込まれたくない俺。そんな態度の父親に対して母親はどんどんと怒気を膨らませていく。
「ひょっとして、あの事件みたいなことを颯夜が起こすとでも思ってるの?!」
あの事件とはなんぞや?
「そんなことは思っていない!!」
「「っ!?」」
「す、すまない。つい声を荒げてしまった」
うちの父親は滅多な事で怒鳴ったりはしない。
母親は親父の温厚で優しく、若い頃はイケメンで誰に対しても礼儀正しいところに惚れたと言っていたが俺には従順で操縦しやすく、母親に対して絶対遵守なところと聞こえたが…。いえなんでもないです…。
「確かにあなたが躊躇する気持ちも解るわ。あの魔法を習得すれば、颯夜は普通の暮らしを送れなくなるかもしれない…」
ちょいちょいちょい待ち〜!!
「えっ!?そうなの?俺、普通の暮らし出来なくなるの!?」
「バレたらな」「バレればよ」
「・・・」
これは黙っている場合ではないと思い、口を挟む。
「そもそも、あの事件って何?」
『えっ!?まさか知らないの?』みたいな表情で両親は顔を見合わせる。
「・・・そうか、颯夜が生まれる前の話だから知らないのは当然か…」
俺が知らないことに勝手に納得した父親は静かに話し始めた。
およそ20年前。北方のとある国で毒魔導の宝珠が発見された。
※ちなみに魔法にもランクがある。
魔術〈 魔導〈 魔法
といった具合に範囲、威力、効果が上がり希少性も高まっていく。
それまで世界中で毒魔術はいくつか発見されていたが毒の魔導クラスが発見されたのは初めてだった。
当時、そんな貴重な毒魔導を手に入れた国は積極的に活用することでダンジョン攻略に破竹の勢いを見せた。
しかし、ある時にその国でも最難関と言われるダンジョンで氾濫が発生。
この緊急事態に国は満を持して、毒魔導士を投入。
過去最大級の氾濫とあって、毒魔導士を投入しても苦戦は免れないと誰もが考えていた。
しかし、結果は想定以上の戦果を出した。そう想定以上の…。
毒魔導士が放った毒は大地を腐らせ、風に乗った毒は周辺一帯の町を覆い尽くし、そこに住む人々を根絶やしにした。その中には毒魔導士の住む町も入っており、家族や愛する者も含まれていたという。
ダンジョンの中での使用では問題なかったはずなのに地上では驚異的な威力と効果を発揮したのだ。
これはダンジョンの自己修復機能のおかげで毒が短時間で無毒化されていたことを理解していなかったことが原因だった。
毒魔導士は自身が招いた凄惨な結果に茫然自失となり、魔力暴走を起こし更なる被害を拡大。
そして、その被害によって北方の国は滅亡した。
この結果を受けて、世界の探索者協会は毒系スキルを危険技能第一種に指定。
取り扱いに対する法を制定し、所有者及び使用者に対して監視と厳しい使用の制限を課した。
それ以来、毒系スキルを習得した場合、探索者協会に届け出をするのが義務づけられた。
もし、この義務を怠れば、懲役刑が科せられる。
「・・・」
こんな話を聞かされてしまっては習得するのが躊躇われる。
「颯夜大丈夫よ、バレなければ良いんだから、ね」
なのに母親はなんでこんなにも楽観的なんだろうか、正気を疑う。
「そうだな、颯夜が上手いことやれば済むことだな。最悪、颯夜には物置きがあるからそこに隠れ住めば、なんとかなるか」
お前もかブルータス!!なんとかなるか!ボケッ!
こうして、毒魔法の宝珠を使用するかは俺の判断に委ねられた。
両親は大仕事を終えた後のような清々しい表情を浮かべ、日常に戻ろうとするがそうはさせない。
「あ〜、話がまとまって良かったみたいな顔してるところ、申し訳ないんだけど後2つ程、報告があります」
この発言は余程効いたのか両親から表情が抜け落ち、石化したように動きが止まった。
動きたくないという強い意志を感じる両親を無理矢理、ソファーに戻し座らせる。
今から報告するのは【称号】についてだ。
「さっきは親父に鑑定してもらったけど、今度は母さんに解析をしてもらいたいんだ」
俺の言葉に母親の顔色が見る見る悪くなる。どんだけ信用ないんだよ…。
前に少しだけ、解析について説明したが解析を習得するには200Pが必要になる為、所持している人は少ないと言ったが母親はその数少ない1人になる。
なんでも若い頃に父と出会い、すぐに探索者を引退して結婚することを決意した為、早々に上を目指すのを諦めて、ポイントをステータスに振らずにスキルを優先した経緯があるらしく、我が母は貴重な解析を所持しているのだ。
「実はデススパイダーを倒したことで称号が付いたから見て欲しい」
どんな爆弾を落とされるのか冷や冷やしていた母親は称号と聞き、内心でホッとしていた。が冷静に息子の口から出た言葉を振り返り唖然とする。
「しょ、称号を得たのか、颯夜」
うわ言のように呟いたのは父親だ。
称号、それは探索者界隈で密かに囁かれる噂のひとつ。なんせ、所持している者も公言する者もほとんどおらず、取得条件の難しさから探索者協会の上層部でのみ情報が共有されている秘匿情報だ。
下手に称号の情報を流せば、危険を顧みない探索者が挑戦し、死傷者が後を絶たないと考えられた為だ。
称号なんて未だかつて見たことがない母親は半信半疑で恐る恐る颯夜を解析する。
「っ!?ホントに…称号がある」
俺の言葉が本当だったことに驚愕し、両親は顔を見合わす。
「で称号がついてることで効果があったりするの?」
「ちょ、ちょっと待ってね」
母親は動揺で吃っていた。しかし、気合いを入れ直すように深呼吸すると真剣な眼差しを俺に向けてくる。
「ふう〜、称号って凄いのね…」
久しぶりに解析を使った為か、それとも負担に感じることでもあったのか額に薄っすらと汗をかいていた。
母親から告げられた称号の説明は以下だ。
下剋上
・レベル差20以上の相手を1人で倒した者に送られる称号。
《効果》格上相手に+補正(大)、格下相手に+補正(小)のステータス+補正。
征服者
・ダンジョンを攻略した者に送られる称号。
《効果》ダンジョン内のみステータスに+補正(中)。
英雄
・ダンジョン支配者を討伐した者に送られる称号。
《効果》全ステータスに+補正(中)。全状態異常に+補正(小)。カリスマ性に+補正(中)。
この結果を聞いて、自分でも気付かないうちに『俺の時代が来たようだな』と呟いていた。
+補正(小)=約1.2倍
+補正(中)=約1.5倍
+補正(大)=約2倍
+補正(特大)=約2.5倍
+補正(極)=約3倍
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