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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第3章 横跳び界隈

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89話︰開き直り



 廊下の隅で膝を抱えて、いじける美嘉隊長を唯衣が慰める。


「唯衣ちゃん酷いよ!私がおばあちゃんだなんて!」


『美嘉姉さん、ごめなさい』


「いやいや、謝る前にまず私が言ったおばあちゃんってとこ否定して!」


『美嘉姉さん、機嫌直して』


「だから!否定して!それとも私のこと、おばあちゃんだと認識してる!?」


 主に慰めるのは斬り捨てた張本人である唯衣の役目だ。


 俺ではとてもじゃないがこの会話に入っていく勇気が湧かない。


 唯衣が美嘉隊長を納得…………慰めている間、俺とモコ、紅は暇なので思い思いにサイドステップをしてみる。


「よっ!ほっ!よっ!ほっ!」


 モコと紅は扉の幅が問題で子犬と子猫化して、サイドステップというよりも行ったり来たりを繰り返しているので、ちょっと辛そうだがとても可愛く見える。


 それにしても実際にやってみるとこのダンジョンポイントを稼ぐ方法は地味過ぎないかと思う。


 だってね……、応援もないし成果もよくわからないし……、肉体よりも先に精神にきそうだ。


 慣れていないこともあり、集中出来ずにいるとふと背後に視線を感じたので振り返る。


 振り返った先には陽輝が会長室の扉の隙間からこちらを覗き、ほくそ笑んでいた。


 その顔が妙に達観しており、まるで自分の子供や孫を微笑ましく眺めているようで余計に気が散る。


「陽輝!おじいちゃんみたいだぞ!」


 俺のおじいちゃん発言に少し驚きを見せるも余裕の表情で返してくる。


「俺はおじいちゃんみたいじゃなくて、正真正銘のおじいちゃんなんだよ」


 2人して老兄妹だと素直に認められるとそれはそれでいつもと違うのでまたなんとも微妙だ。


「私は認めてないわよ!唯衣ちゃん!否定して!」

『まあまあ、美嘉姉さん落ち着いて』


 美嘉と唯衣の攻防は続く。


 颯夜の考える通り、陽輝はサイドステップを踏む颯夜達を見て、昔のことを思い出していた。


 サイドステップの記憶でよく覚えているのはなんと言っても一番最初の時、優斗に負けまいと無理して動けなくなった記憶だ。


 しみじみとそんなことを思い出していると、唯衣の説得がついに成功したのか美嘉がゆらゆらと立ち上がる。


「颯夜君、そんなサイドステップじゃ駄目よ。ううん、そんなのサイドステップじゃないわ!」


 どうやら何時まで経っても否定してくれない唯衣に見切りをつけて、全てをなかったことにして気持ちを切り替えたようだ。


「私が今から本当のサイドステップを見せてあげるわ!」


 美嘉隊長の圧に押されて、俺達は場所を空ける。


「見ててね!」


 その瞬間、俺の煩悩が閃く。


「いくわよ!」


 全神経を眼球へと集中させ、俺の見る世界がゆっくりと流れ出したら良かったのに……何も開眼することはなかった。


 美嘉隊長は一呼吸するとサイドステップを開始する。

 その速度はあまりの熟練度に美嘉隊長が2人に分身したかに見える。


 ……な、なんだと………速すぎて揺れがわからない……だと。


 まさに煩悩を粉々に打ち砕く美嘉隊長のサイドステップに舌を巻く。


 観測に失敗した衝撃に呆然としている俺を見た美嘉隊長が良い方向に勘違いしてくれたのは僥倖だ。


「ふふ〜ん、どう?」


 サイドステップを見せた美嘉隊長の態度は先程までの情けない姿ではなかった。


 腰に手を当て、澄ました表情で俺達を見る姿は自信に溢れる美嘉隊長が帰ってきたことを告げていた。


「さあ!始めるわよ!ミカーズブートキャンプを!」


 さっきまではミカーズブートステップって、言っていたのにそこには完全に開き直った姿があった。


 美嘉隊長の指示に従い、美嘉隊長、唯衣、俺+モコ、モコは俺の腕に抱えられている状態で並ぶ。


 向きは美嘉隊長が俺達を見れるように一人だけ、こちらを向いている。


 そして、唯衣は何故か両手をピースにしてサイドステップを開始した。


「唯衣、そのピースは何?」


『ん、カニさんステップを実践しているの』


 あれだけ陽輝を否定していたのにカニさんステップをするなんて、なんてハートの強い子に育ったのだろうか……。


クゥ〜ン(揺れすぎて酔いそう)


 ぐずり始めたモコを下ろすと唯衣から念話がくる。


『(颯夜、そういえば言ってなかったけど)』


 念話で話す唯衣は動きを止めることはない。


『(私は颯夜のアルティメットスキルだから私が得た経験値は全部、颯夜に還元されるのよ)』


「えっ!?」


「はいそこっ!モコちゃんを置いたらすぐにサイドステップに戻る!」


 完全に体育会系になってきた美嘉隊長の指示に従い、俺はサイドステップを再開する。


「(俺に唯衣の経験値が還元されるってどういうことだ?)」


『(言葉の通り、私が獲得した経験値は颯夜のものでもあるの)』


「いいわよ!2人とも!この調子で頑張って!」


 美嘉隊長の励ましを当たり前のように右から左に聞き流し、念話は続く。


「(つまり、俺の成長率は約2倍みたいな?)」


『(そうよ)』


 これまでにもいくつもの唯衣チートがあったがここに来て、成長チートが増えたことに颯夜は内心で歓喜する。


『(だからね、颯夜には誰よりも早く、カニさんステップをマスターしてもらうわ)』


 いや待って、カニさんステップじゃなくて、覚えたいのはサイドステップだから!


 しかも「誰よりも早く」って、俺はいったい誰と競ってるの!?



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