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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第3章 横跳び界隈

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88話︰隊長



 夜が明ける前、草臥くたびれた一人の中年男性が紙の束を持って、探索者協会会長室を訪れていた。


 ずばりウチの親父である。

 颯夜からの指示により、牛肉が食べたいと言い出した経緯から味の報告、飛騨地方の状況、今後はお店でどのように扱っていくかが事細かに書かれ、憤怒の魔王ミノタロスロードとの戦いについてはひと言、「偶然の事故」ということで片付けられている。


 その報告書を読んだ陽輝が会長室で親父に書き直させるのは最早、颯夜の中では既定路線だ。


 だがこれは俺から親父への親孝行である。

 なんせ憧れの会長と一緒に仕事が出来るのだ。


 親父としては本望だろう。

 ただし、陽輝の心情は顧みないものとする。

【颯夜の心日記より】


 昨日の夜はあれから美嘉さんが我が儘を言って、唯衣の部屋に泊まった。


 そして、何故かソラも便乗して一緒に泊まったらしい。羨ましいったらありゃしない。

【颯夜の心日記より】


 ダイニングで朝食を摂っている時に聞かされて、俺はモコの厳しい目をものともせず、すぐにソラ吸いを開始した。


 決して、美嘉さんや唯衣の残り香があるかもと思ったからではない。

 単に日課をこなしているだけだ。

 ただし、今日から始まった日課であることは告げておく。


 モコから向けられる厳しく、どんどん冷えていく視線に明日からは続けられそうにないが俺は今を満喫する。


 朝食も終わった頃、徹夜明けなのに清々しい顔の親父が秘密基地に帰ってきた。


「颯夜、会長が探索者協会に早く来るように言っていたぞ」


 どうやら予定通り、陽輝は徹夜だったみたいだな。ご愁傷様である。


「分かった。準備が出来たら行くよ」


 親父に返事をすると俺はソラ吸いを再開する。

 どうやらソラの頭の辺りからいい匂いがするのだ。嗅ぎ尽くしてやる。


……クゥ〜ン(……やめて)


 美嘉さんや唯衣の準備が整ったところで俺達は探索者協会会長室へと出向く。


 ソラは俺からやっと解放されると駆けて、縁側へと向かっていき、モコからの冷たい視線は鋭さを増していた。


「陽輝、おはよう」

『おはようございます』

「お兄ちゃん、おはよ!」


 秘密基地から会長室に直接入ると客用のソファーに座る。


「俺、カフェオレで」

ウォン(ホットミルク)

『私は紅茶をお願い』

「私はミルクティーをもらえるかしら」

ニャオン(ホットミルク)



 モコと紅がホットミルクでそれ以外の者は三者三様に飲み物を頼むと護衛さんがテキパキと動き出す。


「おい!お前ら!」


 朝から声を荒らげる陽輝の顔には疲れが見えたがそんなことで怯む俺達ではない。


「今がどういう状況か解ってるのか!?」


 今更なことを聞いてくるのでバッサリと斬りつける。


「親友が大変なことになって、一刻も早く何とかしてやりたいんだろ?俺達だって、解っているから来たんだ」


「ぐっ……」


 俺の発言に2人はそうだそうだと頷き、陽輝は二の句が告げられずにいると護衛さんが飲み物を運んでくる。


「まあいい、廊下に出た隣の部屋をダンジョン外にしておいたから詳しいことは美嘉に聞いてくれ」


「私、もっとミルクが多めが好みなんだけど」

ウォン(ちょっと温いわね)

「俺はもう少し甘めなのが好きだ」

ニャオン(ちょっと熱すぎる)

『私はこれで十分よ』


 俺達の好みを把握する為、一生懸命にメモを取る護衛さんはまるで執事のようであった。


「……お前ら飲んだら本当に行くんだよな?」


 俺達の傍若無人の振る舞いに最早、何を言っても無駄だなと思う陽輝であった。


 朝のティーブレイクを済ますと美嘉を先頭に廊下へと出る。


 ちなみに美嘉は特段、探索者協会内に詳しい訳ではないが気合いが入っている為、率先して先頭を歩いている。


「たぶん、この部屋ね」


 自信満々に予想を口にすると誰に気を使う訳でもなく、両開きの扉を開け放ち、部屋の中へと足を踏み出す。


「うん、間違いなくダンジョン外ね。それと自分のダンジョンじゃないから出入りは自由みたい」


 皆が気になっていた他ダンジョンマスターのダンジョンへの出入りは問題なかったので次はいよいよサイドステップだ。


「じゃあ、準備するわね〜」


 手慣れた様でアイテムボックスからヨガとかで使うマットを人数分取り出し、3枚を並べていく。


「それは?」


「衝撃を吸収するマットよ。これがあるのとないのでは大違いなのよ。なんせこれから何百万回、何千万回と繰り返すんですからね。うふふ」


 美嘉が初めて見せる暗く、不気味な笑みはこれから行う苦行の困難さを予感させた。


 準備が整ったところで髪をポニーテールに纏め上げた美嘉トレーナーが声を上げる。


「諸君!これよりミカーズブートステップを開始する!私のことは美嘉隊長と呼びなさい!」


「・・・」

『・・・』


 いきなりの謎ワードと謎のテンションに俺と唯衣はポカーンとする。


「諸君!パッションが足りてないぞ!」


 反応を示さない俺達に美嘉隊長から更なる激が飛ぶ。


「お、おおー!?」


 よく分からない俺はとりあえず、声を上げてみる。


『美嘉隊長、ジェネレーションギャップが凄いです』


 今日もカミソリのような鋭さを持つ、唯衣の言葉で美嘉隊長は膝から崩れ落ちた。



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