86話︰タイトル回収回
全然、ストックが貯まらないので書けたら平日に投下していきます。
「ま、まさかお兄ちゃん!颯夜君と唯衣ちゃんにあれをさせるつもりなの!?」
美嘉の放った言葉に俺と唯衣は底知れぬ不安を抱きながら陽輝から告げられる内容に固唾を飲んで待つ。
「2人には俺の出来たばかりのダンジョンでカニさんステップをしてもらう」
何を言っているんだ、こいつは…………。
「か、カニさんステップ?」
『・・・』
「カニさんステップだ!」
困惑する俺と唯衣を見て、陽輝は笑顔を深めて、そんな兄に美嘉は呆れていた。
「颯夜達はダンジョンポイントは知っているよな?」
「ああ、ダンジョンポイントを使って、ワンワン牧場を作ったりしたからな」
「ワンワン牧場?何それ!颯夜君、犬いっぱい飼ってるの?」
美嘉の琴線に触れたのか急遽参戦してきたので話が脱線する。
「このリビングの窓から出たところがワンワン牧場になってて、ソラやコタロウやトモヤの為の広場だよ」
俺の話を聞くなり、美嘉は窓に張り付きワンワン牧場を眺めるが既に夜とあって、何もいない。
「いないんですけど〜」
「夜はみんな部屋の中にいるから」
「つまんない〜」
美嘉のつまらない発言に反応したのはソラだ。
ソラは勢いよく尻尾を振りながら構ってもらおうと美嘉に近寄っていく。
美嘉も気晴らしなのかソラを撫でくり回し、超絶テクニックでソラは短時間のうちにあられもない姿にさせられる。
ちなみに清十郎は唯衣の部屋を出禁にされているので廊下の扉の前で待っているとかいないとか……。清十郎、部屋に帰れ。
「んん、話を続けるぞ」
咳払いでみんなの気を引き戻すと陽輝は饒舌に語り出す。
「ダンジョンポイントだが颯夜は増やし方を知っているか?」
「知ってる。魔石を吸収させたり、自然にある魔力を吸収することで増えるんだろ」
「う〜ん、残念60点だな」
「まあ、及第点と言ったところじゃないかしら」
俺の答えを聞いた陣内兄妹がニヤニヤと颯夜もまだまだねみたいな顔で見てくるのがちょっとウザい。
「颯夜が言った方法の他にもう一つダンジョンポイントを増やす方法があるんだな〜これが」
ウザッ!と思ったのは俺だけではなかったようで唯衣から切れ味鋭い回答が飛び出る。
『颯夜なら他のダンジョンコアを吸収すれば、内包していたダンジョンポイントがそのまま加算されるわ』
「「えっ!?」」
唯衣の目は貴方達のダンジョンコア吸収しても良いのよ?と口以上に語っていた。
そして、ダンジョンコアを吸収なんて出来ない陣内兄妹にとっては目から鱗だ。
「勘弁してくれ」
「ゆ、唯衣ちゃん、お姉ちゃんは信じてるからね?ね?」
ふざけた雰囲気は唯衣によって、バッサリと切り捨てられ陽輝の声音も冷静になる。
「颯夜が言った方法の他にダンジョン内に侵入者、要するに探索者が入ってくることで使用料が発生するんだ」
「ロイヤリティ?」
その英単語はなんだ?高校1年生では習わないぞというツッコミを入れる間もなく、唯衣が切り返す。
『探索者がダンジョン内に入ることで発生するなら使用料より入場料や入館料の方が適切なのでは?』
唯衣の謎に綺麗な発音のクイーンイングリッシュがよく響く。
「普通はそう思うかもしれないがこの使用料はダンジョン内に居続ける限り、断続的に時間毎でも発生するから俺達はこう呼ぶようにしている」
すみません。俺を置いて行かないで。ロイヤリティの日本語訳は?アトミック・ボムズアウェイ?エントランス・ヒィィ?
「さっき言っていたカニさんステップはこの使用料を逆手に取った凄く画期的で効率的な方法なのよ」
「美嘉が自慢げに話しているがこれからやる方法を見つけ出したのは優斗だからな?」
「いちいち言わないでよ!お兄ちゃん」
「なあ、唯衣。アトミック・ボムズアウェイってどういう意味だ?」
『颯夜の言うそれはプロレスの技ね』
完全に取り残された俺は孤立無援状態だ。
誰が教えて下さい!唯衣の部屋の中心で叫んでおく。
『それで使用料は理解したけど、具体的にはどうやってダンジョンポイントを効率的に稼ぐの?カニさんステップ?舐めてるの?』
「ぐっ!?」
唯衣は陽輝の言う強化方法が適正かどうか慎重に考察していた。
それは他ならぬ颯夜の為だ。颯夜の為にならないと判断すれば、唯衣は陽輝を詰るつもりである。
「まあ、落ち着け。カニさんステップって言ったのは半分冗談だ」
「お兄ちゃん、そこから先は私に言わせて!」
「なんでだよ」
「それはお兄ちゃん達に扱きに扱かれた被害者の会、代表だからよ!」
どうやら美嘉には一家言あるようだった。
陽輝は妹に押し負けたのか、ソファーで両腕を組み、説明出来るものなら説明してみろといった雰囲気で開き直る。
「さっき言ったカニさんステップ改め、私達はサイドステップと呼んでるわ」
「ああ〜、図書機能で御影優斗のステータスを見た時にそんなスキルがあったな」
「ええ、優斗さんはサイドステップの第一人者だから」
サイドステップの第一人者ってなんだよ。
「そして、当然だけど私もお兄ちゃんもサイドステップのスキルを持ってるわ」
「俺が黒腹との戦いで使った幻光蝶はサイドステップの発展型だ」
陽輝のひと言で俺は俄然興味が湧いてきた。
『なるほど、つまりはダンジョンとダンジョン外をサイドステップで行き来することでダンジョンポイントを荒稼ぎするのね』
「唯衣ちゃーーーん!!なんで言い当てちゃうのーーー!悪い子はめっ!だよ!」
満を持して、説明しようとしたのにサクッと言い当てられた美嘉の心情は如何ほどか……。
「俺達はこの使用料を最大限利用する方法でダンジョンポイントを稼ぐことを《マジョリティ&ロイヤリティ》と呼んでいる」
どよ〜んとした美嘉とほげぇ〜とした俺は置いてかれたまま、話は佳境へと進んでいく。
『マジョリティ&ロイヤリティ?』
「解りやすい例だと出来たばかりの俺のダンジョンかな……」
怪訝な表情を浮かべる唯衣を納得させるべく、陽輝の熱弁が始まる。
「俺がダンジョン化したのは探索者協会だ」
『そうね』
「探索者協会とあって毎日、多数の探索者達や職員が協会に入ったり出たりする」
中部探索者協会本部というだけあって、人の出入りはかなり多く、日によっては万に届く日もある。
「社会的な権力や優位性を持つ俺にみんなが毎日、ダンジョンポイントを貢いでくれるんだ」
『・・・』
「これってある意味、ダンジョンマスターの俺にみんな気付かないうちに推し活しているんだ」
『言いたい事がなんとなく、分かってきたわ』
「推し活は若者の約7割以上が実践する現代の新たな生活様式のひとつだ!だから、マジョリティ&ロイヤリティってね」
陽輝の説明を聞いた唯衣の反応は冷ややかだった。
『颯夜、アトミック・ボムズアウェイを試す良い機会よ』
俺はスマホで調べたアトミック・ボムズアウェイを陽輝に決めるべく、椅子の上に立つのであった。
陽輝︰ちょっと無理があったんじゃないか?
作者︰こじつけたのはお前だ!
陽輝︰なっ!?
作者︰じゃあな!
陽輝︰逃げやがった……。
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