85話︰歴史は繰り返す
『魔人化を治すのは不可能よ』
出された結論は非情なものだった。
誰よりも合理的で論理的な計算が出来る唯衣が出した答えだったがそれでも陽輝と美嘉にとっては酷であり、到底納得出来るものではない。
「唯衣ちゃん、どうしても無理なの?」
唯衣は美嘉に対して、ゆっくりと頷く。
『秘密基地の治療機能はあくまで治療するだけ……魔人化は魔力過浸透症の末に起こる現象であって、魔人になってしまっては怪我でも病気でもなく、細胞が変化した結果になってしまうので元に戻すことは出来ません』
「そ、そんな・・・」
「すまない、優斗・・・」
説明を聞いて、納得せざる負えない2人はそれぞれが親友の事を思い嘆く。
沈痛な2人を見ながら俺は唯衣に疑問をぶつける。
「唯衣、魔人化したら具体的に人はどう変わるんだ?」
素朴な疑問だがこれから戦うことも視野に入っている以上、大事なことだと思う。
『魔人化は病気ではなく変化した結果と言ったけど、人類の進化のひとつとも言えるの』
「「っ!?」」
俺は唯衣から前もってそんなような事を聞いていたのであまり驚きはないが2人には衝撃だったようだ。
『進化とは要は適応力の変化。私は御影優斗さんのダンジョンがどんな感じなのか見たことないから解らないけど、その彼が創ったダンジョンの影響を受けていることは間違いないと思うわ』
ダンジョンからの影響とは一体何なのか……。
「ダンジョンの影響を受けるっていうのは具体的にはどういう事なんだ?」
『例えば、極寒のダンジョンを支配するダンジョンマスターが魔人化した場合、氷属性やそれに準ずる特性を備えり、特化した魔人になるわ』
つまり、御影優斗の魔人化後の変化は……。
「優斗のダンジョンは名古屋城をベースにしているだけあって、攻城戦を強いられる厄介なダンジョンで尚且つ戦闘力に特化したモンスターで固めた和風なダンジョンだ」
「私は優斗さんのダンジョンに入ったのはかなり昔だからあれだけど、お兄ちゃん。ひょっとしてまだ合戦フィールドとか健在しているの?」
合戦フィールド!?なんじゃそりゃー!!
「あるはずだ。あれは俺と優斗が悪巫山戯で創った超絶最高難易度の傑作のひとつだからな」
陽輝は胸を張って答えるが自分の言っている意味を解っているのか…。
いや、まだこちらには唯衣のダンジョンコアハッキングと転移機能がある。
「ゆ、唯衣、一応聞いておくがダンジョンコアのハッキングとかダンジョン内転移は使えるよな?」
『恐らくだけど図書機能を使った時でもかなりの抵抗を受けたことを考えると難しいとしか言えないわ』
「マジか……」
唯衣の力は俺達にとって、最高のアドバンテージだったのにそれが使えないとなるとかなり不味いのではないか……。
『それについても方法がない訳ではないわ』
落ち込みと何か手はないかという思考から俯かせていた頭を上げて、唯衣を見る。
『ダンジョンコアをもっと取り込めば、抵抗を苦にすることなく出来るはず』
唯衣のゴリ押し発言で思わず、陽輝と美嘉さんを見遣る。
「えっ?ひょっとして、私のダンジョンコアに期待しているの?それはちょっと……」
「まさか今更返せなんて言わないよな?颯夜」
この2人のダンジョンコアを取り込むのが手っ取り早いが貴重な戦力であり、俺のクランメンバー(予定)だから弱体化させるのは得策とは言えないんだよな……と思い直す。
「言わないよ!それより唯衣、もし俺達が御影優斗と戦うと仮定して勝算はどれぐらいだと思う」
『御影優斗の強さが陣内会長と同等だと仮定するなら……』
「優斗は俺とは比べものにならないくらいに強いぞ」
また衝撃的な発言が飛び出し、俺達の出鼻は挫かれる。
「優斗はダンジョンマスターになったことで人類の成長限界と言われるレベル300を優に超えている」
「・・・」
『・・・』
「最後に会った時はレベル500をもうすぐ超えられそうなことを言っていたな」
当時の事を思い出しているのかしみじみと深く感じ入っている陽輝になんか腹が立つ。
「あと、あれは?お兄ちゃんと優斗さんが悪ノリして育てたとかいうモンスター」
「あ〜、そう言えば優斗とダンジョンに何かあった時の為にと言って、チート級のモンスターを育てたな……あれは楽しかった」
再び、 当時の事を思い出しているのかしみじみと深く感じ入っている陽輝になんか蹴りを入れたい。
『具体的に相手の強さを教えて下さい。それによっては颯夜の参加を拒否するので』
「えっ!?」
唯衣の過保護発言に俺は戸惑う。かつて、こんな唯衣はいただろうか……。いたかもしれないがちょっと記憶にないな。
この発言で現実世界に戻ってきた陽輝は真剣な眼差しで俺達を見定める。
確実に値踏みされているその視線に何だか緊張してしまう。
「優斗のことでどうやら俺は冷静さを欠いていたようだ。すまない。完全に見通しが甘かったとしか言わざる負えない」
つまり、俺達は陽輝のお眼鏡には敵わなかったということだ。
「だがあくまで現時点ではという話で方法ならある。しかも、短時間で強くなれるとっておきの方法がな」
そう言った陽輝の表情は今まで見たことがない程に笑顔で歪んでいた。
「ま、まさかお兄ちゃん!颯夜君と唯衣ちゃんにあれをさせるつもりなの!?」
美嘉の放った言葉に底知れぬ不安を抱くのであった。
ここ最近の寒さで数年ぶりに体調を崩してしまって、全然書けてないです。
なのでもうちょっと待ってね。
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