84話︰苦悩
会長室での話し合いで御影優斗がいる名古屋城に行くのは陽輝、俺、唯衣、モコ、美嘉、紅のメンバーで明日の朝からということになり、この場はお開きとなった。
俺達は不安を気取られないように秘密基地へと戻ってきたが世の中そんなに甘くない。
ウチの両親達と和気あいあいで夕食を共にして、それじゃあダンジョンまで送りますよと告げたにも関わらず、秘密基地に居座る女性がひとり。
台所やリビングでは両親に聞かれては不味い話なので慌てて、秘密基地内の唯衣の部屋に移動したが部屋の主よりも堂々と寛ぐ姿は支配者然としている者。
もうお分かりであろう陣内美嘉である。
余談だが美嘉を初めて見たソラと清十郎は一瞬で好感度を最高まで上げて懐いた。
清十郎なんて求婚を申し込んで紅に燃やされかけていたよ。
「それで2人は何を隠しているのかな〜?」
俺と唯衣は美嘉の口から放たれた隠し事は全てお見通しよ発言に借りてきた猫のようになっている。
「優斗さんのことでしょ?」
痺れを切らした美嘉が俺達に喋らそうと促した言葉だが残念ながら半分の50点である。
「(唯衣、どう思う?)」
『(美嘉姉さんなら話しても大丈夫だと思う)』
唯衣の言葉に背中を押される形で俺は話すことを決める。あれだけ秘密にしようと決めていたのに意外と話すのは早かったなと思いながら。
「美嘉さんにも話してなかったけど、この秘密基地の機能のひとつに図書機能ってのがあって、それを使えば御影優斗の今の状態が調べられる可能性がある」
「へぇ〜、凄い機能ね」
治療機能や転移機能、洗練された生活スペースまであるのに図書機能なんてものまであるなんて、どれだけ規格外なのよと内心で呟く。
「唯衣、ここでも図書機能は使用可能か?」
『秘密基地内だから問題ないわ』
美嘉は改めて俺達の能力に感心しているが図書機能のヤバさを真に理解はしていなかった。
こればかりは実際に使用した者にしか理解し難いと思うので仕方がない。
「美嘉さん、この事はくれぐれも他言無用でお願いします」
俺のお願いに美嘉は無言で頷いてくれる。
「それじゃあ唯衣、早速頼む」
『わかったわ。検索キーワードはどうする?』
「まず御影優斗、それと陽輝が言っていた混沌魔法と深淵魔法でやってみてくれ」
『了解』
俺達のやり取りを美嘉は興味深そうに眺めているとちょうどテーブルの中央、空中にディスプレイが浮かび上がる。
唯衣が気を使って、見やすくしてくれているのだ。
人物検索キーワード︰御影優斗 混沌魔法 深淵魔法
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『ん、やっぱり抵抗してきてる。・・・けど!』
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過去(今回で2回目)これまでにない抵抗に唯衣は苦戦するがダンジョンコア4つを有する俺達に出来ないことはない……はず。
『颯夜、表示するけどあまり時間がないかも』
唯衣の警告に俺は目を凝らして、見逃さないよう集中する。
御影 優斗 69歳 ダンジョンマスター
種族︰魔人
所有スキル︰気配察知 気配遮断 超回復 幸運 サイドステップ
エクストラスキル︰鑑定 アイテムボックス 覇気
魔闘術 暗黒剣術 混沌魔法 深淵魔法 幻影蝶 魔人化
居場所︰愛知県名古屋市 名古屋城の天守閣内。
『ぐっ、颯夜・・・もう保たない』
表示出来た時間は10秒にも満たなかったが確認したかったことは問題なく確認出来た。
正直に言って、最もあってほしくない状況になっていたが想定しておけば、最悪な結末を防げる可能性が上がる。
前もって、知れたことは大きい。
御影優斗の状態が確認出来た以上ここはもう一度、陽輝も含めて対策を立てた方が無難だと考える。
「・・・優斗さんも・・・やっぱり・・・」
自身も魔力過浸透症で苦しい思いを経験した美嘉は人一倍、御影優斗の苦しみが理解出来る。
自分は幸いにも魔人化する前に助けてもらえたが優斗はみっともない姿を見せまいと周囲の人達との関係を断ち、必死に耐えようとしたことは想像に難く、それでも魔人化してしまった苦悩を思うと胸が張り裂けそうだった。
「一度、陽輝を呼んで検討した方が良いと思う」
『そうね、不測の事態は極力避けた方が良いと思うわ』
普段に比べて、唯衣は少し疲れた様子だったが同意してくれる。
それは今の検索で御影優斗というダンジョンマスターの脅威を誰よりも感じたからだった。
「お疲れ様、唯衣ちゃん。とりあえず、お兄ちゃんを呼びましょう」
俺達の同意を得ると美嘉が兄の陽輝に連絡する。
俺は会長室に秘密基地の扉を顕現させて、陽輝が来るのを待つ。
やがて、険しい表情の陽輝がリビングへと入ってくる。
「優斗について、解ったことがあると聞いたが」
恐らくだが陽輝は陽輝で俺達が帰った後も親友を救う手立てを考えていたのだと思う。
良い案は思い付かなかったと見えるが……。
とりあえず、俺がソファーに座るように勧め、陽輝にも図書機能についてとそれを使って見た御影優斗の状態を説明する。
静かに説明を聞いていた陽輝は辛そうな表情を浮かべながら歯を食い縛り、親友を助けてやれなかった自身の不甲斐なさに黙っているしかなかった。
説明を終えた俺は唯衣に今回の件についての核心に触れる。
「唯衣、既に魔人化した御影優斗を治すことは可能だと思うか?」
俺の質問に唯衣は黙り、陽輝と美嘉は固唾を飲んで待つ。
その沈黙は重く、時間が流れるのが遅く感じた。
唯衣はみんなの期待に応えたいと御影優斗の改善方法を模索するが……。
『魔人化を治すのは不可能よ』
出された結論は非情なものだった。
第2章 完
この話で第2章は終わりとなります。
第3章ではまたまた主人公である颯夜が強くなっていきますのでお楽しみに!
また、第3章の投稿はストックを貯めたいのと『ダンコアチートする』の美嘉の活躍を書くでちょっとだけ間を空けたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
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