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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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83話︰不穏な空気



 目的地である名古屋城に着いたが自転車デートだという事実に気付いたおかげで疲れは感じなかった。

 なんだったら後8時間は漕いでいられる。


 俺達は自転車から降りると目の前にそびえ立つ城を見上げる。


「ここに人類史上初めて、ダンジョンマスターになったと言われる男、御影優斗がいるのか・・・」


『・・・颯夜、ここかなりヤバイかも』


クゥン(凄く嫌な感じ)


 唯衣やモコがそう感じるのも当たり前なのかもしれない。

 なぜなら城の上空には暗雲が辺り一面に満ちており、周囲の空に比べて全ての者を拒絶しているような雰囲気があった。

 が唯衣がここまで反応することにも俺は驚いていた。


 石垣や堀に囲まれた城は堅牢で威厳と歴史を感じさせ、俺には当時の人達の苦労が想像も出来ない。


 入り口に侵入禁止の看板がいくつも立てられ、それが一層来る者を拒んでいるようにも見える。


「とりあえず、転移設定して戻るか」


 俺は自身が強くなったとは思っているが先の陽輝と黒腹の戦いを見て、まだまだ上には上がいることを思い知らされた。


 そして、本当の強者が纏う空気をその身で覚えたが故にこの名古屋城に漂う空気は過去最高に危険だと本能が訴える。


『そうね・・・たぶん私達だけでは手に負えないわ』


グゥルル(ここに居たくない)


 唯衣とモコも同じ気持ちなのだろう。急かされるように俺達はその場で秘密基地を発動すると探索者協会の会長室へと戻る。


 会長室の中には出発した時のメンバーがまだ残っており、美嘉との雑談に花を咲かせていた。


「おかえりなさい。どうだった?」


 その言葉に俺達は素直な感想を語った。


「正直に言って、かなりヤバイと思う」


『私も颯夜と同感』


ウォン(私も)


 端的な感想だが美嘉には通じたらしく、顎に手を当てて考える素振りを見せる。

 その姿も絵になるななどと考えていると細かいダンジョンの設定をしていた陽輝が手を止めて、会話に入ってくる。


「颯夜達がかなりヤバイと感じたのなら恐らく優斗はもう人ではないのかもしれないな…」


 最後は悲痛な呟きだった。


「間もなく陽が暮れる。心残りだが今日は諦めよう」


 言葉とは裏腹に陽輝の拳はぎゅっと力強く握られていた。


「そうね。もし、人でなくなっていたら戦闘は避けられないかもしれないし、何よりここから先の時間帯は優斗さんの無双タイムね。そうなったら流石のお兄ちゃんでも手も足も出ない可能性があるわね」


「・・・ああ」


 陽輝の決断に同意したのは美嘉だが2人以外の俺を含めた者達には意味が分からなかった。


「優斗さんの無双タイムって、何ですか?」


 質問したのは夏輝。彼は片手で足りる程度だが御影優斗と対面したことがあった。


 夏輝の御影優斗に対する印象はフランクでお祖父ちゃんである陽輝とあまり変わらなかったと記憶していたが2人の実力にそこまでの差があるなんて思ってもいなかった。


 夏輝の質問に陽輝はゆっくりと答える。それは親友の実力や手の内を話すことに抵抗があったからだ。


「優斗は俺とは正反対な属性を持っている。俺が一時期、白の剣士と呼ばれていたことがあるが優斗は黒の剣士と呼ばれていた」


 俺はそう言えば、そんな話を聞いたことがあるなと思いながら続きに耳を傾ける。


「その当時は俺が白の装備で優斗が黒の装備を身につけていたせいで単なる揶揄だったんだが夜、陽が落ちてからの優斗の扱う魔法や実力を見た連中が恐れ慄き、黒の剣士の名が徐々に広まっていったんだ」


「師匠、その御影優斗さんが使う魔法は何ですか?」


 夜、陽が落ちてから威力を発揮する魔法なんて限られている。影と闇の魔法だ。

 そう思ったのは俺だけではないが予想は裏切られる。


「混沌魔法と深淵魔法だ」


「「「・・・」」」


「・・・えっ」


 皆の反応が面白かったのか陽輝は少しだけ微笑むがすぐに真顔へと戻り、説明に入る。


「混沌魔法は影と精神を司る魔法、深淵魔法は闇と重力を司る魔法。闇夜で使われては俺でも対処し切れない。そして、どちらの魔法も優斗以外には扱える奴はいないと思う」


「あっ!」


 そこで俺は思い付く。秘密基地の図書機能で御影優斗について調べられるのではと・・・。


「颯夜、どうかしたのか?」


「いや、何でもない」


「ふ〜ん」


 思わず上げてしまった声でみんなから不審がられてしまった。特に美嘉は女の堪なのか隠し事をしていることを見抜かれていると思う。


 だが図書機能についてはまだ教えるべきか判断しかねる。

 ましてや健士や夏輝、護衛さん達には秘密基地の事も話していないのだ。この場は何とか凌ぐしかない。


 幸い健士や夏輝からの質問や疑問が続き、みんなの意識はそちらに向けられている。


「(唯衣、御影優斗について図書機能で調べることは出来ると思うか?)」


『(たぶん出来ると思うけど、難しいかもしれないわ)』


「(その理由は?)」


『(御影優斗が魔人化していた場合、ダンジョンマスターとして、完全に適応してしまったと言えるからよ)』


「(魔人化がダンジョンに完全に適応した証になるのか?)」


『(ええ、魔力過浸透症は魔力が肉体を変異させるけど、何も無作為に変異させる訳ではないの)』


「(・・・)」


『(その環境に適応した最適な形への変異。所謂、進化と呼ばれるものと変わらないわ)』


「っ!?」


 必死に驚きを隠したが美嘉の隣にいる紅は気付いたようで一瞬、こちらに視線を向けてくるが俺にはあまり興味がなかったようで気にしてなさそうだ。


『(だから、もし完全に魔人化していたら颯夜の秘密基地の能力に抵抗される可能性が高いわ)』


 俺と唯衣の間に不穏な空気が流れた。



次回、第ニ章の最終話です。


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