81話︰断罪
眩い光が収まると陽輝の手からダンジョンコアが離れ、会長室の奥に浮いていた。
ダンジョンマスターになる瞬間をこの中で見たことがあるのは恐らく、現役ダンジョンマスターの美嘉とダンジョンマスターが身近にいた陽輝のみ。
全員がどれほどの衝撃体験になるのか、期待と不安を抱いていたと思うが結果から言えば、眩しかっただけだ。
「ダンジョンマスターになる時って、意外と地味なのよ」
あまりの呆気なさに誰も口を開かない中、美嘉だけが平静だった。経験者は語るだ。
「お、お前は!?陣内美嘉!?なぜお前がここにいる!?」
「「「っ!?」」」
手勢達は副会長の言葉に度肝を抜かれる。
これまで自身のダンジョンから出るに出られず、陽輝の妹や人類史上初めてのテイマーとして、名前だけは有名だったがその姿を見たことがある者はほんのひと握りの人間のみ。
手勢達は陣内美嘉が存在していたことに驚いたのだ。
探索者界隈で陣内美嘉は都市伝説級にレアキャラなのである。
「あら?随分な言い草ね、副会長・・・う〜ん、でもここは元って言った方がいいのかしら、お間抜けさん達」
陽輝も強気な物言いだったが美嘉も煽るような口調で押し掛けてきた連中に言い放つ。
それもそのはず、決定的な証拠はないが美嘉に刺客を送っていたのはここにいる元副会長達だと陣内兄妹は確信しているのだ。
新たに始まった美嘉と元副会長の舌戦の中でも陽輝は空中に指を走らせ、何かに取り組んでいる。
「そう言うことか!貴様、さては兄にダンジョンコアを譲ったな!」
見当違いな発言に美嘉や俺達は吹き出す。
「ぷっ」
「クスクス」
「な、何が可笑しい!貴様らぁ!」
馬鹿にされた笑いでプライドを傷つけられた男は茹でダコのように顔を真っ赤にして、怒るがもう一人が釘を刺す。
「今はそれよりも!陣内陽輝からダンジョンコアを奪うことが先決だ!行け!お前達!」
もう一人の元副会長の号令で手勢達が動き出そうとするがそれは叶わない。
「ど、どうしたお前達!高い金を払っているんだぞ!さっさと行け!」
「う、動けません」
「何っ!?」
手勢達が動けないのはもう解っていると思うが俺達(ほぼモコ)のシャドウバインドによるものだ。
「ホント、間抜けね」
再び、美嘉が呆れた様子で呟く。
「今ここには特級探索者クラスの人間が4人もいるのよ」
4人と言われて、俺は数える。
俺、唯衣、陽輝・・・後はモコかな。と思っていると美嘉が最後の一人は「私よ!私!」みたいな顔をしていた。
「颯夜、足止めサンキュー」
さっきまで空中を見つめて、作業していた陽輝は一段落ついたのか腕を組んで元副会長達の前に立っていた。
「さて、諸君。審問会を始めようか」
陽輝の言葉でソファーに座っていた俺達はノリで審問官の後ろに周り、護衛さんと健士、夏輝は置物から傍聴者と化す。
会長室はあたかもこれから逆転◯◯をプレイする雰囲気になった。
陽輝 「これより審問会を開始する!」
元副会A「何が審問会だ!ふざけるなぁ!」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「まずは手勢達。お前達からだ」
手勢A 「なっ!?俺達はただ金で雇われただけだ!」
手勢B 「そ、そうだ!俺達はまだ何もしていない!」
颯夜 「静粛に!」
美嘉 「審問官!発言をよろしいでしょうか!」
陽輝 「許可する」
美嘉 「はい!この者達は何もしていないなどと言っていますが私と隣にいる唯衣ちゃんをイヤらしい目で見てきました!」
手勢達 「なっ!?濡れ衣だ!異議ありっ!」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「本当かね?唯衣君」
唯衣 「はい、本当です。彼らの目つきといったらそれはもう粘っこくて、舐め回すように見てきました。その視線に私は・・・うう」
美嘉 「唯衣ちゃん!私が傍にいるから大丈夫よ」
手勢達 「嘘をつくな!俺達はそんな目で見ていない!」
手勢達 「異議ありっ!異議ありっ!」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「判決を言い渡す!有罪!!」
手勢達 「なっ!?ふ、ふざけるなぁ!俺達はただ…」
陽輝 「転移!」
手勢達は陽輝がさっき創ったばかりの探索者協会内の牢屋へと強制的に転移させられた。
彼らに待つのは陽輝からの厳しい処罰。
前座をサクッと終わらせた陽輝審問官は本日の大一番を迎える。
陽輝 「さて、審問会を再開する」
元副会A「貴様!部下達をどこへやった!」※1
元副会B「高が一介の会長風情で我らを裁くのか!調子に乗るなよ!」※2
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「美嘉、この者達の罪状を言ってやれ」
美嘉 「はい!この者達はさっきの者達同様に私達、女性陣をイヤらしい目つきで見てきました!」※3
元副会A「ちょっと顔が良いからと言って調子に乗るなよ!小娘!」※4
元副会B「自信過剰なのもいい加減にしろ!」※5
美嘉・唯衣「「はぁ!?」」
元副会A「ひぃ!?」
元副会B「ひぇっ!?」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「他には」
美嘉 「また私のダンジョンに何度も刺客を送り込んできました」※6
元副会A「しょ、証拠でもあるのか!」
紅 「(さっきの男達の中にダンジョンで見かけた奴がいた)」
モコ 「(雰囲気が完全に犯罪者だわ)」
元副会B「獣風情が何を言っている!」※7
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「なるほどな、ここまでで貴様らはすでに※7つの罪を重ねている。弁明はあるか?」
元副会A「すでに7つの罪だとぉ!?」
元副会B「捏造も大概にしろ!」※8
陽輝 「今の発言で※8つだな」
元副会A「なっ!?横暴過ぎるぞ!」
元副会B「異議ありだ!!」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「異議は認められない」
元副会A「なっ!?」
元副会B「そんなバカなぁ!?」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「それでは最後の審問を行う」
実に公平な審問会は最終局面を迎える。
陽輝 「お前達は俺の息子、冬輝と元副会長だった黒腹を嵌めたな?」
元副会A「っ!?お、憶測でものを言うな!」
元副会B「そうだ!証拠もなしに我らを疑うなど言語道断だ!」
陽輝 「証拠ならある」
元副会A「何っ!?」
陽輝 「黒腹が最期に歌ってくれたよ」
元副会A「ぐっ!?」
元副会B「おの裏切り者がぁ!」
颯夜 「静粛に!」
陽輝 「お前達に判決を告げるが最期に言い残すことはあるか?」
元副会A「俺は貴様なんぞ!認めないからな!」
元副会B「俺達を早く解放しろ!」
陽輝 「それが最期の言葉で良いんだな?」
威圧を全開にした陽輝を前にして、元副会長コンビは口をアウアウするだけで何も言えなくなる。
陽輝 「貴様らは死刑とする。転移」
煩かった元副会長コンビは牢屋へと送られ、会長室は静けさを取り戻したのであった。
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