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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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80話︰新たなるDM



 陽輝がダンジョンマスターになることを決意し、護衛さん達の働きで館内放送の準備が整った。


《あ〜、あ〜、職員及び協会内にいる探索者達、聞こえるか?》


 突然の館内放送に探索者協会内にいた者は静まり返る。


《探索者協会会長の陣内陽輝だ。今から俺はここにいる全員に重要事項を告げる。心して聞いてくれ》


 この時点で陽輝の放送に耳を傾ける者は三つの者達に別れた。


 ひとつ目はこれから陽輝が何を言うつもりなのか全く分からない者達。


 ふたつ目は闇ギルドの殲滅を終えたことでついに会長職を降りるのではと心配する者達。


 そして、みっつ目は虎視眈々と次なる会長の椅子や幹部の椅子を狙う為、陽輝の引退を期待する野心溢れる者達。


 しかし、陽輝の宣言はここにいる全ての者達の不安や期待を裏切る。


《俺はこれよりダンジョンマスターになる。そして、この探索者協会を俺のダンジョンに変える》


「「「っ!?」」」


《これは決定事項だ!だが文句がある奴は今すぐ会長室に来い!話ぐらいは聞いてやろう。以上だ!》


 この宣言を受けて、殆どの者が動けない中、すぐに立ち上がった者達がいた。

 それは陽輝の会長の椅子を狙っていた者達だ。


 彼らはこれ以上陽輝に力を持たれては困ると手勢を連れて、会長室へと押し掛けるのであった。



 放送を終えた陽輝は一旦、マイクのスイッチを切ると俺達に笑いながら告げてくる。


「今から俺の椅子を狙って、冬輝と黒腹を影から嵌めた奴らがくるぞ」


 そのひと言で俺達は陽輝の意図する事に気付かされる。


「今日、ここで全てにケリをつける」


 そう言った陽輝の顔は黒腹に挑む時と同じ顔をしていた。

 数分もしないうちにいくつもの足音や気配が近付いてくる。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


 乱暴に会長室の扉がノックされ、こちらの返事も待たずに勢いよく扉が開かれた。


「陣内会長!一体どういうつもりだ!」


 会長室へと飛び込んで来て、第一声を放つのはそこそこの貫禄は持つが第一線から退いて日が経つのだろう。  

 顎や身体に弛みが出ている男だった。


 その男に続くように数人の手勢を率いて来た、似たような弛んだ男も発言する。


「探索者協会はお前の私物ではないぞ!」


 この発言に同意するように手勢達も頷くが陽輝はより笑顔を深める。


「お前達は何を言っているんだ?」


 陽輝は男達の発言を前面から否定する。


「ここにある探索者協会は俺が創り、俺がまとめた組織だ。勘違いするな」


 風格に満ちた態度、言葉に誰もが黙らざる負えない。


「これまでは探索者達、強いてはこの地域を支える為に私情は極力挟まないよう心掛けていたつもりだったが、それを勘違いし始めた馬鹿達が増えては組織をまとめる者として、粛清するのも俺の務め」


 不味いと思ったのか最初に声を上げた男が反論する。


「な、何が粛清だ!貴様は何様のつもりなんだ!」


「俺が何様かと?お前は副会長でありながらそこまで耄碌したのか…いいだろう今一度、教えてやろう」


 陽輝の雰囲気はまさに嵐の前の静けさに似ていた。


「ダンジョンが地球に現れてから早55年、日本政府は辛うじて、その体裁を保ってはいるが内情ではダンジョンと探索者にはお手上げの状態が続いている」


 この時代、国家は存在しているが存在しているだけでダンジョンや探索者に関して、上手く御している国は実質的にない。


 原因は力を持ち過ぎた探索者達にある。


 探索者として、レベルを上げた人間に対抗するには必然的に同等以上の強さが求められる。

 ダンジョンが出来てからというもの格差が広がり、社会は力を持つ者が頂点に立つ、はっきりとしたピラミッド型社会を形成した。


 ピラミッドの頂点付近にいる強い力を持つ人物を束ね御するには更に強い力を持つ者か最低でも同格の人物が当然だが必要になる。


 この不文律を破れば、不満を感じた強い力を持つ探索者に蹂躙される可能性があるからだ。


 普通に考えて、自分の方が圧倒的に優れているのに劣る者に率先して、仕えようなどと思う者は少数派だろう。


 そして、日本は民主主義。個人の力よりも数の力が政治ではものを言うのは昔と変わらない。

 強い力を持つ者ほど、しがらみの多い政治などに関わろうとはしないし、自ら縛れようとなどとは思わない。


 結果として、どの国でも強い力を持つ探索者を持て余しているのだ。


「俺は国との取り引きでこの地域の探索者達を取りまとめている。政府に牙を剥く探索者達が出ないようにな」


「「(ゴクリッ)」」


「国からはその代わりに探索者協会会長の肩書きと特級探索者の特権を与えられて…な」


 始めから役者が違ったのだろう。言い返せる奴は一人もいなかった。


「・・・解るか?元からこの探索者協会というのは他の誰でもない、俺が居て始めて成り立っているんだ。俺の為に存在し、俺の為の箱庭。それが探索者協会だ」


 この時代、一癖も二癖もある探索者達をまとめるにはこのくらいの暴論が言えなくては務まらないのである。

 陽輝が言い終わる頃にはその身体から不穏な気配が立ち昇る。


 会長室に自ら足を運んでしまった者達はそこで自分達が陣内陽輝によって、嵌められたと気付くがすでに遅かった。


「異論はないようだな」


 駆け込んできた男達を見渡し、それだけ言うと陽輝はダンジョンコアを取り出す。


「新しい時代の幕開けだ」


 利き手じゃない方の手でダンジョンコアを掲げるとダンジョンコアが強い光を放ち、会長室は光で満たされた。



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