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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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79話︰懐かしき眺め



 無事に外へと出られることが確認できた唯衣と美嘉がリビングに戻ってくると何故かその後を両親とコタロウ、トモヤも一緒についてきた。

 ・・・お店はどうした?


 その両親はソファーに座る陽輝が視界に入るなり、素早く俺の後ろに周り小声で言うのである。


「(颯夜!会長が来てるなら教えなさいよ!)」

「(そうだぞ!まずは会長に父さん達を紹介してくれ!)」

ガウッ!(自分は隣のお姉さんで!)

ガウッ!(自分も!)


 言い終わると直立不動で今か今かと待つ両親と珍しく騒ぐコタロウ、トモヤに呆れながらも俺は簡単に紹介することにした。


「あ〜、ちょっといいか?陽輝」


バッシーン!!


「痛っ!?」

「(あんたっ!なに呼び捨てにしてるの!?)」

「ウチの馬鹿息子が大変失礼しました、陣内会長!」


 俺達の友情同盟を知らない両親は俺の頭を叩き、急ぎ謝罪をするが当の本人は微笑ましいものを見たと言わんばかりに笑顔だ。


「構いませんよ、颯夜とはそういう仲なんで」

「「っ!?」」


 ギョッ!とした顔で俺の後頭部を見つめる両親は「今度はいったい何をしでかしたんだ!?」という雰囲気を醸し出していたが客人の手前、口には出さずに黙っている。

 俺は叩かれた頭を擦りながら気怠く紹介に移る。


「え〜と、ウチの両親です」

「颯夜の父です!子供の頃から陣内会長に憧れておりました!もしよろしければ、握手をして貰えないでしょうか!」

「わ、私は颯夜の母です!出来れば、一緒に写真を・・・」


 マジでウチの両親が好きなアイドルを前にしたミーハーなファンと化しているんですけど…。


 颯夜は世代が違うから知らないが陣内陽輝、御影優斗は両親の世代からしたらまさに雲の上の存在として、扱われ見られていた。

 陽輝や優斗が成した数々の偉業や伝説は両親達が探索者になる前から現役時代にかけて、多く語られており、それは刷り込みに近い形で絶対的な存在として、記憶や意識に刻み込まれているのだ。


 両親の言葉を快く受け入れ、往年のスターは笑顔で握手や写真を撮っていく。

 その横ではコタロウとトモヤが美嘉に服従のポーズを取っており、嬉しそうに撫でられていた。


 ペットは飼い主に似るとは言うが・・・この2匹を見ていると間違いなく飼い主に似たんだなと思えてくる。


 スターとのふれあいが終わると渋る両親を力強くで店へと戻し、俺達は転移室から探索者協会の会長室へと移動する。


 会長室には説教の途中で休憩しているのか護衛さん達と健士と夏輝がソファーでお茶を飲んでいた。


「か、会長ぉ!?」

「じいちゃん!」「師匠ぉ!」


 この部屋の主の登場に全員が総立ちになる。陽輝は軽く手を上げて、宥めるが俺の発言で空気が一変する。


「あれ?もう説教は終わったの?」

「い、いえ!ちょっと休憩しているだけです!」


 俺の問い掛けに護衛さんは言い訳がましく、健士と夏輝は余計な事を言わないでと悲痛な表情で訴えてくる。

 雰囲気を読み解くと陽輝の問題が上がったことでそれどころではないみたいな空気になって、説教が頓挫していたのだろう。

 名探偵の俺には解る。


 説教すら完遂出来ない護衛さん達には失望させられた。非常に残念だ。


 そんな会長室も美嘉の登場で空気が更に激変する。


「っ!?」

「えっ!?美嘉姉ぇ?」

「やっほー!夏輝元気だった?健士君も久しぶり!」


 美嘉は挨拶を済ませるなり、窓に向かい外を眺める。


「わぁ〜!懐かしい眺め!あんなビル、前はなかったよね!」


 まさにその様子は子供が初めての絶景にはしゃぐ様に似ていて、みんながほっこりとした気持ちになる。

 美嘉自身、嬉しそうにしてはいるがその声には僅かな震えが混じっていた。

 兄の陽輝に至っては涙ぐんでいる。

 なんせ妹の美嘉にとっては約40年ぶりの眺めなのだ。

 感動で静かになったご主人様に紅が寄り添い、釣られるように唯衣とモコが美嘉を囲む。


 ガサツな男共ではなかなか出せない光景がそこにはあった。


「ごめんね、ちょっと感極まちゃった!」


 振り返り人差し指で軽く涙を拭い、てへぺろっとする仕草に俺達男共は軒並みノックダウンさせられる。

 涙は女の武器とはよく言ったものである。美嘉の涙は伝説級レジェンダリークラスの威力があった。


 気持ちも落ち着いたのか美嘉がソファーに座ると護衛さんと健士、夏輝が立ち上がり美嘉の後ろに立つ。

 空いたソファーに俺、唯衣、モコが陣取ると陽輝が力強く決意に満ちた声を出す。


「みんな聞いてくれ」


 今から何が起こるのか知らない護衛や健士、夏輝に向けた言葉だ。


「俺は今からダンジョンマスターになる」

「「「っ!?」」」

「「「・・・」」」

「そして、この探索者協会を丸ごと俺のダンジョンにする」


 この部屋にいる俺達以外の者にとっては青天の霹靂だろう。


「異論は認めない!いや、文句がある奴は力ずくでかかってきたら良い」

「・・・」


 ここにいる者は陽輝と黒腹の先の戦いを見ている者達だ。

 当然、己との実力差があることを弁えているので陽輝に挑むことが自殺行為に等しいことくらい理解しているのに敢えて、かかって来いと言う陽輝の悪辣さ。

 俺は嫌いじゃないけどね。


「文句はないみたいだな。では館内放送で通達する。マイクを用意してくれ」


 陽輝のひと言で護衛さん達が動き出し、俺は探索者協会内がどうなるのか楽しみで仕方なかった。



 一方で美嘉のダンジョンに取り残された護衛はというと・・・。


「みんなさん、なかなか戻って来ないな・・・」

ニャオン!(腹減ったぞ!)

ニャーニャー!(飯はまだか!)


 見た目と鳴き声のギャップが凄い従魔達に囲まれて、ご飯を催促されていた。


「は、はい!只今、準備します!」


 敬愛する美嘉の従魔達の為に彼の献身は続く。



彼、今日も残業ですね。お疲れ様です。


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