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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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78話︰心の叫び



「美嘉のお願いは問題なさそうだから次はさっき言っていた俺の寿命の代償を無くす方法について教えてくれるか」


 穏やかに告げてくる陽輝に対して、俺は「(ボケちゃダメだ!ボケちゃダメだ!ボケちゃダメだ!)」と自分に言い聞かせる。

 ここは溜めてからボケるんだ!俺!


『ダンジョンマスターになれば、寿命の代償は不老の効果によって上書きされてチャラになります』


 何故そうも簡単に言う?俺が溜めに溜めた間が無に帰したぞ!唯衣ちゃ〜ん!


「・・・なるほど」


 陽輝は俺の心境など知る由もなく、唯衣の答えに納得したのか手を顎に当てて、深く考える様子を見せる。


「そう言えば、お兄ちゃん。ここに来た時に最期の別れを言いに来たって、言ってたけど今度は何したの?寿命の代償って何?」


「・・・えっ、それはあれだ・・・」


 如何にも陽輝がこれまでも色々な無茶苦茶をしてきた言い様だがその通りなので本人は何も言い返せない。


『美嘉姉さん、この御仁は宿敵を倒す為に副作用のある若返り薬を服用したのです。そのせいで明日には寿命でこの世を去るのです』


 言い淀む陽輝を無視して、唯衣は告げ口を覚えた。


「えっ!?お兄ちゃん!何してるのよ!?」


「いや〜、そうでもしないと勝つのが難しくてな・・・つい」


「つい、じゃあないわよ!私を一人にするつもりなの!私にはもうお兄ちゃんしか肉親はいないのよ!なのに・・・」


 美嘉の叱責は心の叫びでもあった。ダンジョンマスターになってからというもの命を狙われ、親しい友人を巻き込むまいと敬遠し、会いたい人ともなかなか会えない日々を過ごしてきた。


 陽輝や夏輝、亡き父親は頻繁に会いに来てくれていたがそれでも寂しものは寂しかった。


 その寂しさを埋めるように従魔を増やし、自身が過ごすダンジョンマスターの部屋を充実させ、気を紛らわせてもふと考えるのは会えない友人達との楽しかった思い出。


 孤独じゃないと思える友人達との再会にも戦闘力に優れる陽輝の同伴があった時だけ。

 なのに兄の陽輝が亡くなってしまってはいくら颯夜の秘密基地の力でダンジョンの外に出られるようになったとしても本当の孤独になってしまうのではと美嘉は強い恐怖を感じていた。


「う、うう・・・」


「ごめん、美嘉」


『美嘉姉さん、これからは私もいます』


ワフン!ワフン!(別に私も会いに来てあげてもいいわよ)


 慰める唯衣とモコに嬉しさのあまり美嘉は抱き着く。

 俺はいつでも美嘉さんを受け止められるように腕を広げているのだがどうやら視界に入らないみたいだ。


「ありがとうね、唯衣ちゃん、モコちゃん」


 涙を拭うと美嘉は力強い眼差しで陽輝を見つめて、ストレートに言う。


「お兄ちゃん!私のダンジョンコアを譲るから早くダンジョンマスターになって!」


「いや、それは・・・」


 輪の中に戻るにはここしかないと思い、俺は口を開こうとするが…。


『美嘉姉さん、代わりのダンジョンコアなら颯夜が持ってます』


「そうなの!?」


 またもや唯衣におしゃべり泥棒される。まさか唯衣のヤツ、俺が美嘉さんにデレていたことを根に持っているのか…。


「颯夜君、お願いばかりして申し訳ないけど、どうかダンジョンコアを譲って下さい!」


 深々と頭を下げる美嘉は色気を使えば、颯夜ならいうことを聞いてくれると解っていたがそうはせずに誠実に情に訴えかけることにする。


「この馬鹿兄貴はホントにバカだけど、それでも私にとってはかけがえのない最後の肉親なの・・・だから」


「俺からも頼む!どうかダンジョンコアを譲って下さい!」


 妹だけに頭を下げさせる訳にはいかないと陽輝も深く頭を下げる。

 唯衣とモコは当然、譲るよねって目で俺を見ている。


「2人とも頭を上げて下さい。唯衣と話し合って、最初からダンジョンコアはあげるつもりだったんで畏まらないで下さい」


 美嘉と陽輝は俺の言葉で頭を上げるとその瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。


「颯夜君、譲ってくれてありがと」


「この恩は決して忘れない。それと今は返せるものがないから借りにしといてくれ、颯夜」


 友達とかの呼称を変更する時って、なんだか恥ずかしくないか?俺は恥ずかしい。そして、陽輝も恥ずかしいみたいで照れて、耳の先が紅く染まっていた。


「わかったけど、早速返して貰ってもいいか?」


「な、なんだ?」


 いきなりの返済要求に戦々恐々とした顔で陽輝は見てくる。


「そんな難しいことじゃない、・・・そのなんだあ・・・俺も陽輝って、呼び捨てにしてもいいか?」


 俺の発言が意外だったのか呆気に取られた顔をした後に陽輝は微笑みながら言う。


「いいぞ!よろしくな!颯夜!」


「こちらこそ、よろしく陽輝」


 この男同士の青臭い会話を女性陣は優しい目で見守っていた。

 男の友情が芽生えたところでアイテムボックスからダンジョンコアを出して、渡すと陽輝は一旦、自分のアイテムボックスにしまう。


「それでお兄ちゃんは何処をダンジョン化するの?」


「探索者協会本部だ」


 あっさりと答えた陽輝だったが驚く者はいなかった。

 俺と唯衣の当初の計画でも探索者協会を裏から掌握する算段だったので都合が良い。


「ならさっさと済ませるか。会長室には転移設定してあるからすぐだぞ」


「いや、この秘密基地を介すれば本当に外に出れるようになるのか、まずは確認したい」


 この後の予定は名古屋城ダンジョンに赴き、御影優斗の状態の確認、もしくは救出からの治療を行うことになるが親友の陽輝がいるのといないのとでは円滑に話し合いが出来るかどうかの対応に違いが生まれると予想出来る。

 もし、御影優斗が魔人化でもしてようものなら陽輝の力を頼らないと流石に危ういかもしれないのだ。


「・・・そうね、まず私が外にちゃんと出れるかどうか」


『では美嘉姉さん、外に案内しますね』


 唯衣に手を引かれて、歩く美嘉は本来の天真爛漫さを潜めて、期待と大きな不安を抱く、初な少女のようになっていた。


 最近ではそんな様子はめっきり見せなくなっていた妹を陽輝は久しぶりに見たなと感慨深く思う。


 やがて、「やったぁー!」という叫びが響き、問題がなかったことを知ると俺達の間にも安堵の表情が広がった。



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