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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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75話︰隠し味



「始めまして、陣内美嘉さん。取り込み中に悪いんだけどその魔力過浸透症治せるかもしれないけど、どうする?」


 俺の発言に反応した陣内陽輝と妹の美嘉さんが驚愕の表情を浮かべる。


「魔力過浸透症?・・・治せるかも?」


 陽輝のそれはまるで譫言うわごとのように呟かれ、それは本当なのかみたいな目で俺を見ていた。


「この症状が治るの、ぐぅっ!?」


「美嘉っ!?」


 美嘉も痛む胸を押さえつけながら俺を見ている。その目には信じたいけど、初対面の相手を簡単に信じてもいいのか分からないといった表情だった。


「本当に美嘉のこの症状を治せるのか?」


 陽輝も現実に戻ってきたが治せるなら治してやりたいけど、まだ半信半疑といった具合だ。


『完全に治せるとは保証は出来ないけど、今よりは確実に良くなると思うわ』


 俺が治す訳ではないので答えに窮しているとすかさず唯衣が答えてくれた。

 おかげで助かったが陽輝と美嘉の視線は完全に唯衣へと向く。


「お兄ちゃん、この2人は信用出来るの?」


 美嘉の質問に陽輝はこれまでのことを思い返しているのか、微妙な間を空けてからはっきりと言う。


「ああ、信用出来る」


 陽輝の目は真剣そのものだったが俺は内心で信用出来るなら間を空けるなと思っていた。


「お兄ちゃんがそう言うならお願いしてもいいかしら」


 さっきまでとは違い陣内美嘉は縋るような目を唯衣に向けていた。

 唯衣は彼女の覚悟と救いを受け止める。


『わかったわ。颯夜、秘密基地を出して』


「え、うん。わかった」


 唯衣に言われるまま、俺は秘密基地を発動するが治す為には秘密基地の存在を教える必要があったので陽輝と美嘉さんにひと言だけ告げておく。


「これから見ることは他言無用だ」


 2人がゆっくりと頷くのを確認してから出入りの承認をする。


「唯衣、治療にはどれくらいかかると思う?」


『う〜ん、30分で終わるかもしれないし、数カ月かかるかもしれない。どのみち、やってみないことには分からないわ』


 そうすると期間が長くなった場合、治療中は唯衣と2人きりになる訳だ。

 回復カプセルには裸で入る必要があるから俺と陽輝は入室出来なくなるのだよ。紳士諸君。


「不安なら従魔も連れていけるがどうする?」


 治療中、周りに知り合いが誰もいないのは心細いかなと思った俺なりの配慮だ。 


「それならこの子を連れて行くわ」


 苦しそうな表情をしながら選んだ従魔は陣内美嘉の最も傍にいた燃えるような真っ赤な色をした虎の従魔だ。


「他の従魔はいいのか?」


「他の子達はここの防衛があるから…」


 選ばれなかった従魔達はどこか悲しげだがダンジョンコアを無防備にする訳にはいかないことを理解しているようだった。


 話がまとまり、俺達と陽輝、美嘉とその従魔『くれない』が秘密基地へと入っていく。

 その光景を呆然と見るのは残された従魔達と護衛さんだった。


「あの〜、私もいるんですけど・・・」


 忘れ去られた護衛は家に帰ってからひっそりと枕を濡らしたらしい。



 秘密基地へと足を踏み入れた陽輝と美嘉は作戦室を見て、驚いていたが唯衣に先導され治療室へと入る。


『ここからは男子禁制よ』


 唯衣の注意に陽輝はどうして?と表情を浮かべていたが俺が腕を引っ張り治療室から連れ出していく。

 美嘉さんの従魔は問題ないだろうからスルーだ。


「治療する為に裸になる必要があるんだ」


 途中で説明すれば、陽輝は腑に落ちたのかそのまま俺の後についてくるのでリビングに通す。

 ソファーに座るように促し、俺はお茶の用意をする。母親が居てくれたら良かったのだが居ないものは仕方ない。


 全く慣れていない手際でお茶らしいものを作るとお盆に乗せて、モコと陽輝の前に置く。


グルゥ!?(わ、わたしの分も!?)


「こ、これは?」


「お茶だ!」


「この黒く浮いているのは何だ」


「お茶の隠し味だ!」


 モコは香りを楽しんでいるのだろう。頻りに俺が淹れたお茶を嗅いでいる。


 有無を言わせない俺に気圧され、陽輝はお茶らしきものに恐る恐る口をつけて咽る。


「げほっげほっ!ちょっと待てコーヒーの味が混じっているんだが!?」


「ブレンド茶だと思ってくれ」


 いけると思ったんだが水で溶いただけでは駄目だったか…。それと飲む前の心構えは必要だな。


 俺が淹れたコーヒー茶を一気に飲み干すと陽輝は真剣な表情を繕う。律儀なところもあるようだ。


 口の周りに溶けなかったコーヒーの粉がついているがそれは言うまい。


 モコはまだ香りを楽しでいるのか口をつけていない。相変わらず、風流な子だぜ!


「そう言えば、黒腹ビルに乗り込む前に言ったことを覚えているか?」


 はて何かあっただろうか?俺の覚えていない顔を見ると陽輝は溜息をついてから話し出す。


「後でお前達の事を教えてもらうと言っただろうが!」


 確かにそんなことを言っていたが俺は了承した覚えはない。


「俺は教えるなんて言っていないぞ」


「ふ〜、俺は明日には死ぬ身だ。冥土の土産に聞かせてくれてもいいんじゃないか?」


「あ〜、寿命の話ね。それ簡単に解決する方法があるんだけど」


「・・・はぁ?」


 実に良い反応だ。俺は陽輝の表情を見ながら自身で淹れたコーヒー茶を飲む。うん、不味い!


「ち、ちょっと待て・・・なぜそれを先に言わない?」


「その反応が見たかったからだけど」


 俺の発言を聞いて、陽輝はフルフルと身体を震わせて必殺技でも出しそうな雰囲気を醸し出す。


「お」


「お?」


「俺達の涙を返せぇー!!」


 陽輝の悲痛な叫びは俺の鼓膜を揺さぶった。おかげで耳がキーンとする。


 モコは自分のお茶をそ〜っと器用に前脚で陽輝の前に押し出す。

 優しいモコのことだからこれでも飲んで落ち着けと言っているんだろう。


『颯夜、だから言ったじゃない。後で怒られても知らないわよって』


 リビングに怒声が響き渡った後、困った子供を見るような顔の唯衣が入ってくる。


「だって!面白そうだったじゃん!」


『もう子供なんだから』


 そんなことを口では言っても何だかんだ唯衣も笑顔だったりする。

 俺達の他愛もない会話だがそれどころではない者がいる。


「そんな事より美嘉は!?」


 心配で仕方がない陽輝は立ち上がり、唯衣の返答を待つ。


『美嘉さんは・・・』


 唯衣はそこで言葉を止めると深刻そうな表情を浮かべるのであった。



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