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ダンジョンコアでマジョリティ&ロイヤリティ  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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74話︰邂逅



 探索者協会が管理するダンジョンビルの地下の地下へと続く隠し階段を下りるとそこには自然が溢れる光景が広がっていた。


 地上に存在する森と変わらぬ草木、ダンジョンの中にあるとは思えない湖。

 現実よりも澄み渡った大空。


 出迎えるように俺達を優しく撫でる風さえも自然過ぎてダンジョンの中だということを一瞬忘れかける。


「こっちです」


 俺達の足が止まったことに気付いた護衛が声をかけてくれて、その言葉で俺と唯衣は我に返る。

 再び歩き出した俺達を確認すると護衛は湖畔に佇む屋敷へと向かい進み始めた。


 モコもこのフィールドが気に入ったのか俺の肩から飛び降りると小型犬サイズから元のサイズに戻って、自分の脚で楽しそうに歩き始める。

 たぶん、ソラだったら物凄くはしゃいでいたと思う。


 歩を進め屋敷に近付くにつれて、その造形の素晴らしさが際立つ。

 湖の畔に優雅に建つ、その屋敷は自然との調和が取れており、まるでひとつの絵画の様。


 屋敷の前に着くと先頭を護衛から声を掛けて、陣内陽輝に代わる。


「この時間なら恐らく、美嘉は庭にいるだろう」


 自分に呟いたのか、俺達に呟いたのか分からないが玄関には向かわずに屋敷を回り込むように庭に向かって歩き出すので俺達も遅れないようについて行くがこの空間に入った時から感じていた沢山の気配に近付いている為、俺達には少し警戒心が生まれていた。


「美嘉、久しぶりだな」


 陣内陽輝の声は普段とは違い、とても優しくどこか申し訳なさそうな音色が含まれていた。


 その声は庭で従魔達に囲まれて、静かにロッキングチェアに座る女性を振り返らせる。


「お兄ちゃん、お、お兄ちゃん?」


 振り返った女性はロングワンピースドレスに身を包み、長い髪に緩めのウェーブがかかった大人の雰囲気が溢れ出す妙齢な物凄い美人だった。


 美嘉が振り返った瞬間、俺は絵画から飛び出てきた完璧と言える容姿に見惚れてしまう。


 それは唯衣に爪先を強く踏まれるまで見続けていた。


「その姿、どうしたの?それに後ろの人達は誰?」


 陽輝の若返りに疑問を持ちながらも誰?のひと言で陣内美嘉と思われる女性の近くにいた燃えるような真っ赤な虎の従魔が警戒する体勢になり、俺達にも緊張が伝わるのが解った。


 それに釣られて、他の虎型従魔達も寛ぐのを止めて、警戒を露わにする。


「落ち着け、美嘉。今日は報告と・・・最期の別れを告げに来た」


「えっ!?何を・・・ぐぅ」


 陽輝のいきなりな言葉で驚いたせいか、急に陣内美嘉は胸を押さえてうずくまる。


「美嘉っ!?」


 慌てて、兄の陽輝は妹に駆け寄るが俺達は相変わらず、陣内美嘉の従魔に警戒されていて近付くことが躊躇われるので仕方なく、その場で一歩も動くことなく、陽輝が妹を介抱する様子を見ることにするが唯衣が不意に呟く。


『(彼女、長年に渡って魔力を大量に取り込み過ぎた影響で魔力過浸透かじんとう症を発症しているみたいね)』


 初めて聞く、病名に聞き返してしまう。


「(魔力過浸透症?)」


『(魔力適応力が低い者が大量に魔力を取り込んだりすると起こる症状よ)』


 何だが説明してくれる唯衣は久しぶりに感じる。


「(深刻な症状なのか?)」


『(このまま症状が続けば、浸透した魔力で肉体が変異して、いずれ魔に堕ちるかもしれないわね)』


「(魔に堕ちるとどうなるんだ?)」


『(魔物化か魔人化してしまうわ)』

「っ!?」


 唯衣の答えに驚き、ビクッとした俺を護衛は不思議に思ったのか目を向けてくるがすぐに陣内兄妹に目を戻す。


『(彼女は魔力適応力が低いと言われる恐らく第一世代なのだと思う)』


「(会長が妹は体調が優れないって言ってたのはそのせいか…)」


『(間違いないと思う。ダンジョンマスターとして適応しきれていないのよ。それでこのダンジョンも不安定になっているわ)』


 傍から見たら陣内兄妹を黙って見つめる俺達。

 そんな俺達が困惑していると思ったのか護衛が状況の補足をしてくれる。


「陣内美嘉さんは数年前から急に体調を崩し始めて、最近では発作の回数が増えていると聞きます。会長はそんな美嘉さんを心配して、信頼出来るお二人に友人になって欲しいと願ったのだと思います」


「(ふ〜ん、つまり自分は明日には死ぬと思っているから大事な妹を託したかったって事か…)」


『(…そうなんでしょうね)』


 陣内陽輝は妹の美嘉が狙われている為、自分がいなくなった後でも妹を守ってくれる心強い味方を欲っしていた。


 普段は自分や護衛達に夏輝や健士がついているがまだ実力不足が否めなく、彼らだけでは不安があった為、闇ギルドの強襲作戦で見た唯衣の転移魔法や颯夜の戦闘力はこの上なく頼もしく見えたのだ。


「(唯衣、魔力過浸透症は治せるのか?)」


『(・・・確証はないけど、たぶん秘密基地の治療機能を使えば、今なら治せると思うわ)』


「(なら試してみるか)」


『(颯夜ならそうすると思ったわ)』


 症状を治すことを決めた俺達は陣内兄妹に向かってゆっくりと歩き出す。


 隣に立っていた護衛は一瞬、俺達を止めようと手が動いたが考えを躊躇った末、見届けるようにその場に留まる。


 モコと虎の従魔が睨み合っているがお互いに様子見をしているようで手は出さない。


 一歩一歩進むにつれて、陣内美嘉の虎型従魔達がご主人様を守る為か俺達を囲むように距離を取りつつ警戒してくる。


「すまんが挨拶なら後にしてくれ」


 俺達が近付いて来たことに気付いた陣内陽輝が釘を刺してくるが挨拶がしたい訳ではない。いや、人として挨拶は大事だ。


 何より今は彼女の症状を何とかする方が優先だと思い、陣内陽輝を無視して話を進める。


「始めまして、陣内美嘉さん。取り込み中に悪いんだけどその魔力過浸透症治せるかもしれないけど、どうする?」


 俺の発言に反応した陣内陽輝が驚愕の表情を浮かべる。


 まあ、治すのは唯衣なんだけど、唯衣の手柄は俺の手柄ってことで。えへ



黒腹は美嘉よりも数年遅く、ダンジョンマスターに成った為に魔力過浸透症をまだ発症していなかった。


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