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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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68話︰すっぱい



「さあ、始めようか!俺とお前の第2ラウンドだ!」


 黒腹の言葉に陣内は状況を整理する。


 黒腹は伝説級レジェンダリークラスのアイテム逆行の懐中時計カウンタークロックの効果で万全の状態に戻っている。

 その一方で自分は動くことさえ、難しいほどの疲労困憊した肉体。

 どれだけ心を奮い立たせようとも身体がついてこないのでは対処のしようがない。


 本当に寄る年波には嫌になる。だが諦める訳にもいかない。

 自分は目の前にいる男に天誅を加えることを目的に生きてきたのだ。

 それを成さないうちは死んでも死に切れないし、天国で待つ息子に会わす顔がない。


「くっくっく!どうした!陣内、苦しい顔をしているぞ!」


 陣内は黒腹の挑発に耐え、眉間の皺がより深くなるのが自身でも解るが今は少しでも体力を回復させる為にも耐えることが肝要だと考えるに至る。


 そんな陣内の様子を黒腹は見て確信する。陣内は魔力を使い果たしもう動けないと。

 ここから始まるのは一方的な蹂躙なのだと。


「そちらが来ないなら今度はこちらから行かせてもらうぞ!」


 相手が動けないことが解っているのにわざとらしく振る舞い、黒い笑顔を浮かべると言うより早いかハルバートを肩に担ぐように構え、勢いよく振り降ろす。


「避けれるものなら避けて見ろ!断絶波セヴァランスウェーブ!」


 黒腹の放った衝撃波は地面に広がる瓦礫を抉り砕きながら陣内に向かって飛んでいく。


「ぐぅっ!?」


 陣内は僅かな力を振り絞り、脚に力を込めて避けるがすぐに膝をついてしまう。


「はっはっは!探索者最高到達点が惨めだな!早く立ち上がれ!次行くぞ!断絶波セヴァランスウェーブ断絶波セヴァランスウェーブ!」


 黒腹はもて遊ぶように2連続で断絶波セヴァランスウェーブを放つ。


 迫る衝撃波を見て無理矢理に自身の脚に発破をかけて避けようとするが力の入らない上半身、特に剣を持たない左腕が避ける動きに流れて衝撃波を喰らってしまう。


「くっ!?」

「あっははは!当たったなぁ!次は足を切り落としてやろうか!」


 黒腹の視線の先にはギリギリで戦闘不能になるのを避けたものの膝を着いた状態で左腕を失い、右手で止血する陣内の姿があった。


「無様だな!最初の勢いは何処にいったんだ?!音に聞こえた雷神の名が泣いているぞ!」

「・・・どこまでも鬱陶しい奴め」

「あぁ?何だって!?聞こえねぇなぁ!」


 自分自身の力だけでケリをつけたいと願っていた陣内だがこのような状態になっては後がない。


 不本意だが復讐を果たすことから考えを切離し、まずは勝利することに気持ちを切り替える。

 そして矜持をかなぐり捨てて、もしもの時にと親友から渡されていたアイテムを使うことを決意する。


「先にアイテムに頼ったのは貴様の方だからな。文句を言うなよ」


 果たして、黒腹への言い訳だったのかそれとも自分に対する言い訳だったのか、小さくひと言囁くと陣内はアイテムボックスからエリクサーを取り出し、器用に親指を跳ね上がるようにして蓋を開けて、一気に飲み干す。


「うげぇ、相変わらずエリクサーは苦いのう」


 約五十年ぶりに飲むエリクサーの味は変わらず、当時の事を思い出す。


 陣内は約五十年前に手足を失い探索者生命を断たれる出来事があった。

 その時は絶望した自分を親友がエリクサーを使い、助けてくれた。

 そして、再び親友が渡してくれたエリクサーで今、絶望を希望に変える。


 まだ苦味が口内に残るが不敵に笑うと心の中で呟く。

「(この戦いが終わったら久しぶりに会いにいくか・・・)」


 飲み干した後、瓶を放り投げると急に陣内の身体から光が溢れ出す。


 陣内の体からは淡い赤色の光が溢れ出し、体全体を包み込むと次第に強い光を放ち、欠損した部位に光が集まっていき、一際は強く輝き、そして徐々に光は収まっていった。


 光が収まるとそこには魔力も全回復した五体満足で立つ陣内がいた。


「き、貴様!?エリクサーを使ったな!」

「それがどうかしたのか?先にアイテムに頼ったのはそっちだろ?」

「ぐぬぬっ!」


 ここまで来れば、正々堂々などもう関係ないとばかりに陣内は更にアイテムボックスから別の瓶を取り出すと蓋を開けて、一気に飲み干す。


「くぅ〜、すっぱい」

「貴様っ!今度は何を飲んだ!」


 この薬は親友の御影優斗からたまたま貰った物で使うことはないだろうと思って、アイテムボックスにずっと寝かせていた薬。

 まさか使う日がくるなんてと思わず苦笑いが浮かぶ。


「今に分かるさ」


 そう言うと陣内の身体から淡く青い光が溢れ出し、その見た目を変化させていく。

 白髪しらがで真っ白だった髪は若々しい黒色の髪になり、顔や首の目立つ皺は徐々に浅くなり消えていく。

 自身の手を見つめるとシワシワだった手は張りと潤いに溢れる手に変わっていく。


 身体は?と手で弄まさぐれば、こちらも張りがあり、老人特有の身体の重さや反応の遅さに節々の痛みが感じられない。


「わ、若返っただとぉ!?」


 黒腹の言う通り、陣内陽輝は自身が肉体的に最も優れていた歳の姿に変わる薬を服用した。


 姿が変わった陣内陽輝は若さ特有の万能感に溢れ、絶対的な自信をみなぎらせる。


「この感覚、この何でも出来そうな万能感!久しぶりだぜ!」


 ニカッと歯を見せて笑う陣内は肉体が若返ったことで精神にも影響を及ぼしているのかその言葉使いも昔に戻る。


「さっきは好き勝手言ってくれたが今度は俺が言ってやるよ」

「若返ったくらいで調子に乗るなよ!陣内!」


 昔の感覚が戻ったことでの高揚感か、もはや黒腹の言葉を聞いてもどうでもいいとさえ思えてくるがやられたらやり返す、昔からの性格は変わらない。


「さあ、始めようか!楽しい楽しい最終ラウンドだ!!」


 自身が有利だと確信していたのにそれがひっくり返えされた黒腹の表情に苦味しかなかった。



エリクサーの下りが気になる人は『ダンジョンコアを手に入れたのでチートする』を読んでみますか。

先に言っておきます。ありがとうございます!

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数年待って読み終わってからここにいる俺に死角はなかった。(うざ古参アピール)
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