67話︰結末は・・・
「おおぉぉぉ!!」
「うおぉぉぉ!!」
陣内と黒腹の攻防は激しさを増していき、颯夜がダンジョンコアを回収したことでダンジョン機能が失われ、ビルの崩壊は加速していった。
陣内の放った幾千の雷光が降り終わるとダンジョンビルは唯衣によって、閉じ込められていた者達共々、完全に瓦礫と化し崩壊していた。
辺りには土埃が舞い、近隣に住む住民達は最大級の危険を察知してか着の身着のまま、振り返ることもなく我先へと遠くへ逃げていく。
だがこの戦場にそんな些細な事を気を止める奴はいない。
土埃が収まり始めると大量の瓦礫の上には激しく息を切らす陣内陽輝と大盾と鎧がところどころ破損して血を流す黒腹の姿があった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「この程度で息が上がるとは寄る年波には勝てないようだなぁ!」
「ぬかせっ!」
2人ともすでに満身創痍に近い状態だが戦意はいささかも衰えていない。
それどころか黒腹に至ってはある確信を抱いていた。
「歳を取り過ぎたな陣内!お前ではもう俺は倒せない!」
「・・・」
「ここで貴様を殺し!その後はゆっくりと貴様の孫もその家族も皆殺しにして!俺を縛る過去の怨念を全て断ち切ってやるわ!」
黒腹は腹の奥に隠していたドス黒い感情を吐露する。
「そんなことさせぬ!!ここで貴様を討つ!」
黒腹の言葉は陣内に疲れすら忘れさせるほどの更なる激昂を沸き立てさせる。
今にも膝を着きそうだったことも忘れ、しっかりと仁王立ちすると大声を張り上げる。
「黒腹ぁ!俺が何も考えずにビルを壊したとでも思ったか!」
「なんだとっ!?」
「見ろ!ここには何がある?」
そういう陣内は人差し指を立てて、大空を差していた。陣内陽輝の雷魔法が本領を発揮するのは大空が広がっている開けた場所。
さっきまでの室内では本領を発揮出来ないでいたのだ。
「ま、まさかぁ!?き、貴様!?」
「我が雷神たる所以をその身に刻めぇ!黒腹ぁ!」
黒腹が陣内の戦術に気付いた時にはもう遅かった。
「神雷!!!」
「・・・っ!?」
陣内陽輝の最大魔法が天空より一筋の光となって、黒腹を差していた。
人間には到底無理だと思える制御不能なエネルギーは凄まじい音と激しい光を最後にあたりは静寂に包まれた。
からくも近隣住民達の全力での避難は報われる。
・・・・・・・・・!
・・・・・・!
・・・!
俺達は陣内と黒腹の戦いの様子を秘密基地の中から見ていた。
「これが・・・旧世代最高峰の戦いか」
『ええ』
ワフン(少しだけ見直したわ)
みんなの口数が少ないのは最上位の戦いに圧倒されたからだ。
俺自身もこの戦いから自分の未熟さと自惚れを自覚させられ、その悔しさから拳を強く握り締める。
『颯夜、貴方もいずれは・・・』
唯衣が落ち込む俺を見て、慰めの言葉を掛けようとするが俺が感じている悔しさはひと味違う。
「カッコ良すぎるだろうがぁ!陣内陽輝!何だよ!あの魔法発動前の台詞は!あれこそが俺が憧れる探索者最高到達点だよ!まさに厨二病の鑑だよ!」
『そ、颯夜?』
颯夜は過去最大に興奮していた。唯衣の困惑にも気付けないほどに…。
「唯衣!陣内陽輝の戦い、録画してないのか!?」
『データ収集の為にい、一応してあるわよ』
「マジかっ!?見してくれ!今すぐ!」
唯衣は再び困惑していた、まさか颯夜が2人の戦いにこんなにも喰い付くなんて・・・。
これが厨二病の男の子なのかと。
正直に言えば、唯衣は陣内達と自分達の地力の違いに颯夜がショックを受けると思っていた。
なのに蓋を開けてみれば、颯夜は目を輝かせ食い入るように録画した陣内陽輝の戦いを見ている。
しかもかなり興奮しているようで映像を見ながら「くぅ〜痺れる」とか「おお〜」とか子供のようにはしゃいでいる。
さっきまで無理していた表情が嘘みたいにいつも以上の颯夜になっていることに唯衣の心配など吹き飛び安堵する。
そして、お気に入りの場面を見つけたのか何度も何度も見返し、はしゃぐ颯夜に対して唯衣は杞憂だったなと思う。
もしくは先の戦いでの事を颯夜は乗り越えたのかもしれない。これが揺り返しでなければいいのだが…。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」
はしゃぎまくる颯夜とは別に陣内陽輝は死力を尽くした魔法に疲労困憊だった。
とっくに魔力は底を尽き、魂を削るように発動した魔法の反動で心の臓は軋み、手足はぶるぶると震える。
気を抜けば、今にでも横になってしまいそうだが気概だけが陣内陽輝を支えていた。
再び土埃で視界が悪い中、陣内は反省していた。
早期決着を狙ったのは自分自身なのでそれなりの消耗は予想していたがまさかここまで消耗するとも思っていなかった。
それは20年前の自分なら考えられないくらいの疲弊に年齢を自覚せずにはいられなかったのだ。
だが神雷が着弾し、土埃が晴れたクレーター後に残る黒焦げの黒腹だったものを見て、溜飲が下がる。
これで長年に渡り、積もりに積もらせた恨みが晴れると…。
今は亡き、息子の墓碑に良い報告が出来ると苦しい息使いの中で安堵の息をつく。
最早、立ち上がることすら困難な状態で陣内は息子の冥福を祈る。
風も陣内を祝福するように優しく吹き抜けていく。
パラ、パラ
ボロ、ボロ
消し炭になった黒腹だったものが風に吹かれ、その度に崩れていく。
「じ、じ・・・んな」
その声はクレーターの中心で消し炭となったものから響いた。
「おわらんぞ」
柔らかくそよぐ風がその不気味な声を陣内陽輝に届ける。
一度は消えたと思った火が再び燃え上がるように不気味な声は力強い発音に変わっていく。
「まだ、終わらんぞぉ!!」
消し炭を覆う炭が弾け、その中から傷だらけで何とか人の形を保つ黒腹が姿を現す。
その目は執念と怨念が入り混じり、諦めていない目をしていた。
そして、黒腹の懐から神雷によって黒焦げた懐中時計が地面に落ちて壊れると唐突に淡い光が黒腹を包む。
「ちっ!」
陣内には黒腹に起こった現象に心当たりがあったが舌打ちをするだけで身体は動かせない。
淡い光が止むと黒腹は陣内陽輝と戦う前の姿に戻る。
「陣内ぃ!!残念だったなぁ!!」
「・・・逆行の懐中時計か」
陣内の言う逆行の懐中時計は伝説級のアイテムで一度だけ刻を戻す効果がある。
「まさか、そんな物まで持っていたとは抜かったわ」
「あっははは、ダンジョンマスターである俺が簡単に倒せるはずがないだろうがぁ!」
「・・・全くしぶとい奴だ」
陣内の声には心底疲れた色か混じっていたが黒腹は逆に愉快そうに告げる。
「さあ、始めようか!俺とお前の第2ラウンドだ!」
やっぱり、元祖厨二病患者は違うね〜




