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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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65話︰それぞれの回想



 儂はこの時をどれほど待ち望んだことか…。


「久しいな、黒腹」


 目の前には息子冬輝のかたきであるだけでなく、孫の夏輝までをも手に掛けようとしたダンジョンマスターの黒腹がいる。


 この目に奴の姿が映った瞬間、積年の恨みがマグマのようにこみ上げ、自分自身を抑えられたのは僅かな時間のみだった。


 息子を殺されたあの時、邪魔が入り黒腹を仕留め切れなかった。

 その後は探索者協会の会長として責任ある立場のせいで黒腹の討伐をどれだけ切に願ってもなかなか実現出来なかったが今日、その宿願が叶う。


 そう思うだけでこの身に宿る深い深い怒りが業火となり、黒腹を見る世界が真っ赤に怒りの色に染まる。


「さあ、殺し合おう!あの時の続きだ」


「な、何をしているお前達!さっさとこいつらを片付けろぉ!!」


 ダンジョンマスター黒腹の言葉すら耳に入らないくらい陣内陽輝の精神はその身体に流れる血は沸騰していた。

 当然、唯衣が行った転移など気にならないほどに爆発寸前だった。


 陣内陽輝がダンジョンマスター黒腹と最後に会ったのはおよそ25年前。

 その時もこのダンジョンビルだった。

 正確には当時、このビルはまだ探索者協会支部であり、黒腹は陣内陽輝の部下として探索者協会の副会長の席に着く1人であったのだ。


 だが陣内陽輝の絶対的な力に憧れ、思いがけずその気持ちが裏返った黒腹は憧れの人を超える為に純粋な力への欲求と権力欲と嫉妬心に取り憑かれる。


 そして、タイミングが悪いことに陣内陽輝の息子冬輝がダンジョンを攻略し、ダンジョンコアを持ち帰ったことで黒腹は力と権力と自尊心全てを満たす方法を思いついてしまう…。


 その方法は至極簡単だった。冬輝を殺し、ダンジョンコアを奪って自身がダンジョンマスターになる。


 当時、探索者界隈で最強と呼ばれていた陣内陽輝だが双璧を成すもう1人の最強と名高い人物がいた。

 陽輝と共に実力を高め合い、そしてダンジョンマスターになった御影優斗だ。

 ダンジョンマスターになった御影優斗の実力と影響力は陣内陽輝を超えており、探索者達からは畏怖と畏敬を集めていた。

 黒腹はそんな御影優斗を参考にしたのだ。


 そして、陣内陽輝の会長の椅子を影から狙う探索者協会有力者と手を組み、ダンジョン攻略を祝うと称して開いたパーティーで冬輝のパーティーメンバーをそそのかし誑かし、冬輝を陥れ殺してダンジョンコアを奪った。





 陣内陽輝には目に入れても痛くない程に可愛がっていた1人息子がいた。


 息子の名は陣内じんない冬輝ふゆき


 寒い冬の朝日に照らされながら生まれたことで陽輝とその妻が決めた名前だった。


 冬輝は生まれた時からスキルを複数所持しており、その事実を知った両親や周りの人々から冬輝の将来は嘱望されていた。

 その期待は大きかったが冬輝は期待に答えるように幼少の頃からその才能の一端を垣間見せる。


 冬輝が3才になった頃、妻には早すぎると注意されたが陽輝はものは試しにと遊びの一環で剣の素振りを教えたことがある。


 普通は3才に棒切れなど上手く振れるはずもないのに冬輝は父親の素振りを数回見ただけで同じように振れるようになってしまう。

 その場を見ていた妻もこれには絶句するしかなかった。


 冬輝が6才になる頃、陣内陽輝は将来を見据えて、すでにダンジョンマスターになっていた親友の御影優斗の元で冬輝を本格的に鍛え始める。


 そこでも冬輝の戦闘センスは乾いたスポンジが水を吸うが如く、異常な成長速度は御影優斗を多いに驚かせたという。


 世界が混迷を極めたフェイズ2期時代にみっちりと御影優斗のダンジョンで鍛え上げられた冬輝は10代半ばでサイドステップの名手として、陽輝と優斗と肩を並べるほどにまで成長した。


 今では解明されているが陣内冬輝はダンジョン第2世代と言われるダンジョンが出来て魔力に満たされた世界に適応を始めた世代の先駆けだったと言われている。


 颯夜も第2世代であり、個人差はあるが第1世代よりも魔力が溢れた世界に適性が高いのがこの世代の特徴だということが判明している。


 その確たる証拠がステータス値になる。

 第1世代の特徴はレベルとスキルしか表示されないステータスに対して、第2世代はレベルとスキルの他に各種ステータス値までが表示され、自力でのスキル修得率が高い特徴がある。


 そういう背景もあり、陣内冬輝は世代を代表するエースへと頭角を現していくのに時間は掛からなった。


 そんな自慢の息子を晴れの舞台で殺された陣内陽輝の胸中はどれだけ深かっただろうか、想像に難くない。



 黒腹はそんな自身が仇敵となる相手と誰の仕業か解らないが転移させられ、陣内陽輝と2人きりにされたことで困惑を超えて、狼狽していた。



「儂がこの時をどれほど待ったと思う黒腹よ」


 予期せぬ事態に直面し、動揺と混乱が入り交じる黒腹は陣内の言葉に答えられない。

 裏を返せばそれは罪の意識があり、自分がしたことの重大さを理解し相手の激情が伝わってくるからこそ、迂闊には口に出せないのだ。


「楽に死ねると思うなよ、黒腹。簡単には地獄へは行かせぬからな!」



次回、バチバチです。

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