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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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64/70

64話︰主人公です



 唐突に唯衣から念話がくる。


『(颯夜、私もこれから1人を連れて転移するからその後は「あれ」を使ってね)』


 それだけ言うと唯衣も転移で消えていった。取り残された俺とテイマーと思われる男は無言で見つめ合っていた。


「お前達はいったい何者だ?」


 最近、どこかで聞いたようなフレーズだ。


「さっきの女の子の言葉を聞いていなかったのか?死に逝く運命のお前に言ったところで無駄だろ」

「・・・ちっ!」


 俺は二番煎じの台詞を放つとアイテムボックスから暗黒の大鎌を取り出して王威を発動する。

 そして、ここぞとばかりに主人公のライバルっぽい台詞を言う。


「さあ、見せてもらおうか。貴様の最期を」


 俺の台詞と王威にビビったのか男は咄嗟に距離を取り、その額には汗がうつすらと浮かんでいた。


「(いきなり威圧感が増した!?あの禍々しい不気味な武器の効果か!?)」


 なかなか勘の鋭い男は冷静に颯夜を解析アナライズと鑑定をするが颯夜自身もその身につけた装備も鑑定を通さない。


「(かなり高位な認識阻害か偽装系スキルを所持しているのか・・・だとしたら暗殺系の職業の可能性が高い。なら俺との相性は悪くない!)」


 颯夜という存在を自身の経験から看破したと思い込んだ男は饒舌になっていく。


「どんな小細工か知らんが!最期になるのは貴様の方だ!従魔転移!来い!お前達」


 男が従魔転移と呼び掛けると俺から守るように従魔が3匹転移してくる。


 俺はそんなことも出来るのかと感心していた。


 転移してきた従魔のうち、男の正面を守る従魔は熊のモンスター、右側にはアナコンダのような蛇のモンスターがそして、男の伸ばした腕にぶら下がるのは蝙蝠のモンスターと種類は様々だ。


「俺は他の幹部連中と違って、ボスから認められた特別な幹部なんだよ!」


 まるで従魔を見せびらかすことに喜びを感じているのか、男の顔には余裕の表情が窺えた。


「見ろ、従魔こいつらがボスから授かった俺だけの力だ!そして、これまで従魔こいつらを相手にして生き残った奴はいない!」


 自信たっぷりな男は調子が上がってきたのか更にベラベラと喋り出す。


「お前の職業は暗殺系なんだろ?言わなくても解ってるぜ!その見た目、話し方、阻害系スキル、解析や鑑定が通じないのが何よりの証拠だ!暗殺系は確かに脅威だが対策さえ、してしまえばどうとでもなる!だから俺はこの3匹を呼んだんだ!」


 そう言う男は自分の従魔を自慢するように腕を広げる。自慢だと言われた従魔達も誇らしげに胸を張る。蛇の胸がどこにあるかは知らないが…。


「冥土の土産に教えてやる!」


 ボスの部屋はもう男の1人舞台と化していく。


「熊の嗅覚は犬の10倍以上と言われ、お前が何処に逃げようとこの残酷熊クルーエルベアからは逃れることは出来ない!」


 残酷熊クルーエルベアは自己紹介のつもりなのか後ろ足で立つと前足を広げて、吠える。


グゥルゥア!


 男はクルーエルベアの紹介に満足すると次は蛇のモンスター説明に移る。


「知ってるか?蛇にはピット器官が備わっていて、熱を感知することが出来る。つまり、お前が何処に隠れようがこの探知蛇サーチスネークを騙すことは出来ない!」


 探知蛇サーチスネークは綺麗な蜷局とぐろを巻くと舌を素早く出し入れし、威嚇音を出す。


シャァー!


 これまた男は満足すると最後の従魔、蝙蝠のモンスターの説明をする。


「蝙蝠の超音波は障害物に反射して戻ってくる反響音を捉え、距離や方向を把握することが出来る!更にこの念話蝙蝠テレパシーバットは仲間と意識を共有することが可能だ。つまり、お前の動きは俺達には筒抜けになる!」


 念話蝙蝠テレパシーバットは男の腕にぶら下がったまま、翼をバサバサする。


「ボスから授かったこのテイムの力で今まで俺に傷をつけれた奴はいない!そいつらと同じようにお前も俺の従魔の餌にしてやるよ!」


 相手の喋りに圧倒された俺は明らかに不利な形勢だったが唯衣と約束した手前、引く訳にはいかない。


「貴様はいったいどれだけ罪のない人達を殺してきたんだ」

「はん!そんなもの数え切れないくらいに決まってんだろうが!お前もこのサーチスネークで締め上げて、全身の骨をバキバキに折って、クルーエルベアの爪でズタズタにしてやるよ!このダンジョンビルに最近、忍び込んだ女探索者のようにな!」


 俺が言ったことに対して、まさに倍返しで返してくるが本当の悪人のようなので心のどこかで正直ホッとしている自分がいた。

 こんなクズを生かしておけば、被害者が増える。

 ここでこいつを殺ることが世の為になると自分に言い聞かせる。


 そうすると自身の心が凍ったように冷たくなっていくのが解った。


 氷のような静けさを保ったまま、この男の話に付き合うのはもう終わりと自分に言い聞かせ、指にしている支配の指輪ルーラーリングかざして、冷徹に奥義部屋発動の言葉を紡ぐ。


「我が創造する世界で死に怯え絶望に狂え、広大無辺こうだいむへん混沌宇宙カオスディアスティマ


「・・・っ!?・・・っ!?」


 相手の男は何か喚いているが最早、俺の耳には入らない。

 支配の指輪ルーラーリングから放たれる一筋の漆黒はボスの部屋の天井に当たると無数の粒となり、漆黒が降り注ぐように一瞬で漆黒の空間を創り出す。

 そこはさっきまで居たボスの部屋ではない。


 俺のこの新しい奥義『混沌宇宙カオスディアスティマ』は秘密基地内に創った出入り口のない特別な部屋であり、演出的にボス部屋を創り変えたように思ったかもしれないが実は部屋自体を転移させたのだ。

 

 そして、この奥義部屋は他の秘密基地内にある部屋とは大きく違う点がある。

 それは部屋に入った者に制限条件を付与する設定がされている。

(ただし、この部屋の支配者である颯夜は除く)


 颯夜が付与した制限条件は2つ。

 ひとつはレベルが半減すること。

 ふたつめは魔法の使用が不可能になること。


 本当は他にも制限をつけたかったが今の颯夜の実力とダンジョンコアの数ではこれが最大だった。


 そもそも、そんなことがなんで可能だったかと言うと秘密は支配の指輪ルーラーリングに隠されている。(後書きにも記載)

 支配の指輪ルーラーリングの効果の一つ、空間支配に隠されていた特殊効果。


 支配領域のルール設定。


 この効果と秘密基地の能力を掛け合わせて、創ったのが俺の完全支配領域『混沌宇宙カオスディアスティマ』だ。


 ここでは俺が支配者であり、俺がルール。この支配領域に入った者は誰も逆らえず、誰も抗えなくなる。(颯夜の中ではそうなる予定)


 男も従魔も異変に気付いたのかさっきまでの勢いは完全に消えて、意気消沈していた。


「・・・逝け。死毒雲デスクラウド


 この状況、今の心境では流石に俺も巫山戯る気にはならず毒魔法を使って、ひと息に片付ける。


 男と従魔は毒の雲に巻き込まれ、苦しむ時もなく静かに息を引き取った。


 奥義を解除して、ひとり残された俺はゆっくりと目を瞑り、黙礼する。


 その心情は颯夜だけにしか解らない。


 どれだけの時間を黙礼していたのか突然、ダンジョンビルが轟音と激しい揺れに見舞われる。


ゴゴゴォォオ!!


 その揺れは俺のいる部屋にも迫っていた。



本作、35話登場

支配者の指輪ルーラーリング 伝説級レジェンダリークラス

《効果》王威、空間支配。全能力に+150%の補正。配下の能力を高める。

※王威︰支配者の威厳を身に纏う。レベル差が大きいほど、相手が萎縮する。

※空間支配︰領域内を把握することが出来る。???(支配領域のルールを設定できる。)

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