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全主人公中で最強五指に入りたいダンジョンコア持ちアイテム士の無双界隈  作者: くろのわーる
第2章 夏休み界隈

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59話︰ワシャワシャ



「待たせたのう」


 俺と唯衣が真剣に見つめ合っていると陣内会長が戻ってきた。

 怪訝な表情を浮かべながら俺と唯衣の機微を感じとったのかそれ以上は余計なことを言わない。


 唯衣は芯の強い眼差しで俺の瞳を見つめている。

 さっきとは違い、俺も覚悟を示すように唯衣の瞳を見つめ返す。


 やがて、唯衣は俺の説得は無理だと観念したのか深く息を吐くと俺の胸に顔をうずめるようにして抱き着いてくる。


『颯夜の覚悟はわかったわ。でも絶対に無理だけはしないでね』

「わかった。約束する」


 それだけ言うと背中に手を回して、力強くギュッと抱き返す。


「・・・もういいか?」


 俺と唯衣が抱き合う中、声を掛けるのは躊躇われたことだろう。その声に呆れが混じっていることから明らかだった。

 今は闇ギルドに踏み込んでいる最中であり、いつ戦闘になってもおかしくないこと考えれば、陣内会長の態度は正しく、我慢した方だ。


 俺と唯衣が身体を離すと淋しかったのかモコがくっついてくるのでワシャワシャする。


「それでさっきは夏輝がいたから深く聞かなかったがお主らはいったい何者だ?」


 当然の疑問だろう。

 年齢にそぐわない戦闘力。

 特殊技能ユニークスキルと思われる転移の仕業。

 強力過ぎる従魔の使役と強力な装備。


 他にも隠していることがあるが長い探索者人生において、海千山千の探索者達を見てきた陣内陽輝でも颯夜と唯衣の行動やその能力は常軌を逸していると感じずにはいられない。

 いっそのこと、未来からやって来た未来人だと言われた方が納得出来る。


 それくらい、若き日に御影優斗と共にダンジョンコアでチートした陣内陽輝だからこそ、理解できる強さと異常さだった。


「俺達はちょっとだけ特殊な能力がある特級探索者だ」

「それで納得できるはずがなかろう」


 声のトーンが落ち、不満と疑念が混じる返事が返ってくる。

 これでは流石に納得してくれないかと思うがこれ以上はまだ教える気がないのでこの話はこれでおしまいだ。


「悪いが今はこれ以上、教える気がない」


 今は話し合う意思がないことが伝わったのか、はたまた目的を思い出したのか陣内会長は引き下がる。


「わかった。これが終わったら少し時間もらうぞ」


 どうやら納得もしてなければ、終わらせる気もないようだ。


「はいはい。唯衣、このビルダンジョンには何人がいる?」

 

 闇ギルド攻略が終わっても面倒くさいそうだと溜息が出そうになる。


『ダンジョンマスターが一人と使役されていると思われるモンスターが何体かと人間は約300人ってところね』


「うむ、そこまで分かるのか・・・」


 唯衣の報告を聞き、唸りながらひとりでぶつぶつ言っている陣内会長に問う。


「爺さん、戦闘員を閉じ込めてあるがどうする?」

「そういえば、そんな事を話していたな」


 陣内会長は顎に手をやり、しばし考えると探索者協会の最高責任者らしく冷徹な判断を下す。


「ここから閉じ込めた奴らを皆殺しにすることは出来るか?」


 いきなりとんでもないことを言う爺さんだ。驚く俺をよそに唯衣は淡々と答える。


『出来ないことはないけど、無駄に力を使うし時間が掛かるから嫌よ』

「そうか…。なら夏輝を転移したように儂らを任意の場所に転移することは可能か?」

『それくらいならこのダンジョンビル内に限るけど可能よ』


 可能と聞いて、陣内陽輝は内心で唯衣の力に改めて戦慄していた。


「ではダンジョンマスターの黒腹がいる部屋に転移させてくれ」


 唯衣は本当にいいのかと確認するように俺を見るので頷いておく。


『ダンジョンマスターの他に5人と使役されているモンスターも近くの部屋にいるので十分な注意が必要よ』


 唯衣の説明を聞いただけで陣内陽輝は集まっている人物達に目星をつける。


「恐らく、幹部連中の奴らが集まっているのだろう。都合がいい」


 陣内陽輝はそう言うと口の端を僅かに上げる。

 このビルダンジョンは現在、唯衣が掌握しているがその事実を知らない陣内は幹部連中ごと、一網打尽にして組織自体を壊滅させる好機だと考える。


「お主らには悪いがひとつ頼みがある」

「この期に及んでなんだ?」

「ダンジョンマスターの黒腹は儂にらせてくれ。彼奴あいつには因縁がある」


 頼みと言いながらこれだけは譲れないとばかりに陣内の瞳には強く暗い闇が宿っていた。


「彼奴は儂の息子からダンジョンコアを奪い、殺した張本人なのだよ」


 そう言い放った陣内陽輝の殺気に俺達はゾクッと背筋が凍る。

 迫力に気圧され、素直に了承してしまう。


「わかった。好きにしたらいいさ」

「了承してくれたことに礼を言う」


 話が終わったことで唯衣が確認のために俺達を見渡すので俺と陣内陽輝は小さく頷く。


『では行きます!』


 唯衣の掛け声で俺達の視界は一転する。

 そこは豪華な装飾品で飾られた派手な色合いの部屋の中て下品という言葉がしっくりとくる部屋だった。


「何だっ!貴様らは!」


 恰幅の良い男を囲むように並び立つ男達の一人が声を荒げ、こちらに叫んでくる。


 その男を無視するように陣内陽輝は中央に座る男を睨みつけながら前に出る。

 その他大勢は視界に入っていないかのように静かにまるでマグマが噴火する寸前の雰囲気を出しながら。


「久しいな、黒腹」


 名前を呼ばれたダンジョンマスターこと黒腹は目を見開き、驚愕の表情を浮かべた。


「お前は陣内陽輝っ!?」

「「「・・・っ!?」」」


 黒腹の言葉に幹部達は驚き、陣内陽輝の名に慄く。

 陣内陽輝には長い探索者人生を送ってきたことで二つ名がいくつもある。

 《探索者最高到達点》、《雷神》、そして、《闇人潰しダークアニヒレイト》。

 闇の住人達にとって、闇人潰しダークアニヒレイトは有名であり陣内陽輝はまさに天敵と言える相手だった。


「いったい、どうやってここまで来たっ!?」


 黒腹の疑問に答える気がないのか一切笑っていない目のまま、不敵に笑うと宣戦布告をする。


「さあ、殺し合おう!あの時の続きだ」


 言い切ると同時に陣内陽輝の身体から圧倒的な闘気が溢れ出すのであった。



陣内陽輝の息子、冬輝は親の才能を色濃く受け継ぎ、将来を嘱望された有望な探索者だった。

その実力から探索者協会の次期会長候補でもあったが会長の座を狙う者の暗躍によって…。

この話の続きは以降でやる予定なのでとりあえずここまでで

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