57話︰図書機能
俺達は秘密基地に戻るとリビングで寛ぐ。
「それにしてもとんだ狸爺だったな・・・」
『そうね、探索者学校への編入を反故にされたと分かった時は本当に首を跳ねてやろうかと思ったわ』
ウォン!ウォン!ウォン!(私もあの不味そうな身体をボリボリ噛み砕いてやろうかと思ったわ)
唯衣もモコも冗談に聞こえないのは冗談ではないからだろう。
うちの女子を本気で怒らすなんて、なんて命知らずな奴だ。
と言いたいが陣内会長は今回の強襲作戦に本気で命を掛ける気でいることぐらいは話していて分かった。
口では探索者協会に私情を挟む訳にはいかないとか言っていたがあの目は孫を助ける為なら喜んで命くらい簡単に投げ出すと思う。
あの探索者最高到達点と言われる陣内陽輝が命を賭けるくらい闇ギルドというのは危険な相手なのだろう。知らんけど。
『それより颯夜!私、本当に颯夜と学校に行けるんだよね』
ウォン!(私も行く!)
「ああ、もう書類にはサインしたし、もし駄目だと言われても駄目だと言う奴ら全員ぶっ飛ばして俺と一緒に通えば、問題ないだろう」
『ふふふ、嬉しいー!』
ウォン!(やったー!)
「おうふ」
唯衣とモコは余程、嬉しいのか最上級に抱き着いてくるが俺はもうされるがままだ。
「そう言えば、唯衣」
『何?』
「いつの間に大鎌なんて創ったんだ?ひょっとして、装備もあったりする?」
『ふふふ』
唯衣は微笑むと徐ろに立ち上がり、某美少女戦士がやるような似たポーズをとる。
『チェーンジ!バトルユニフォーム!』
「ま、まぶっ!?」
クゥン!(シャドウカーテン!)
モコは咄嗟に影魔法で光を遮断し、唯衣はこれまでにないくらいの光を放ちながらその場でくるりと回る。
光が収まるとそこには白色をベースにし、ピンクのラインが入った俺のバトルフォーム(死蜘蛛装備)と色違いの格好をした唯衣が大鎌を構えて、ポーズを決めていた。
ちなみに唯衣のマスクは蝶の形をしている。
『うふ、どうかな颯夜?』
「あわわわ・・・」
ワァフン!(素敵!)
女医風の格好もメイドの格好も良かったが今、目の前にいる唯衣も実に良い。やっぱり、美少女と大鎌は合う。(颯夜持論)
とりあえず、並んでみたくなった俺は急いで着替える。
「唯衣、チェンジングルームを創ってくれ」
『そう言うかもと思って創っておいたわ』
もう何も言うまい…。着替え終わった俺は唯衣と一緒にチェンジングルームに行く。
チェンジングルームにはまるでダンススタジオにあるような大きな鏡が備えつけられており、2人で思う存分にポーズをとる。
きっといつか、この練習が役に立つ時が来ることを願って…。
途中からモコも参加して、相当な盛り上がりとなった。
満足した俺達は再び、リビングに戻りゆっくりしながら満足そうな唯衣とモコを眺めていると何か忘れている気がする。
「お、御館様、発言をお許し下さい」
リビングの隅で空気扱いされていた清十郎が恐る恐る声を掛けてきた。
「なんだ?」
「特殊技能をお調べになるのではなかったのですか」
そうだった。清十郎のおかげで思い出した俺の脳は小躍りする。
「清十郎、良く覚えていた。大義である」
「ははっ!」
清十郎のひと言で忘れてたことを思い出した俺達は作戦室に移動する。
ちなみにソラは秘密基地に戻るなり、早々に日向ぼっこの続きをしに行った。全くマイペースな子である。
作戦室の台座に触れて、図書機能を使用する。
この図書機能、ホント凄い性能なのにアイテムの鑑定以外では全然活用していないな。
「まずは反射の魔眼とやらを調べてみるか」
図書機能は俺の言葉だけで反射の魔眼についてを表示する。(唯衣が操作しました。)
《反射の魔眼》
効果︰任意の場所に魔法斥力を発生させ、物理・魔法を反射させることが出来る。熟練度により、効果・範囲・使用回数が増える。
「思っていたより、便利で強そうだな」
魔法だけじゃなく、物理まで跳ね返せるなんて予想外だ。
それにしても魔眼とかマジで憧れる。俺も思わせぶりで眼帯でも着けてみるか…。
『颯夜の言う通り、反射の魔眼の主な使い方は相手が放った魔法を跳ね返すんだけど、曲がり角の先にいる敵に味方の魔法を反射させて、当てたりとかも出来るのよ』
なるほど、御神は雷魔法を持っていて陣内夏輝とはコンビを組んでいると言っていたからダンジョン内ではそういった使い方をしていたかもしれないな。
御神とは昨日今日の付き合いだが感情に左右されやすい直情型の人間だと思う。
陣内夏輝の人となりは知らないが祖父にあたる陣内陽輝の人となりは理解した。狸爺だ。
そう考えると陣内夏輝も一族揃って、曲者くさい…。だから御神と陣内は反りが合うのかも…。知らんけど。
「じゃあ、次は陣内夏輝の居場所だな」
俺に変わり、唯衣が操作をする。
人物検索キーワード︰陣内夏輝 反射の魔眼
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陣内 夏輝 16歳 憔悴状態
所有スキル︰反射の魔眼 気配察知 気配遮断 剣術 体術 水魔術
居場所︰愛知県××市××町 黒腹ビル内(ダンジョン内)の一室。
初めて、人物検索を使ったがやっぱり恐ろしい機能だな…。
この機能については今後も秘匿して、誰にも知られないようにしよう。
『颯夜、情報通りダンジョン内に囚われているみたいよ』
「そうみたいだな」
後はどうやって、救出するかだがあれを使えばいいだろう。
情報の収集と確認を終えた俺達は再びリビングで時間まで過ごすのであった。
陽輝︰あいつら、何時になったら帰ってくるんだ?
護衛︰会長、今のうちに包帯を巻きましょう。
作者︰会長、出演お疲れ様。
陽輝︰刺してくるなんて聞いてないぞ!
作者︰すまん、勢いだ。




